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[No.22]
 呪われし王と王女[2]
【登場人物】
トロデ、マリア

(俗に美人薄命とか佳人薄命とかいうがまさにその通りのようじゃの。
 我が最愛の王妃よ、ワシも今そちらに行くからの。温かく迎えておくれ。
 しかしこんな早く死んでしまうと分かっておれば!
 やり惜しみなどせずミーティアをあやつにくれてやったのだがのう。
 ミーティアの花嫁姿を見れないのがつくづく残念じゃわい)
「――ああ、可愛いミーティアよ。そなたの知らぬところで死ぬ父を許してくれい」
 しかし、いつまで経っても止めの一撃が飛んでくる気配は無い。
不思議に思い始めたトロデの耳にからんと軽い音が聞こえた。

「――こうやって、殺し合いをしたってハーゴンを喜ばせるだけ。そんなこと分かっているのに」

 続いてもう一つとさ、と軽い音。
おそるおそる目を開ける。杖を手放した少女が先程と同じように座り込んでいた。
 戸惑うトロデに少女は力無く言った。
「貴方には家族がいるのでしょう?
 見逃して差し上げます。私の気が変わらないうちに去りなさい、魔物よ」

「……まずはその誤解を解いてもらわなければならんようだの」
 今の己の姿がそう見える事は承知の上だが、そう魔物魔物と連呼されると気が滅入る。
トロデはやれやれと首を振った。
「今はこのようななりをしておるが、これは呪いのせいなんじゃよ。
 ワシはトロデ。トロデーン王国の王じゃ」
「本当の姿は人だとおっしゃるのですか?
 ……ああ、だからでしょうか。貴方からは邪気が感じられない」
 説明しても信じてもらえるとは思っていなかったが、意外にも少女はトロデの言葉をあっさりと受け入れた。

「では、私はもう少しでハーゴンの計略にかかり、罪無き人を殺めてしまうところだったのですね」
「……どうも、先程から聞いているとあの大神官ハーゴンとやらとお嬢さんは
 ワケアリのようじゃの」
 悲しげに呟く少女を見遣ってトロデは腕を組み、やおらぱちりと片目を閉じた。
「話せば楽になることもある。どうじゃ、ワシに話してみんか?」
 そしてトロデが差し出した手を、少女は驚いたように見つめる。
「何故そんなに親切にしてくださるのです?私は貴方を殺そうとした女ですのよ?」
「お嬢さんはワシに家族があると知って見逃そうとしてくれたからの。
 それに、ワシにもお嬢さんと同じ年頃の娘がおるのでな」

 少女はしばし迷ったようにトロデの顔と手とを交互に見遣り――やがておずおずと、
トロデの立ち上がる支えにするには低すぎる位置にある手をとり、僅かに笑みを浮かべた。
「名前を聞かせてもらってもいいかの?」
「ええ。私はムーンブルク王が一子、マリア。かつてハーゴンに全てを奪われた者です」

 ハーゴンの襲撃、自分を庇って死んだ父、そして己にかけられた呪い。
呪いを解いた二人の王子と共に旅立ち、ついにその本懐を遂げたこと――

「―― え ら い っ!!!」
 ずずいと血色の悪い顔が間近に迫り、マリアは思わず後じさった。
「か弱き女子の身でありながら呪いに打ち勝ち、敵を討とうと決意するとは!
 流石はミーティアと同じ年頃の姫君じゃ!
 きっと亡き御父上も国民もそなたを誇りに思っていることじゃろう」
「そう言っていただけると救われますわ。
 ……でも何故でしょう。私たちは確かにハーゴンを、シドーを、討ったはずですのに」
「うーむ、ワシの呪いも確かに解けたはずだったんじゃがのう」
 トロデは首を捻った。が、すぐに考え込むのは止めた。
ここで二人の持つだけの情報で考え込んだところでたかが知れている。
 立ち上がり、尻についた草切れを払い、マリアに手を差し出す。
「まぁ今考えたところでしょうがない。
 早い所マリア王女の仲間とワシの家臣たちを探して、そのハーゴンとやらを討とうではないか!」
「……私がご一緒してもよろしいのですか?」
「先程も言ったが、ワシには王女と同じ年頃の娘がおるからの。
 か弱い娘御を一人にはしておけんじゃろう?」
 トロデが不器用にウインクをするとマリアは笑い、手を伸ばして――
刹那、爆音が辺りに響き渡った。

「!今のは?」
「そう遠くないようだの。……一先ずここを離れるのが先決じゃ。マリア王女、こちらへ」
 トロデに続いて立ち上がり、マリアは爆音の方を見遣る。
彼女の仲間にはこのような呪文を扱えるものはいないが、もし巻き込まれていたら?

「マリア王女!」
「ええ、今参りますわ。トロデおじさま」
 もし彼女が行くと言えばトロデは着いてきてくれるだろう。
自分は戦える。だが、彼はどう見ても非戦闘員だ。
爆音のことは気がかりだったが、自分の我が侭でトロデを危険に晒したくは無かった。
 脳裏に過ぎるのは、己を庇う父の背中。
あの時彼女は何の力も無い、ただの小娘だった。だが、今は違う。
(守って差し上げよう。この方の姫君が私と同じ悲しみを味わうことのないように)
 自分に手を差し伸べたトロデに、知らず知らずのうちに父を重ねていた。
 前を行く小さなトロデの背中を見つめ、マリアは誓う。
(お父様、国の皆。
 どうか見守っていて下さい。今度こそ私が失わないで済むように)
【D-3/森/時間・昼】
【トロデ@DQ8】
[状態]:疲労(軽) 空腹(軽)
[装備]:ミラーシールド
[道具]:支給品一式(不明の品が1〜2)
[思考]:仲間を探し、ハーゴンを倒す?

【マリア@DQ2ムーンブルクの王女】
[状態]:健康
[装備]:いかづちの杖
[道具]:支給品一式(不明の品が1〜2)
[思考]:仲間を探し、ハーゴンを倒す

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