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[No.37]
 人の誇り 竜の誇り[3]
【登場人物】
竜王、ククール、アレン

「竜王ッ!!」
「ぬぅ!?」

不用意に飛び込んできたアレンに竜王は違和感を感じながらもすれ違いざまにその胴を薙ぐ。
そしてククールの放った矢はアレンの左肩へと突き立った。
「「な、何だと!?」」
竜王の、そしてククールの声が唱和する。
アレンは胴から鮮血を撒き散らし、地面へと倒れ落ちた。
竜王は呆然と倒れたアレンを見る。
「馬鹿な……ワシはこのような決着を望んだのではない……こんな、こんなことが」
「……う、……うう……」
「!」
アレンの呻き声を聞き、竜王はアレンの下へと駆け寄る。
「おい、生きているのか? このような所で死ぬような輩をワシは認めんぞ、おい!」
「お願いです。僕たちに力を貸してください……人と……力を……」
「貴様! さんざん好き勝手にほざいてワシの言い分を聞かぬつもりか! 許さぬぞ、目を覚ませアレン!!」
しかしアレンはもう二度と口を開かなかった。
その体温が急速に失われていくのがわかる。

ヒュオッ パシィ!

風を切って再び飛来した矢を竜王は受け止める。
不意を討たれたならともかく攻撃の予測ができるなら矢を受け止めることなど造作もない。

「貴様ァアアア!!!」

竜王は烈火のごとく激怒し、その掌にギラの炎を集中させた。
無数のギラが収束し、上位呪文ベギラマへと変化する。
いや、それはベギラマとも呼べぬさらに強大な炎となってククールへと襲い掛かった。
「う、うお!?」
ボウガンを窓枠に固定して撃っていたため、ククールは逃げるのが遅れる。
ベギラマの炎は塔の窓枠を破壊し、その爆圧はククールを外へ放り出した。
2階という低い位置だったので何とかククールは空中で姿勢を整え、受身を取って着地する。
しかし眼前に竜王が憤怒の形相で迫ってきていた。

「く、くそっバギクロス!」
ククールは呪文を唱えるが、それよりも先に竜王が杖を取り出し振るう方が早かった。
その杖はマホトーンの力が込められたまふうじの杖。
結果ククールは呪文を封じられバギクロスは不発に終わる。
「よくもワシの決闘を邪魔してくれたものだな! 消えよ!!」
「ごはっ」
杖の一撃がククールの腹部を直撃し、ククールは血反吐を吐きながら吹き飛び気絶した。
「止めだ!」
剣を振りかぶり、その喉笛目掛け振り下ろし――肩を掴まれた気がして竜王の動きが止まる。
(何をやっている……こやつは我が決闘を穢したのだ。それこそは万死に値する罪。振り下ろせ! こやつを冥府へと叩き落し、己の罪を思い知らせるのだ!)
しかし竜王の腕は小刻みに震えながらも硬直したように動かない。
(殺せ! 殺すのだ!!)
必死に自らを叱咤するが竜王の腕は動かなかった。

『あなたは人間を愛した』

アレンの言葉が竜王の動きを止めていた。
しばらくそうしていた後、竜王は小さく息を吐きククールの処断を諦める。
「お前は……命を張ってワシを救った。自分の言葉をその命で証明したのだ」
竜王は剣を下げると、ザックへと仕舞った。代わりにククールから赤いマントを剥ぎ取る。
「王に歯向かう者には死を与えねばならぬ。だが、殺せぬのならそやつはもう王ではない。見事だアレン。お前は……見事この竜王を討ち倒したのだな」
気絶したククールを放置し、竜王はアレンの亡骸へと歩み寄る。
「しかし困ったな。ワシは今まで竜王としか名乗ってこなかった。真実の名が存在したはずだがそれももう忘れてしまった。これからどう名乗ったものか……」
顎に指を添えて思案に暮れる。
「おお、そうだアレンよ。お主の名を貰ってよいか」
竜王はさも名案というように小さく笑った。
「ワシの名はアレン。もはや王の中の王でもなんでもない……ただ一匹の竜、アレンだ」

――フヮサ――

アレンは友の亡骸へと赤いマントを被せた。
そしてしばらく黙祷を捧げた後彼はゆっくりと塔の中へと消えていった。
【E-3/ナジミの塔/午前】

【アレン(竜王)@DQ1】
[状態]:普通
[装備]:竜神王の剣 まふうじの杖
[道具]:プラチナソード ロトの盾 ラーの鏡
[思考]:この儀式を阻止する アレンの遺志を継ぐ

【E-3/平原/午前】

【ククール@DQ8】
[状態]:HP1/2 気絶 マホトン
[装備]:ビッグボウガン(矢 18)
[道具]:インテリめがね 天馬の手綱
[思考]:マルチェロを止める

※サマルトリア王女リアはレーベの方角へ飛んだため、竜王たちに気付いていません。
 また塔の頂上にいたため、戦闘の音にも気づいていません。

【アレン@DQ2ローレシア王子 死亡】
【残り35人】

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