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[No.50]
 破戒僧の決意
【登場人物】
ククール

ククールはナジミの塔のある小島から大陸に繋がる洞窟を歩いていた。
痛むのか、時折顔を顰めながら腹部を押さえる。
しかし、それでも決して歩みを止めようとはしない。
歩きながら、ククールは先刻のことを思い出し始めた。

ククールが目を覚ますと、そこには誰もいなかった。日は随分と高く昇っていた。
ククールは立ち上がった。腹部に鈍い痛みが走る。
そしてマントが無くなっていることと、それがあの戦士の上に被さっていることにほぼ同時に気付いた。
戦士は眠ったように横たわっている。その閉じられた瞼が開くことはない。
「そっか…。俺が死なせちまったんだったな…。あんたを」
ククールは暫く呆然としていた。
兄を止めるはずの自分が、人の命を救うべき自分が、人の命を奪ってしまったのだ。
「ははっ。…笑えないよな。あんたを助けようとして、あんたを死なせちまうなんて」

ククールは聖地ゴルドが崩壊したあの日のことを思い出していた。
あの時は数え切れない程のたくさんの人が死んだ。自分たちは彼らに対して何も出来なかった。
あんときゃ、流石の俺でも結構ヘコんだな。でも、あいつ、エイトは…俺の何倍もヘコんでたっけ。

――確かに俺らは何も出来なかったよ。

ククールはふと、思い出した。

――確かに俺らは何も出来なかった。でも、何もしなかった訳じゃない。
  俺だって後悔はしてる。…あいつのこともあるし。でも、いくら悔やんでも亡くなった人たちが戻ってくるわけでもない。
  …だから……

「いつまでも出来なかったことを悔やむより、今出来る何かをした方がずっとマシだろ、か」
ククールは、かつて自分が仲間に言った言葉をぽつりと呟いた。
自分で言って、今の今まで忘れていたあの言葉を。
「…なら、今の俺に出来ることはコレくらいかな」
そう言うと、ククールは近くに咲いていた花をアレンの傍に供え、祈った。

――祈りなんてただの気休めだ。

いつだか、そう言ったことも思い出した。
彼のために、などというのはただの名目で、本当に救いたいのは自分なのかもしれない。
でも。
これが、今の俺に出来ることだ。今の俺に、出来ることなんだ。

「お疲れさん」
祈りを終えたククールは彼に話しかけた。勿論、返事はない。
「俺は…あんたみたいな犠牲者をもう出さないためにも、出来る限りのことをやる。だから…こんなこと、俺が言うのもアレだと思うけど…」
そして、続けて言った。
「そこで、見ていてもらえるか?」
暫しの沈黙。そしてククールはその沈黙を破り、こう言った。
「ありがとう。…そんで…んと……ごめん、な…」
それから少し経った後、ククールはその場所を後にした。

ククールは洞窟を歩いていた。
あの小島でもう少し休んだ方がよかったのかもしれない。
けれど、そうしている間にも、誰かが傷ついていたり、殺されていたりするかもしれない。
何もしないでいるのだけは絶対に嫌だった。
俺は、俺に出来ることをする。そう…決めたんだ。
そして。
ククールはたった一人の家族である、腹違いの兄のことを思い出していた。
あいつを、止める。何が…そう、何があっても。
【E-3/岬の洞窟/昼〜真昼】

【ククール@DQ8】
[状態]:HP1/2 マホトン
[装備]:ビッグボウガン(矢 18)
[道具]:天馬の手綱 インテリめがね
[思考]:マルチェロを止める

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