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[No.17]
 ドラゴンの受難[2]
【登場人物】
ローラ、ゴン、フローラ、フィオ

とっとっと

後ろから何か聞こえた。
(気のせいだろう)
ドラゴンは無視して歩いた。

のっしのっし、とっとっと、のっしのっし、とっとっと……

だんだんと苛ついてくる。
「ハァ、ハァ、ハァ」
荒れた呼吸まで聞こえ出し、ついにドラゴンは振り向いた。

「何でついてくるんだよ!?」
「まぁ」

驚いたようにローラ姫は立ち止まった。
「せっかくこのような世界で出会ったのですからご一緒しましょう」
「大御免だ! 俺はお前みたいな馬鹿女が嫌いなんだよ!」
「あら、私はあなたのことは好きですけれど……」
これだ。だからローラ姫がドラゴンは嫌いなのだった。
あの洞窟に幽閉していた時も同じで魔物である自分に妙に懐いてくるのだ。
人間には嫌われるのが当然だったドラゴンはローラ姫のこの反応に妙に苛つくのだ。
問題なのはその理由がわからないことだ。
(ち、なんなのだ…… 一体)
そしてドラゴンは再び考え始めた。どうもローラ姫は諦めそうにない。
なら殺すか、無視するか……。だが殺す気にはなれなかった。
大体何故自分がローラ姫を助けてしまったのかも理由が判らない。
そのもやもやが晴れないことにはどうにもローラ姫を傷つけようとは思えなかった。
かといって無視はローラ姫がさせてくれそうにもなかった。
どうにもできない。その時、ドラゴンに閃くものがあった。

(そうだ、竜王様はローラ姫にご執心だったのだ。ローラ姫を連れて行けば喜ばれるかも知れん)
ローラ姫を連れて行く理由を思いつき、ドラゴンはホッとした。
とにかく目の前の問題が一つ片付いたように思えたのだ。
「ローラ姫。俺は竜王様を探している。それまでは一緒に行ってやる」
「はい、私もアレフ様を探していますのでご一緒に探しましょうね」

(何か……何か違う……)

そうは思ったがドラゴンは諦めて何も言わずに歩き始めた。
ドラゴンの後について行きながらローラ姫はザックに入ってる剣を思う。
(早くアレフ様にこの剣をお渡ししなければ……)
それこそは幾多の魔王を切り裂いてきた伝説のロトの剣だった。

ローラ姫を襲った女、フローラは全身に火傷を負いながらも未だ生きていた。
しかしドラゴンから逃げ切った所で流石に力尽き倒れる。
(嫌……私はこんな所で死ぬの? リュカ様……)
かつて一目惚れしたリュカとの恋に敗れ、アンディと結婚した彼女だったが
未だにリュカを忘れられないでいた。
そんな時にこのゲームに巻き込まれ、フローラは嘆くよりもチャンスだと思った。
自分が最後まで生き残れば何でも望みを叶えてもらえるという。
ならばその時はリュカに釣りあう若さとリュカの蘇生を願おう。
ビアンカとその子供がいなくなればリュカは自分を愛するしかない。
このまま死んだような人生を送るよりもこのゲームに賭ける。それがフローラの決断だった。
しかしそれがここで終わるのか……絶望のままフローラは気絶する。
その時、偶然にも一人の女性が通りかかった。
「ん? 人が倒れてるね」
女僧侶フィオは倒れているフローラに近寄り、具合を見る。
「ん、これは酷い火傷だね。ま、ここで会ったのも何かの縁。
 治療してやるとするかね」
そして回復呪文の光をフローラへと当て始めた。

………。

のっしのっし、とっとっと、のっしのっし、とっとっと

チラリとドラゴンはローラ姫の足元を見る。
ドラゴンは身体が大きい為、一歩一歩の歩幅が大きい。
それについていく為ローラ姫は小走りになっていた。
このような森の移動には慣れていないのだろう、時々転びそうになりながらも懸命に走っている。
ドレスの裾は土で汚れ、ローラは荒く息を弾ませていた。
またしてもドラゴンは苛つく。
(どうしてだ。なんでこの女はこうまで俺を苛つかせる)
ドラゴンは立ち止まると身を伏せた。

「どうされたのですか?」
「乗れ」
「え、宜しいのですか?」
「勘違いするんじゃねぇぞ。お前の身を案じたからじゃねぇ。
 そんな荒く息を傍で吐かれちゃ気が散ってムカつくからだ。とっとと乗れ」
「はい、ありがとうございます!」

ローラ姫は喜び、素直にドラゴンの背に腰掛けた。
それを確認するとドラゴンは立ちあがり、歩き始めた。
これでもう苛つかせられることはないだろう。
「ドラゴンさんはお名前はなんと仰るのですか?」
そう思った途端、ローラ姫がそんなことを尋ねてきた。
「洞窟にいた時も聞きそびれていたものですから……ドラゴンは種族の名前ですし」
この女は俺を苛つかせる天才だ。ドラゴンはそれを認めざるをえなかった。
黙ってもこの女は教えるまで聞き続けるに違いない。
「……ゴン、だ」
「え?」
「うるせえ! 呼びたきゃ好きに呼べ! 魔物には名前で呼び合う習慣なんぞねえんだ!」

「はい、ゴンさん」
「聞こえてんじゃねぇかぁっ!!」

ゴンの受難は続く……かも知れない。
【B-5/森林と山岳地帯の境/朝】

【ローラ@DQ1】
[状態]:少々の疲労
[装備]:光のドレス
[道具]:ロトの剣 支給品一式
[思考]:アレフを探す ゲームを脱出する

【ゴン@DQ1ドラゴン】
[状態]:左肩に銃創(浅い)
[装備]:メガンテの腕輪
[道具]:支給品一式(不明アイテム一つ所持)
[思考]:ローラを竜王の所に連れて行く それまでは護る

【C-5/山岳地帯/朝】

【フローラ@DQ5】
[状態]:気絶 顔から右半身にかけて火傷
[装備]:なし
[道具]:毒針 ベレッタM92(残弾14) マガジン(装弾数15)×2 支給品一式
[思考]:ゲームに乗る 永遠の若さとリュカの蘇生を願う

【フィオ@DQ3女僧侶】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(アイテム不明)
[思考]:目の前の女性を助ける

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