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夜に見る夢の変更点

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!!!夜に見る夢
{{category タイトル,nolink}}
登場人物
エイト(DQ8)、ローラ(DQ1) 
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 とつとつと、大地に穿たれた巨大な足跡は、真っ直ぐに東へと続いている。 
このゲームに参加している魔物は数いれど、これほどの巨躯を誇る者はおそらく二人といないだろう。 
彼の目的はハーゴンのため、彼らが祀る破壊神を復活させるため、参加者を殺すことなのだから、 
人が集まるだろう集落を目指すのはごく当然のことと言えた。 
 アトラスは東へ――アリアハンへと向かっている。 
そして、その後を追う二人もまた。 

 巨大な足跡に寄り添うように、ぬかるみに残された足跡が二つ。 
一つはもう片方に比べてやや大きく、重い。 
それだけ見れば何かの家族のようにも見える微笑ましい痕跡だったが、そうではないことをエイトは知っている。 
 彼らの正確な足のサイズを覚えているわけではないが、 
状況からしてこれがアレフとキーファのものであることは間違いなさそうだった。 
 少なくとも、此処までは彼らは無事でいる。 

 小さく安堵の息をついて膝をつき足跡の片方に手を伸ばし、それが固まりつつあることに気付いて眉を顰めた。 
 彼らが此処を通ってから、もう大分経っている。 
こちらは旅慣れぬ女性連れのこと、距離を詰めるのは不可能だろうが 
せめてこれ以上差を広げられたくはないものだ。 

 他に血痕や何かの情報源がないか確かめてから、エイトは初めて同行者を振り返った。 
少し離れた草の上でその様子を見守っていたローラが、こちらに気付いて愛らしく首を傾げる。 
   
「何か分かりましたか?」 
「はい。アトラスが此処から東――アリアハンに向かっていることと、 
 アレフさんたちがそれを追って、少なくとも此処まで無事に来たことは間違いなさそうです」 
「まあ」 
 良かった、とローラは娘らしい華やいだ笑みを浮かべる。 
汚れと疲労に曇ってはいてもそれは十分に魅力的で、 
彼女を真摯に案じていたアレフの顔を思い出し、早く再会させてやりたいものだとエイトは東の空を振り仰いだ。 
 アリアハンは彼方に遠い。 
どれほど急いでも、ローラの足に合わせてでは夜が明けるまでには辿り着けないだろう。 
 アレフたちは、もうアリアハンに着いただろうか。 
夜明けの放送で彼らの名前が呼ばれないことを願わずにはいられない。 

「……そろそろ、行きましょうか。ローラさん、歩けますか?」 
「ええ、勿論ですわ」 
 その言葉が強がりでないことを示すように、ローラは勢い込んで立ち上がる。 
ゴンと合流してからは彼の厚意に甘えて背中に乗せてもらっていたし、レーべでは僅かながら睡眠もとった。 
レーべから此処まで歩いてくる間にも怪我の治療がてら休憩を入れたこともあり、 
肉体的な意味でのローラの疲労は、ほぼ丸一日をこの世界で過ごしたにしては比較的軽いものだった。 
 それに、じきにアレフと再会出来ると思えば自然足取りは軽くなる。 
ローラのことを気遣ってか、ともすれば歩調を緩めがちなエイトを大丈夫だからと急かしたのは他ならぬローラ自身だった。 

「ならいいんですが……疲れたら無理をなさらず、すぐに言って下さい」 
 抱えるなり背負うなりしますから、と言ったエイトは男性にしては小柄な方で、 
背丈などはローラと大して変わらない。 
その彼がつい先ほどまで軽々とローラを抱き上げていたのだから、人は見た目で判断出来ないものである。 
 ちらりとエイトの顔を盗み見て、ローラはくすと笑みを漏らした。 
 
「エイトさん、何かいいことでもありました?」 
「え?」 
「お口が笑ってますもの」 
 ちょんと自分の唇に指を当てて示せば、エイトはかぁと頬を赤らめた。 
もともと童顔のエイトがそうすると、子供じみて見えてなんだか妙に可愛らしい。 
彼に悪いと思いながらもローラはなおも忍び笑いを漏らして、 
エイトはますます顔を赤くして誤魔化すように頬を掻いた。 

「いえ、その……前にもこんなことがあったと思ったら、懐かしくなってしまって」 
「前にも、ですか?」 
 きょとんと首を傾げると、エイトは照れたように――だが嬉しそうに笑った。 
「以前、僕のお仕えしていた姫様と、二人で城を抜け出したことがあったんです」 
 

  
 それはエイトが拾われて間もない頃のこと。 
ミーティアがトラペッタで開かれる祭りをどうしても見に行きたいのだと駄々をこねて 
(後で聞いたところによると、それは記憶を封じられた影響か、 
 どうも喜怒哀楽に乏しいところがあったエイトに楽しい思いをさせてやりたいという、 
 まったくの善意故の我が侭だったのだけれど) 
お弁当まで用意して、二人でこっそり城を出た。 
子供の足では日暮れまでにトラペッタに着くことなど出来なくて、 
暗い森の小道を歩くうち、案の定来た道さえも見失った。 
 ミーティアはそれでも泣き言一つ漏らさなかったが、歩きなれない小さな姫君の足には荒れた野道は過酷過ぎた。 
まめを潰し、それを庇って歩くうちに足を挫いて、動けなくなってしまったミーティアを背負い、 
トーポの先導に従ってエイトは黙々と歩き続けた。 
遠くに城の影と、姫君と幼い王女誘拐犯を探す兵士たちが持つ松明の灯が見えた時は、 
安堵のあまり思わず泣き出しそうになったものだった。 
もっとも城に戻った後、エイトは姫君と並んで国王陛下自らのお説教と拳骨を頂戴するという有難い栄誉を得て、 
ミーティアと二人本当に泣き出したのだけれど。 
 
 泣き疲れたミーティアが眠った後。 
『ひめさまを危険な目に遭わせてごめんなさい』 
 改めて謝罪に訪れたエイトは、下げた頭にその日二度目の拳骨を頂戴する羽目になった。 
『この阿呆め』 
 痛いやら、訳が分からないやらで目を瞬かせるエイトの頭を、先刻殴ったばかりの手で今度は髪をかき混ぜるように撫で、トロデは溜息混じりに呟いた。 
『何もわしが心配しとったのは、、ミーティアのことばかりじゃないんじゃぞ――』 
 
 
 
「――いい方なんですね」 
「はい。……姫様は、少しローラさんに似たところがおありでした」 
「私に?」 
 首を傾げるローラとミーティアは、髪も目も、外見的には何一つ似通ったところはない。 
それでも、物柔らかな物腰の中に時折見せる意思の強さは、 
父を庇って凛と立った、いつかのミーティアの姿を彷彿とさせた。 

「だから心配になるんですね、きっと。 
 あなたもあの時の姫様みたいに、動けなくなるまで無理をなさるんじゃないかと」 
 足を痛めでもしたらその分移動も遅れますから、と付け加える。 
いつもならまめが潰れたくらいの傷、ホイミ一つで簡単に治せるのだが、 
回復呪文が制限されたこの状況下ではどうだか分からない。 
この先のことも考えれば、要らぬ消費は極力抑えたいのが本音だった。 
 もともとローラが急くのも早くアレフに会いたいがため。 
無理をすれば逆に歩みが遅れるのだと言われれば、素直に頷くほかなかった。 

「トロデさんたち、ご無事でいらっしゃるといいですね」 
「ええ、アレフさんたちも」 
 再び東に目をやる。 
このゲームが始まってから、エイトはレーべ付近を動いてないし、レーべの東から来たというローラもトロデやククールらしい姿は見なかったという。 
 二人が辺境に隠れることより、集落に向かい仲間を探すことを選んだとすれば、 
レーべにいない以上、ククールも――これは別に会いたくはないが、彼の異母兄も、 
そしてトロデもアリアハンにいるのではないだろうか。 
 
――アトラスと、それを追うアレフたちが向かった、激しい戦場となるだろうアリアハンに。 

『まったく、いつになったらあやつはわしを父と呼んでくれるのかの』 
 ヤンガスやククールがふらりと城に立ち寄るたび、トロデが口癖のようにそう漏らしていることをエイトは知っている。 
さっさと呼んでやりゃあいいのに、とククールは呆れたように肩を竦めた。 
『トロデ王だってもういいトシだしな。孝行したい時に親はなしってよく言うだろ?』 
 幼い頃に両親と死に別れ、唯一血の繋がった家族である異母兄とはああという、 
どうにも家族運に恵まれない彼の言葉は妙な重みがあったが、それでもその一言がどうしても言えなかった。 
何を今更と思えば照れ臭くもあったし、時間はいつまでもあると思っていたから。 
――まさか、こんなことに巻き込まれるなんて夢にも思わなかった。 

 同じ年頃の少女同士、よくミーティアと楽しげに語らっていたゼシカの姿は欠けてしまったけれど。 
トロデーンに帰って、ヤンガスが旅の土産を披露して、ククールが何か気の利いた冗談を言い、 
ミーティアがころころと笑い声を上げ、トロデが血相を変えて怒り出す。 
そんな他愛のない平穏を取り戻せたなら。 
(そうしたら、僕はあの方を今度こそ“父さん”と――) 

「ああ、そういえば」 
 ぽん、と手を叩く音に、エイトははっと顔を上げた。 
「私たち、まだお互いの支給品を知りませんね。 
 折角ですから今のうちに見せ合っておきません?」 
 アリアハンに着けば悠長に荷物を確認している時間はないだろう。 
ローラの申し出はもっともなことに思われた。 
 
 エイトが同意し腰を下ろす間に、ローラが自分のザックから取り出したのは一目で業物と分かる剣だった。 
 かなりの年代物のように見えたが、不思議な光沢を放つ刃には曇り一つなく、 
柄には紅玉と、今にも飛び立たんとばかりに翼を広げた鳥を模した精緻な紋章が彫り込まれている。 

「……見事なものですね」 
「ええ、これはロトの剣。アレフ様――ロトの血を継ぐ勇者にしか振るうことの出来ない剣なんです」 
「この紋章は?」 
「勇者ロトの紋章ですわ。一説には、不死鳥ラーミアを模したものだとか」 
 ラーミア、と口の中で繰り返して、エイトはそれがいつかレティスが語った異世界での彼女の呼び名であることを思い出した。 
 次元を越えるという彼女の翼を借りれば、この大陸から出ることが出来るだろうか。 
だが、不幸なことにエイトには彼女に声を届ける術がない。 
その紋章に頂くほどにレティスと縁が深いという、ロトの血を引くアレフならば何か術を知っているだろうか。 

「エイトさんの支給品は?」 
「これです。僕は見たことがない物なんですが、ローラさんはご存知ですか?」 
 言ってエイトがザックの奥底から引っ張り出したのは繊細な彫刻の掘り込まれた一本の杖。 
昼にアリーナたちと持ち物の確認をした時は、それぞれ得手の武器を持っていたため 
そのままザックに放り込まれておいたものだ。 
一国の王女だというローラに道具の知識など期待していなかったが、一目見るなりローラはまぁ、と声を上げた。 

「そ、それは雨雲の杖!」 
「知ってらっしゃるんですか?ローラさん」 
 エイトの手からそれを受け取り、ローラはやはりと頷いた。 
 
「はい。アレフ様に見せていただいたことがありますもの。 
 太陽の石と雨雲の杖、そしてロトのしるし。 
 太陽と雨とが雫を生み出し、空に虹の橋を架けるのだ、と」 
「虹の橋……ですか」 
 まるで御伽噺のようにも聞こえるが、アレフに聞いたと言うのであればそれは事実なのだろう。 
ならば、大陸の端にその橋を架ければ、あるいは―― 
 考えて、しかしエイトは首を振った。 
その太陽の石と、ロトのしるしとやらがない以上、この杖だけでは今はどうしようもない。 
それに、虹の橋を作るにしても、レティスに力を借りるにしても、 
この忌々しい枷を解かない限り、この大陸の外に出るのは危険だろう。 
 首に手をやる。金属特有のひやりと冷たい感触。 
この重さにももうすっかり馴染んでしまった。その事実がまた腹立たしくもあった。 

「ともかく、アレフさんゆかりの品であるというのなら、それはローラさんが持っていて下さい。 
 護身用としても、何もないよりはましでしょう」 
 最悪、歩行の助けにはなりますから、と言えばローラは頷き、ロトの剣をザックにしまうと受け取った雨雲の杖を愛しげに抱き締めた。 
そして、目聡くそれに気付いて手を伸ばす。 

「あら、何かもう一つザックに残っているようですけど」 
「あ、いえ、それは」 
 役に立つような物ではないから、と止める間もない早業で、 
エイトの制止を振り切って、次の瞬間にはそれはローラの手に収まっていた。 
 
 
   
 見たところ、それは女性用の装備品のようだった。 
色は黒を基調としていて、ふんだんにあしらわれた白いレースはともすれば甘い印象を与えがちなものだが、 
これで服としての機能を果たせているのか疑問になるほど少ない布地、 
付属のガーターベルトと網タイツ(ちなみに同名の装備品とは違い、防具としての効力は何もない)、 
加えて留め具は前を紐で結ぶだけ、というきわどさが小悪魔的とも言える魅力を醸し出していた。 
 そう、それはどう見ても、 
「――下着です」 
 
 
  
 きっぱりと言い切ったローラに、エイトはがくりと項垂れた。 
それは勿論その通りなのだけれども、そんな身も蓋もない。 
「い、一応僕の世界では“あぶないビスチェ”と呼ばれている防具なんですが……」 
 妙な誤解をされでもしたらたまらない。気力を振り絞ってそれだけ言うが、 
聞いているのかいないのか、ローラは「あら」とか「まあ」とか言いながら、 
広げたあぶないビスチェをまじまじと見つめたり、サイズ合わせをするように胸に押し当てたりしている。 
まさか着るなどとは言い出さないだろうが、エイトはいたたまれない気持ちになった。 
 ちょうど半日ほど前、他ならぬエイトの仲間のゼシカによって、 
ローラの伴侶であるアレフが同じ気持ちを味わっていたことなど、エイトは当然知る由もない。 

「じゃあ、この服もこう見えて何かの魔力が込められていたりするんでしょうか?」 
「いえ。これ自体は見た目通り、大した守備力もない役に立たない装備品なんです。 
 ただ、ある強力な装備を錬金するのに必要で――あ」 
 何を思い出したものか、ぴたりとそのままエイトは凍りついた。 
ローラは辛抱強く続きを待ったが、エイトは顔を白くしたり青くしたりするばかりで、放っておいては当分正気に戻りそうもない。 
「エイトさん?」 
 目の前でひらひらと手を振ると、ようやくエイトはぎくしゃくと顔を上げた。 
  
「……なんでもありません。行きましょう!」 
「でも、今錬金がどうだとか、何か言いかけて」 
「大したことではありませんから!気になさらないで下さい」 
 そんなことを言われても。 
ひったくるようにしてあぶないビスチェをザックにしまい、 
右手と右足を同時に前に出しそうな勢いで歩き出すエイトの姿は、様子がおかしいを通り越してはっきりと不審だ。 
これで気にするなと言われても無茶と言うもの。 
これを気にするなと言われても無理がある。 
 だが、誰にでも触れられたくないことはあるというもの。 

「……そうですわね。もう十分休憩したことですし、そろそろ出発しましょう」 
 早くアレフに会いたいローラにしても、その申し出に異論はなかった。 
そのうち話すつもりになってくれるかもしれない。 
今のところは見逃してあげることにしで、ローラはにっこりと微笑んだのだった。 
 
 
 
 エイトは錬金が好きだった。 
錬金そのものが、というよりは新たな物を錬金するとトロデが大喜びするものだから、 
それが嬉しくてつい熱中してしまった、というのが正しいが、この際最初の動機はどうでもいい。 
そうするうちにすっかり錬金に詳しくなってしまったエイトは、どれとどれを組み合わせるとあれが出来る、とか 
あれを作るためにはこれとそれが必要だ、とかのレシピがほとんど全て頭に入っている。 
 当然、あぶないビスチェの活用法も。   
 
 あぶないビスチェ。 
それだけでは世の男性方の目を楽しませる役にしか立たない、ある意味布の服以下のこの防具は、 
実は女性専用装備品最高の性能を誇る神秘のビスチェを錬金するのに必要なのだ。 
高い呪文耐性と、守備力を持つ神秘のビスチェ。 
 その錬金に必要な装備品は二つ。 
一つはこのあぶないビスチェで、もう一つは光のドレス。 
 そう、まさに今目の前のローラが着ているそれ。 

(いや、でもどうせ錬金釜がなければ何の意味もないんだし) 
 錬金釜がなければ、あぶないビスチェはデザインがきわどいだけの色気過剰な下着でしかなく、 
対して光のドレスは高い守備力と呪文反射能力を持つ、優れた装備品だ。 
(――忘れよう、うん) 

 ぶつぶつと呟きながら一人頷くエイトを、 
心優しいローラはやはり見なかったふりをしてあげた。 
 
 
 
 
 
 これも運命の悪戯か、目指すアリアハンには彼ら二人の探し人と錬金釜。 
「すいません、ちょっとそのドレス脱いで僕に下さい」 
と、エイトがいささか誤解を招く発言をすることになるのは、そう先のことではないのかもしれない。 
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【D-2/平原/黎明】 

【ローラ@DQ1】 
[状態]:HP3/4 火傷 
[装備]:光のドレス 雨雲の杖 
[道具]:ロトの剣 支給品一式 
[思考]:アレフを探す 竜王にゴンの事を伝える ゲームを脱出する 

【エイト@DQ8主人公】 
[状態]:HP2/3 MP1/2 左肩にダメージ 腹部と背中に打撃 火傷 
[装備]:メタルキングの槍 
[道具]:支給品一式 首輪 あぶないビスチェ 
[思考]:ローラをアレフの元に連れて行く 仲間(トロデ優先)を捜し、護る 危機を参加者に伝える 
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