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[No.38]
 紅き戦い[1]
【登場人物】
ベリアル、キーファ、ランド、死神の騎士

レーべの村・入り口、石垣に寄りかかるようにキーファが倒れている。
着ている赤い服が、更に真紅に染まる程の血を流して……。
そして、ランドは死神の騎士と相対していた。

今から、約一刻前。キーファとランドは、ここレーべの村に到着した。
村からは、人の気配はしない。だが、ついさっきまで人が居た様な雰囲気は不気味であった。
二人は村を探索してみたが、何も見つけられなかった。

「ここに、住んでいた人たちは……。」

キーファは、怒りを覚えると手に持っている斧をきつく握り締め、ランドの方を見た。
彼もまた、剣を握る拳が強くなっている。

「ハーゴンの野郎!俺達だけじゃなく、この村の人達まで消しやがった!!」
「!!」

――消す
この言葉に、キーファは反応した。
彼の世界は、故郷であるグランエスタード島しか存在しなかった。
だが、彼は仲間と供に旅をし、魔王に封じられた世界を元に戻していった。
(もしかしたら、この世界の人達もハーゴンにより封印されただけ、だとしたら。
ハーゴンを倒すことができれば元に戻るかもしれない)
と、思案をめぐらすなか、ランドは責任を感じていた。
倒したはずの敵が生きていて、またこうして罪のない人達を苦しめている。
(これじゃあ、ムーンブルクの二の舞じゃねぇか……)
ふと、二人の沈黙を裂くように何かが、近づいてくる音がした。

………………ッ…ショッ…ガショッ…ガショッ…ガショッ…

村の手前……200mといった所だろうか。
紅い鎧が、歩いてくるのが見えた。
どうやら、真っ直ぐこちらへ来るようだ。
ガショッ!ガショッ!
空の鎧に音が反射し、大きな音を響かせている。
ランドは、直ぐに鎧系のモンスターだと判断した。
「キーファ、あいつがこちらに襲い掛かってくるようなら、一瞬でいい。
足を止めてくれ。」
「ああ、まかせろ!」

まだ、出会って間もないが、ランドがどんな作戦を考えているかは分かった。
作戦はこうだ。まず、キーファが相手の動きを止める。そこでできた隙を、ランドが自慢のスピードを活かし、仕留める。
シンプルだが、普通の相手なら簡単に倒せるだろう。普通の相手なら……。

彼らは、村の入口で待ち構えた。
正面にキーファ、右翼にランドといったところだ。
良いモンスターが居ることぐらい、彼らは知っている。
向こうに、ヤル気がないのならば、戦わない。それで良い。
だが、襲い掛かってくれば?
ハーゴンの示したことはしたくはないが、やるしかない。
歩いてくる鎧は、こちらの姿を視認すると両手の武器を振り上げ、足を早くした。
仕方ががない。二人は戦闘体制をとった。

ガショッ!ガショッ!ガショッ!

紅い鎧は正面のキーファに向かって、左手の槍を突きたて突進してくる。
単純な思考、最初に見た人間しかその目には写っていない。

ガショッ!ガショッ!ガショ!
ギィィィィィン………。

高い金属音が鳴り響く。
キーファは、持っていた斧でうまく槍を受け流した。が、斧の刃は、思い切り欠けている。

「痛っっっっ!この槍、なんつー硬さだよ!!」

手が痺れて痛かったが、我慢しながら斧を構えなおした。
次の一撃に備えると同時に、ランドが鎧の背後に切り込むのが見える。

シュン…………………。

その時、剣を振る音のみで、それ以外は静かだった。
だが、ランドは紅い鎧の腰辺りから肩の部分にかけてまで切り裂いていた。
しかし、浅い。急所を持たない鎧系のモンスターを倒すには、動けないようにすることがベストだ。
本当は、左太ももから入り、肩まで真っ二つにするつもりだった。
背中を裂いただけじゃ、こいつは止まらない。剣が重かった……。
案の定、キーファに向かって鎧は、剣を振り下ろそうとしている。

「こちらは、無視かい……!?
キーファ!!危ねェ、避けろ!!」

ギィィン!ズバッ!!

ギィィン!ズバッ!!

遅かった……。
気付くのも……。
注意するのも……。
キーファの胸からは、鮮血が噴き出している。
武器を落としながらも、まだ相手を見据え、立っていた。

キーファは、しっかりと相手の攻撃は受け止めた。
しかし、紅い鎧……死神の騎士が装備しているのは、隼の剣。
二度の斬撃を起こすツルギ。
一撃目を防いでも、もう一度鳴る。

「もういい!下がれ!!」

キーファには、もう声は届いてはいない。
死んでもいない。気絶をしてもいない。
ただ、何かを見つめていた。
そこへ、死神の騎士の容赦のない一撃が振り下ろされる。

――肉…今度こそ、ミンチ……――

…シュン…

キーファは、外敵の侵入を防ぐ為の石垣に向かって倒れていった。
しかし、最初の一撃以外の外傷はない。

――???肉…斬った感触がない……右手の剣……右手何処?――

死神の騎士の右手は、地面に落ちていた。
ランドが切り落としたのだ。
必然、死神の騎士の標的はランドとなった。
そして今、ランドは間合いをとりキーファを助けることを考えていた。もう、死んでるということは、考えずに。
キーファの倒れている位置は、紅い鎧を挟んで反対側。しかも、こいつの直ぐ傍。
助けるには、この紅い鎧を倒さなければならないだろう。
まだ、こいつはこちらを完全には向いてはいない。右手も切り落とした、倒すなら今!

「………ズン!」

ランドが足に力を込め、切り込もうとした時だった。
空から何かが、聞こえた。
初めは、米粒くらいだった影が段々大きくなる。
何かが降って来た。
これに気付き、空を見上げた頃にはすぐ傍まで迫っていた。
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紅き戦い[1]
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