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[No.149]
 呪われし刃
【登場人物】
マルチェロ

「な……なんだ、あれは…」
マルチェロは思わず呟いた。
「それ」の姿は次第に大きくなる。
おそらくは、程無くアリアハンにやってくるであろう。
「ク……どうする、どうすれば…」
彼は、必死で考えをまとめようとする。
しかし焦りは更なる焦りを呼び、思考は全く定まらない。
彼に出来ることは、ただ「まずい、まずい」と呟くことだけだった。

――ズブリ。

マルチェロは右手に心地良い手応えを感じた。
右手に目を向ける。
その手には刃が握られている。
数瞬遅れて鈍い痛みが左腕に走った。
腕には刃が突き刺されている。

血が流れ出てゆくのが自分でもわかる。
マルチェロは少し舌打ちをすると刺された刃を抜き、残された右目で刃を見やった。
(……無意識に自分を刺していたのか………)
――あるいはこの刃の意思か。
あり得ない話では無いだろう。
刃は変わらず無機的に鈍く輝いている。

尤も、マルチェロにとってはどちらでも良かった。
痛みが焦燥から自分を救ってくれた、それだけで充分である。
幾分冷静になった彼は今の状況を見直す。

なるほど魔物はまもなくアリアハンに来るであろう。
それが自分にとって、いかほどの影響があるか。
なんのことは無い、殺すべき対象が増えるだけの話である。
むしろ、混乱をさそえるだけチャンスと言えるのではないか。
そう、まずいことなど何も無いのだ――彼は先程の自分の狼狽ぶりを思いだし少し苦笑した。

マルチェロは尚も考える。
ここはどう動くべきか。
待つ、と言うのも悪くは無い選択肢である。
あの魔物がゲームに乗っている可能性は低くは無いだろう。
自ら危険を冒さずとも勝手に殺し合ってくれるのであればそれにこした事は無い。
よしんば双方死なずとも無傷では済まない。
手負い相手ならば容易に数を減らす事が出来るであろう。

逆に動くのであれば早く行動に移るべきである。
魔物が襲来した事により、連中は数少ない戦力を更に分ける事になる。
ここで酒場あたりを砲撃してやれば、まず宿屋に注意を向ける余裕は無くなるだろう。
そこを叩く。
リスクこそ高いがこちらも策としては悪くない。

マルチェロは思案を続ける。
いずれにせよ、連中がどのように動くか次第である。
自分にとって分が良くない賭けであることに変わりは無い。
仮に待つとすれば、少なくとも自分の身の安全は保証される。
だが、魔物がゲームに乗っていない可能性や、それどころか連中と結束する可能性もある。
大局的に見ればリスクは大きい。
ここはやはり多少危険でも減らせる時に減らしておくべきであろう。
それに――

マルチェロはゆっくり立ち上がり刃へと声をかける。
「――それに貴様も、早く血を吸いたいだろう」

呪われし刃は、尚変わらず無機的な鈍い輝きを放っていた。
【E-4/アリアハン王城内/黎明】

【マルチェロ@DQ8】
[状態]:左目欠損(傷は治療) 左腕軽傷 HPほぼ全快 MP1/3
[装備]:折れた皆殺しの剣(呪い克服)
[道具]:84mm無反動砲カール・グスタフ
   グスタフの弾(対戦車榴弾×1 発煙弾×2 照明弾×1)
[思考]:宿屋を襲撃する ゲームに乗る(ただし積極的に殺しに行かない)

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