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[No.24]
 緑色の小さな動物
【登場人物】
フォズ

「あのハーゴンという神官…邪教を崇拝していたようですが…」
地面に座り、袋を開けながら独り言を言う空色の髪の女の子。
彼女の名はフォズ。幼いながらもダーマ神殿を治める大神官である。
「殺し合いなどさせて…まるでダーマの悲劇の繰り返しでは…」
その顔には、この状況に対しての怒りと恐怖が滲み出ている。

自分が囚われの身になっている間に神殿の目と鼻の先で行われていた、悪魔の儀式の存在を思い出す。
五人の魂を砕くことで救われるという、神に背いた者の儀式。
しかし儀式の成功者は、決して救われる事はなかった。
このゲームも、恐らくそうなのだろうと、フォズは確信していた。
勝者の願いが聞き入れられる事などないだろう、と。

「支給品は…大きな盾…私にはちょっと使えませんね。あと天罰の杖…ですか」
盾はひとまず置いて、天罰の杖を手にする。
「軽いし、効果が出るならかなり使いやすいですけど…」
えいっ、とばかりに木に向かって杖を振る。発せられた旋風が木々を切り裂いた。
「結構な威力が出ますね…これは使えそうです。あともう一つは…?」
袋に手を突っ込んでごそごそと漁ると、何か奇妙な物に触れた。

「…きゃぁっ!?」
それに指を噛み付かれたようだ。慌てて手を引っ込める。
「ななな、なにが…」
恐々と袋の中を覗く。
袋の中から、小さな生き物がフォズを見上げていた。

「これは…?」
緑の体に黄色い目玉。どこかで見た動物だった。
ギョロリとした目をフォズに向け、何か言いたそうに口をパクパクと開閉する。
普通の女の子が苦手そうな爬虫類ではあるが、フォズはそんな事は御構い無い。
第一、ある意味では、この動物とは知り合いなのだから。

ダーマを救った青年の肩には、いつも緑色の動物がいた。
まるでトカゲとカメレオンを足して2で割ったような、奇妙な動物。
『アルスさん…その肩の……何ですか?』
一度、気になって聞いたことがある。
今思えば『何ですか』などと失礼な聞き方だが、それ以外どう聞いたらよいかわからなかった。
『ああ、これ?僕の友達だよ。遺跡を探索しているときに見つけて、仲良くなっちゃったんだ』
アルスは、照れたように笑ってた。
『名前はレオン。カメレオンみたいなのだから。…単純かな?』
『…いいえ。素敵な名前だと思います』
レオンのギョロ目を見つめ、にっこりと笑って見せた。
しかしレオンは、無愛想にこそこそとアルスのフードの中に入っていった。
『ははは…。恥ずかしがっているのかな?』
アルスは、なんとも平和な笑顔を浮かべていた。

「アルスさんの所に帰りたいんですね…一緒に探しましょうか?」
フォズの問いかけの意味を分かったとは思えないが、レオンはカクカクと首を縦に振る。
「じゃあ、私の肩に…」
アルスがやっていたように、フォズはレオンに手を差し出す。
レオンは器用にその腕を伝い、フォズの肩に収まった。
「…意外と、可愛いかも」
フォズが呟くと、喜んだのかどうかは分からないが、レオンは長い舌でフォズの頬を舐めた。
「きゃあ…いたずらっ子さんですね」
年相応のあどけない笑顔が、少しだけ戻った。

フォズはゆっくりと立ち上がる。
「ここは最南端ですから…北に向かいましょう。城がありますから、アルスさんがいるかもしれませんね」
レオンに話しかける様に言う。一人っきりじゃない気分になって、少しだけ気が安らいだ。
「じゃあ、行きましょうか」
荷物をまとめると、ほんの少し早足で、歩き出した。

探し人が息絶えた可能性など、フォズの頭には欠片すら考えられなかった。
【F-4/森/朝】

【フォズ@DQ7】
[状態]:健康
[装備]:天罰の杖 アルスのトカゲ(レオン)
[道具]:炎の盾
[思考]:北へ アルスを探す ゲームには乗らない

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