一覧 ▼下へ
[No.36]
 人の誇り 竜の誇り[2]
【登場人物】
竜王、ククール、アレン

ビシャァンッ!!

竜王の怒号と共に再び雷の雨が降る。しかし例によってアレンは無傷だった。

「よくもまぁ小五月蝿く囀ってくれたものよ。もはや聞く耳持たぬ。我を従わせたいならば力で語れ!」
竜王は剣を……竜神王の剣と呼ばれるその剣を持ってアレンへと飛び掛った。
ガィン!
その一撃を咄嗟にロトの盾で受け止める。しかしあまりに思い一撃に腕が痺れてしまった。
「うぁ……」
追撃が来る前にアレンは横に飛び、竜王との間合いを開ける。
(く、くそ。なんて重い攻撃なんだ。受け止めるんじゃなくて受け流すようにしないと……。でも武器がない。呪文も僕は使えない。何より今のこの竜王を倒すべき敵だとは思えない! どうする……どうすれば……教えてくれランド、マリア!)
かつて共に苦難を乗り越えた仲間たちの姿が脳裏をよぎる。
このままでは電撃の攻撃で自分は遠からずやられてしまうだろう。
それがなくとも防御だけであの攻撃をいなし続けられるとは思えない。
アレンのその様子を見て竜王は相手が武器を持っていないことに気付く。
「ふん、武器を持たぬ、か。剣を持たぬ勇者など様になるまい。使うがいい」
竜王はザックから白金に輝く剣を取り出すとアレンへと放った。
「え?」
アレンは思わずそのプラチナソードを受け取り、呆然と竜王を見る。
「これで武器を持たぬから負けたなどという下らぬ言い訳はできんぞ」
「ま、待ってくれ! 僕はあなたとは戦いたくないんだ!!」
「力なき者の戯言など聞こえぬな」
カシィンッ
アレンの剣と竜王の剣が撃ちあい、火花を散らせる。
竜王の斬撃を受け流し、彼の背後に回るとアレンは大きく飛びずさった。
(竜王は……僕を試している)
アレンはそのことに気付く。アレンをただ殺すだけならばあの雷を撃てばいい。
アレンがただ憎いだけならば剣を渡す必要はない。

『我を従わせたいならば……力で語れ』
『力なき者の戯言など聞こえぬな』

竜王はずっとアレンに伝えてくれていたのだ。
(僕の言葉が本気なのか。僕がそれを実現できるほどの力を持っているか。それを竜王は確かめたいんだ。なら……僕はそれに応える!)
それはアレンの妄想かもしれない。ただ希望的な観測なのかも知れない。
しかしアレンはそれを信じた。
「解りました。竜王……僕の力を、ここに示します。今、全力であなたを倒す!」
「フン、来い」
アレンは青い尾を牽く彗星となって竜王に斬りかかった。

ナジミの塔の2階にククールはいた。
「やれやれ、こんなくだらないゲームに参加させられるとはついていない。どうやらエイトやゼシカもここにいるようだが……さて、どうしたものか」
そしてあのマルチェロもいる。
彼の上昇志向、栄光への執着はよく理解していた。
「あいつがゲームに乗るってんなら……フゥ――止めるのは俺の役目だな」
その為にはまず情報を集めないといけないだろう。
仲間、敵、そして首輪やこのゲームそのものに関して。
「まずは自分のことからだな」
そういってザックを漁ってみる。彼自身はこのゲームに乗るつもりは微塵もなかった。
見も知らぬ他人の集まりだというなら自分がどう判断するかはわからなかったが
少なくともゼシカやエイト、ついでにトロデ王を蹴落としてまで生き延びたいと思うほど
彼のプライドは安くない。
そしてザックの中から出てきたのは巨大な自動弓、ビッグボウガン。
そして馬の手綱らしき白い綱。最後はつけた者の頭脳を冴えさせるというインテリめがねだった。
「使えそうなのはこのボウガンか。苦手な武器でなくて良かった良かった、と」

ビシャァンッ!!

唐突な外での落雷にククールは塔の窓から下を見る。
そこでは魔族と思われる者と青い服の戦士が戦っていた。

なんらかの問答を繰り返した後、剣を撃ちあう。
「ふーむ……剣の腕は互角……いや、戦士のほうが上かな。だがあの魔族のほうが余裕がある。さっきのギガデインのような呪文があるようだし、戦士は打ち合いに付き合ってもらっているといったところか。これは俺の出番かな」
あの戦士が仲間になってくれれば心強いだろう。
ゲームに乗った魔族を倒し、戦士の命を救い仲間を得る。
すぐに方針を固めたククールはビッグボウガンを構え、魔族に狙いを定めた。
ククールがエイトたちとの冒険で重点的に鍛え上げたのはカリスマと杖、弓のスキル。
特に弓に関してはアローエンペラーと呼ばれるまでに達していた。
一度狙いを定めれば外す気はしない。
「喰らえ」
ククールは静かにニードルショットを放った。

すでに20合を超える斬撃の応酬がなされている。
だが互いに呼吸を荒げながらも未だに意気衰えず両者は剣を振るい続けた。

ガキィンッ

(ほう、技量そのものはアレフには及ばぬが……力と速度は奴のそれを上回っておるな。油断をすれば即座に押し切られてしまいそうだわ)

ガチッ、キィン!

(いける! 剣の勝負なら僕の方が上だ……剣の威力では劣るから迂闊には飛び込めないけどこのままの剣の戦いが続けば勝てる!)

体勢を整える為にアレンが一旦、後ろへと下がったその時。
竜王の背後の塔からボウガンを構えるククールをアレンは見つけた。
そしてその矢が放たれる瞬間……アレンは何も考えずに飛び出していた。
[Next] [Back] □一覧 △▲上へ


人の誇り 竜の誇り[2]
について管理人にメールする
件名:(選択)
内容: