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[No.20]
 闘うお姫様と兵士一名
【登場人物】
エイト、アリーナ

「………槍、か」
自分にとって得手な武器だったのは幸いである。
少々大振りではあるが重さは何ともない。

近衛兵エイトは主君と仲間達を探すために森を散策していた。
仲間達の強さは知っている、みすみすやられるような連中ではない。
心配なのは、トロデ王。
常人に比べては強く、枝一本で武装した兵士と渡り合うくらいは可能だ。
「若い頃は強かった」が本人の弁である。
だが、あそこに集まっていた連中はそれを遙かに凌いでいる。
いや、暗黒の魔王を討ち滅ぼした自分でさえ…
「……ッ!!」
何か来る。
槍を右手に構えて穂先を気配の方向に向けた。
魔法の力―閃光呪文『ベギラゴン』を秘めた雷神の槍。
黄金の穂先が朝焼けに煌めく。
茂みから、目立つ赤い髪が飛び出している。
「…赤毛……ゼシカかい?」
「……誰?人違いよ。それより……やる気?」
少女は武闘家だろうか、構えを取っている。
こちらが槍を構えたままだったのを思い出し、慌てて下げる。
どことなく漂う気品に、思わず畏まってしまった。
「失礼をお詫びします。僕にあなたを傷つける気はありません」
緊張が走る。
頭を垂れて戦闘の意志が無いことを示した。
「…そう。なら、よかったわ。信じてあげる」

相手も拳を下げる。わかってくれたようだ。
槍を地面に刺し、再び頭を下げる。
「申し遅れました。トロデーン王国近衛兵隊長、エイトと申します。…貴女は?」
「私は、アリーナよ。えーっと…ホントの事言うけど、サントハイム王女やってるの」
やはり。にじみ出る気品が彼、エイトに身分を感づかせてしまったのだ。
高貴な者達との付き合いは多い、こういう事には勘が鋭いのだ。
「どうも、ゲームに乗り気では…なさそうですね」
「当ったり前でしょ!こんな馬鹿げたゲームなんか…叩きつぶしてやるんだから!」
固めた拳が音を立てる。
相当の手練れらしい、空気が張りつめる。
「…わかりました、協力しましょう。僕も、何とかしたいと思っていました」

二人は座り込みお互いの素性を明かし合った。
ここに来るまでのこと、そして自分は戦える人間だということ。
仲間達の事は、やはりわからない。
「…そうですか。アリーナ様」
「“アリーナ”でいいよ?あたしそんな呼ばれ方されても…」
「いえ、しかし…」
「命令」
「………はい。では、アリーナさん」
「…まぁいっか。で、何?」
「ここにいるのは危険です、逃げ道が制限される森では襲撃される可能性があります」
「そうね。まあ、近づいてきたらぶっ飛ばしてやるけど」

そして、ここを離れようと二人は立ち上がり、走り出す。
「仲間達を探しましょう、無事でいるかどうか」
「うん。大人しくやられる人たちじゃないけど…心配だからね」
アリーナが支給品のくさりかたびらを鳴らして言った。
彼女の支給品に武器の類は入っていなかったようだが、もともと素手を好んでいたのでさほど問題ではなかったらしい。
それでも心配であったので、自分の支給品に入っていた武器を渡した。
武闘家の彼女にはありがたいであろう、格闘武器だ。
「もらっちゃっていいの?ありがとう」
パワーナックルを手にはめて、2、3度拳を振るう。
風切りの音から、当たったらただではすまないと判断した。彼女に逆らうのはやめよう。

二人は周囲に警戒をしながら北西に向かう。
地図で見ると、村がある方向だ。森はそう深くもなく、苦労せずに出ることができた。
しかし、草原に出た二人は辺りを警戒する。
火の臭いがした。そして、何か焼ける臭い。
遠くで何かが焼けている。そう、人。

かすかな臭いではあったが、確かにしている。
そして、その方角を見るとうっすらと煙があがっていた。
村の方角は北東、そしてそちらは北。

「…北で…誰かが争った、ようですね」
「この臭い……火の魔法?」
「おそらく、そうかと。どうします?このまま村へ行きましょうか?」
「何言ってるのよ、心配だからこっちへ行くのよ!」
「仰せのままに」

脱兎の如く駆け出すアリーナ、追うエイト。
そして、その先で、このゲームの敗北者“返事がないただの屍”を発見する事になるとは。
二人はまだ何も知らない。
B-3/レーベ東の草原/午前】
【エイト@DQ8主人公】
[状態]:健康
[装備]:雷神の槍@DQ5
[道具]:支給品一式
[思考]:火元らしい所へ向かう 仲間(トロデ優先)を捜し、ゲームには乗らない

【アリーナ@DQ4】
[状態]:健康
[装備]:パワーナックル@DQ3 くさりかたびら
[道具]:支給品一式(三つとも武器以外)
[思考]:エイトに同行 仲間を捜して、ゲームにはのらない マーダーは倒す

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