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[No.5]
 勇者と天空人
【登場人物】
アレフ、ルーシア

何でこんな事になってしまったのか。

勇者アレフは苦悩していた。
突然、こんな所まで連れてこられて、突然、命令を受けた。殺し合う、だって?

「…夢…ではなさそうだな……」

確かに存在する。確かに、ここにいる。
現実なのだ。この、狂ったゲームは。

首の無機質で冷たい感触が、ひんやりと心まで冷たくしていく。
コロセ、コロシアエ…
そう語りかけているようだ。生き延びたい。
その欲望に身を任せてしまいそうになる。
いかなる英雄も、孤独に抗うのは容易い事ではない。

パンッ、と洞窟の奥、暗がりで音が響く。
平手で両頬を叩き、意識をはっきりとさせた。
自分は、勇者だ。世を救った人間が、こんなことでどうする。

「ローラを、探すんだ。守らなければ、ならない…」

愛する、姫を。今もどこかで震えているかもしれないのだ。
一刻も早く、探し出さなくては。

そして……

「竜王………俺が、確かに」
この手で、滅ぼしたはずだった。世界を救う為に。
しかし、自分達と共にあのハーゴンと呼ばれる者の手中に墜ちたというのか?
あの、ハーゴンとは何者なのだろうか?あの竜王でさえも足下に及ばないような、奴なのか?
「…考えていても、仕方がないか」
ここにいつまでもいるわけにはいかない。
この、洞窟であろう場所から出なくては。
竜王とは、再び遭うかもしれない。
そのときは、必ず倒す。
野放しにしていては、ローラが危険だ。
「そうだ、荷物は…」
支給されたザックの中身は、まだ確認していない。できれば、武器が望ましかった。
善意ある人々を傷つける気は無いが、降りかかる火の粉は払わなくてはならない。
それに、魔物もあの中にはいた。
自衛の手段は多いに越したことはない。
「…これは、盾か?魔法の力を感じるな…こっちは、草?薬草では無い…」
魔法の力で作られた、マジックシールド。
そして、体にふりかければ姿を消す消え去り草。
そして、もう一つ入っていたのは鉄の杖であった。
「剣の代わりとまではいかないが…素手よりは心強いな」
消え去り草をザックにしまい、盾を背負い杖を携えてアレフは立ち上がった。
その瞬間、ふと気配を感じ杖を構える。
確かに足音が近づいてきている。暗闇なのではっきりと姿は見えない。
レミーラを使うか?
いや、相手に居場所を知らせることも無いだろう。
息を潜め、接近する気配に意識を凝らす。

「すいませーん、どなたかいらっしゃいませんですか〜?」
何とも気の抜ける声が洞窟に響いた。
女性、か。
こうして他者と干渉しようとしているということは、ゲームに乗っていないのか?
いや、油断させる作戦かもしれない。警戒を解くのは、得策ではないだろう。
「動くな。あなたはゲームに乗っているのか?」
威圧するように、気配のする方向に問いかけた。
金属音をさせ、こちらが武器を所持していることを悟らせる。
「荷物を足下に置いてくれ。そちらが危害を加える気が無いのなら、俺も何もしない」
ドサッ、と音がした。
目が慣れてきて、相手のシルエットが見えた。
どうやら両手を上げているらしい。
「る、ルーシアは、そんなこと、ししし、しないです〜」
「そうか……わかった。レミーラ」
自ら名乗る、ということはもう敵意は無いとみなしていいだろう。
仮に騙しているとしてもこちらも騙されるつもりは毛頭無い。やっと、洞窟に光が点る。
薄暗がりから解放されたアレフの目に映ったのは、涙目で両手を上げた、少女と呼ぶべきか。
無力な女性に他ならなかった。ただ、違う点は一つ。
その背中には純白の翼が生えていたことだった。
「怖がらせたようですまなかった。俺はアレフ。このゲームを脱ける方法を考えている」
「怖かったです…あ、アレフさんですね?はじめまして…」
ルーシアは、天空人と呼ばれる種族らしい。
羽の生えた人間が存在するとは知らず、アレフは驚いた。
おっとりとした喋りが特徴的で、やはり戦場には似つかわしくない存在だった。

「一緒に、ここを出よう。君もこんなゲームに従う気は無いだろう?」
「はい…でも、死にたくない、です」
「…俺が乗ってなくて、本当に良かったな」
殺人鬼にでも出くわしていたら終わりだったな…
危なっかしい事をする娘だと思った。
それから、二人は小声で洞窟から脱けつつお互いの目的を話し合った。

「……ローラ姫様ですか。でもルーシア、誰にも会っていないです…」
「アリーナ、クリフト、トルネコ…呼ばれていたかもしれないが、居場所はわからないな」
「そうですか…」
お互いの知り合いの足取りは掴めなかった。
やはりこの大陸にバラバラになっているのだろう。
二人は同行して、お互いの仲間を探すことにした。
ルーシアの仲間は手練れであるらしく、トルネコという男は道具に詳しいそうだ。
首輪に対しても何らかの対抗する手段が有るかもしれない。
「そういえば、ルーシアの荷物の中身は?」
「あ、えーっとですね〜」
ルーシアが取り出したのは、羽を象ったような衣服。
いや、衣服と呼ぶにはそれは余りにも頼りなかった。
必要最小限な所しか隠せていない。どうみても水着です、本当にありがとうございました。
「ぶっ…な、なんだそれは?」
「女もの、みたいです〜」
「…まぁ、そうだろう」
魔法の力が込められているので、着ておきたいとの弁だが、落ち着くまで保留ということにした。
というか、出会ったばかりの女の子に水着姿で隣を歩かれたくはなかった。
他にも何か無いか尋ねてみると、出てきたのは装飾品。
祈りの指輪、と言うらしく魔力を回復できる優れものらしかった。
ルーシアは呪文の使い手とのことで、当たりと言えるだろう。
そのまま歩いていると、程なく出口に辿り着く。
「…外だ」
「砂漠…です」
人の気配はしない。とにかく先ずはローラ姫だ。
ここではない、人が集まるところを目指そう。アレフは地図を広げた。
「ルーシアの探している人も見つかるかもしれない…西に向かおう」
「村がありますね」
まずは、そこに向かうことにした。
最愛のローラは、いるのだろうか?
勇者は不安を揉み消すように足を進めた。

【D-6/砂漠地帯/朝】

【アレフ(DQ1勇者)】
[状態]:健康
[装備]:マジックシールド@DQ5 鉄の杖@DQ6
[道具]:消え去り草@DQ3
[思考]:ローラに会うため、西(レーベ)を目指す

【ルーシア@DQ4】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:神秘のビキニ@DQ3 祈りの指輪
[思考]:仲間(アリーナ・クリフト・トルネコ)に会うため、西(レーベ)を目指す

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