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[No.8]
 約束の…[2]
【登場人物】
レックス、バーバラ、アルス

ひんやりとした空気の中、右手側の牢内に色々な囚人の服が投げ捨てて
あるのを見ながら進んでいく。
人らしき姿はない。
最後に残ったのは突き当たりの両側の牢。
左側を先にのぞき込んで、それから右側を――
「ここだよ」
 不意に右側の牢の中から声がかけられて、はっとそちらを振り向いた。
少年はいた。そして見た。
ただ無表情で、これまでとはまるで別人に変わった少年を。
その手には、はっきりとわからないが恐らく小さなメダルを握っていた。

 さらに変わっているのはその足元だった。
何か黒ずんだものが水溜りのようになって、そこにひとつの塊が落ちているのだ。
目を凝らしてしそれが何か突き止めようとし、次の瞬間、その目がカッと
見開かれた。
 それは紛れもなく、人の死体だった。
頭に緑色の頭巾をかぶっていて、そこだけが異様に綺麗だった。
あとは、どす黒い血――それが体じゅうに張り付いていて、見るも無残な
様子だった。

「ま、まさか、それ」
気が気でなくなったバーバラは震え上がった。
少年を見据え、それでも変化の無い表情をみて、核心を持った。
「この人、僕の装備を取ろうとしたから殺したんだ」
何も悪びれることもなく、少年は言った。
ちょっと足を踏んづけた、ごめんね、とでも言っているかのように。

「そう、あんまり強引だから手を振ったんだ、そしたら胸に刺さって、あまりに痛そうだった
 からとどめをさしたんだ」
バーバラの顔相が凍りつく。
少年から殺気というようなものは感じられない。
出会った頃から抱いていた違和感、それがぴりぴりと響いてきた。

「僕はどっちにするべきか迷ったんだ」
少年は上を仰ぎ見た。悠然とそびえる山々をかみ締めるように、深く、深く、
その澄んだ目を空気の層に浸していくかのように。
段々とその顔が険しい山の頂上にたどりつき、快感に酔っている風に変わっていく。
バーバラは思わず唾を飲みこんだ。
やがて少年は視線をおろしてこう告げた。
「はやく楽になりたかった」
彼は肩に吊るしたザックから剣を取り下げて、床面に軽く突き立てた。
その動作は軽かった。
大人でも手を余しそうな大剣をいともたやすく扱ってみせている。
少年は続けた。
「人を殺してしまった僕はどうすればいいか悩んだんだ。
 外からくる邪悪な心がこの人を殺したに違いないんだけど、僕のなかの正義の
 心がそれに負けたせいでもあるんだ」
少年は重々しい言葉を吐いていた。
自分でそれを笑っているような節があって、バーバラはそれで気づいた。
あの不自然なほどの笑顔は、少年の自嘲の表れではなかったかと。
自分を自分で制御できない、それが辛くて、笑いで誤魔化すしかなかったのではないかと。

「とにかく」
少年はバーバラに向き直った。
「僕は負けた。でも正義の心もなくなったわけじゃない。僕のなかに両方
 残っているんだよ。それでまた悩むんだ、これがずっと続くなんて考えただけでも
 嫌だった、だから」
バーバラは反射的に腰へ手が動いた。
鞭を、身を守る武器を求めた。
「たった今、メダルを投げて決めたんだ。もう悩まなくていいように。
 表がでたらハーゴンと戦う、裏がでたら――」
バーバラは直感した。
次の言葉を待っていたらすべてが終わる。
鞭の柄を握って、腕を前に振りだそうとして、
少年の肩がそれよりも先に動いていた。

ガシィッ

少年は指をかざしただけだった。
そこから発生した稲妻がバーバラの胸を打ち抜いて、
それで決着はついていた。

 バーバラは意識を失いながらもなかなか倒れずにいた。
少年が近寄り、先の相手と同様に剣を突いてとどめをさした。
 鮮血が勢いよく吹き出し、地下室を染め上げた。
ステップを踏むように後ろへ倒れこむバーバラ。
 その目にはもう何も映ってはいない。
 少年は血に塗れた剣をだらりとぶらさげて言った。
「――このゲームに乗るって」
【E-4/アリアハン城地下/昼】
【レックス@DQ5王子】
 [状態]:呪われている
 [装備]:皆殺しの剣 王者のマント
 [道具]:小さなメダル
 [思考]:剣の意思に負け、ゲームに乗る

※バーバラの支給品は、トゲの鞭・アサシンダガー・毒薬瓶
  アルスの支給品は不明
  全てレックスが奪いました。

【バーバラ@DQ6 死亡】
【アルス@DQ7主人公  死亡】
【残り39人】

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約束の…[2]
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