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それぞれの再会、それぞれの思い

それぞれの再会、それぞれの思い


登場人物
アレン(竜王)(DQ1)、トルネコ(DQ4)、リア(DQ2)、アリス(DQ3)、マリア(DQ2)、トロデ(DQ8)、クリフト(DQ4)、マルチェロ(DQ8)


「アリアハン、私の目からも見えてきましたよー」
「あ、ほんとだー!」
「大丈夫ですか、慌ててはしゃいで落ちないで下さいよ?」

 ファルシオンの手綱を引いているため、徒歩よりもやや高い視点を持つアリスが一同に呼びかける。
 馬上のここちよい揺れに睡魔を誘われていたか、アリスの後ろからリアは少しだけ眠そうな声で喜ぶ。
 あわわ、とそんなリアをトルネコが心配そうに見上げる。
 竜王アレンは、そんな平和な三者を温かく見守りながら。

 ――四人は、無事にアリアハン城下町へたどり着いていた。

「さて馬よ、彼らの知己がどこに居るかはわかっているのか?」
『ヒッヒーン!』
「そうか」
「あのうアレンさん、あなた馬とお話が?」

 アレンとファルシオンが会話しているかのように見えたトルネコが、怪訝に思う。

「いや、詳しくは分からんぞ。だが、好意的な返事のようには聞こえんか?」
「それは確かに」

 ワシは元々リカントやキメラのような動物系魔物も従えてきたからの、と一人ごちる。 
 もっともこの馬は魔物どころか、ただの動物とも一線を画す何か威厳のようなものがある気はしたが。

「じゃあファルシオン、みんなのところまで案内してくださいね?」
『ヒヒン』
「クリフトさんもそちらにいらっしゃるとよいですなあ」
「マリア……お姉ちゃん」

 それぞれがそれぞれの探し人の安否について心配する声を上げる。

「不安がるな。心配であれば、早く向かうがよかろう」
「おや、アレンさんは?」

 ここにきてまるで他人事のように振舞うアレンにトルネコが尋ねる。

「うむ、ワシは別行動を取り、周囲を哨戒する。あたりに何者が潜伏しているとも限らん。
 それにこんな見てくれのものが現れれば、そなたらにもいらぬ警戒を抱かせることになりかねんだろう?」

 自嘲気味に言うアレン。
 だが、それにトルネコは反論する。

「そんなことはありませんよ。貴方は立派な、私たちの仲間です」

 トルネコは思う。確かにアレンは見てくれは魔物そのもの。第一印象はあまり良いとは言えないだろう。
 だがビアンカの死に悲嘆し、リアや私を守り、アリスの命を救ったのは他でもないこの人だ。
 人と共に生きようと尽力するこの男を、誰に咎める資格があるものか。

「どうか謙遜なさらないでください。貴方ならば、どんな人にも受け入れられますよ」
「フン、世辞を……」
「ですが確かに、我々の不意をついて攻撃をしてくる者が居ないとは限りませんな」

 となると、見張り役をしてもらい、周囲を巡回しておくという申し出はありがたい。
 何かあってもアレンほどの実力者であれば、そうそう遅れは取らないだろう。

「すいませんアレンさん。お願いできますか?」
「承った。さあアリスらは既に先行しておるぞ。はぐれる前に向かうが良かろう」

 しまった、ではまたあとでと告げながら、トルネコはアリスを追う。
 腹がたぷたぷと揺れる割に意外と足が速いのか、すぐに合流できたようだ。
 

「……礼を言うぞ、トルネコよ。そなたのような者と巡り会え、ワシは光栄だ」

 アレンはトルネコらが向かった方向を確認した後、別の方角へと走りだした。
 
 

 
 
「さて、こんなもんでよいじゃろう」

 こちらは宿屋の中。クリフトを拘束し終えたトロデが仕上がった、と声を上げる。
 そを受け、マリアはパタンと読みかけの呪文書を閉じた。

「お疲れ様です。クリフトさんには悪いですけど、しばらくはこのままにさせて頂きますね」
「……」
「それにしてもククールさん、遅いですね…」

 拘束を済ませたことでひとまずクリフトへの警戒心を取り払ったマリア。
 次に気になるのは、出て行ったククールの安否だ。

「どうやらお馬さんも一緒に何処かへ向かったようですし、さすがにそろそろ」
『ヒヒーン』

 自分も外に彼を探しに行くべきか、とトロデに打診しようとしたところで、鳴き声が聞こえた。

「あら、噂をすれば何とやら、お馬さんが帰ってきたみたい――ただ少し、足音が多い……?」
「なんと、それはまことか?」
「もしかしたら、あの時私たちを助けてくれたアリスさんかもしれません。ですが――」
「警戒しておくことに越したことはない、じゃろ?」
「はい、クリフトさんと共に奥に隠れてくださいますか?私が前で様子を見ます」
「マリア王女、あまり危ない橋は渡るんでないぞ」
「分かってます、では」

 マリアは入り口のドアへ、トロデは軽快にクリフトを担ぎ、部屋の奥へとそれぞれ散開する。
 灯りは元々つけていないが、馬と同行しているとなると、私達はここに居ることはバレているだろう。
 だが逆に馬と同行していることで、バーサーカーのような無差別に人を襲うものではなさそうなのは幸いか。

(ただでさえククールさんの行方が分からないというのに――)

 できることなら、話の分かる仲間であって欲しい。
 そのマリアの願いが通じたか、彼女の警戒は杞憂に終わった。

「えーと、ここでいいの、ファルシオン?」
「ヒン」
「じゃあちょっと待っててね。えーと…アリスです。マリアさんはいらっしゃいますか?」
「……アリスさん?」
「その声、おねえちゃん!?」
「――! リアちゃんも居るの?」

 宿屋へと向かっていたのは死闘から自分たちを救ってくれた、勇者アリス。
 そして温厚そうな中年の男性に加えて、今は亡き大事な仲間ランドの妹リアの三名だった。
 宿屋のドアをあけたところで、勢いよくリアがマリアに飛びついた。

「おねえちゃ〜〜〜ん!!」
「リアちゃん、よく無事で!」
「よかったね、リアちゃん」
「ほほ、私も少し、もらい泣きですよ」

 わんわんとマリアの胸で泣き続けるリアと、それを確かに抱きとめるマリア。
 殺伐とした殺し合いゲームの舞台の中、確かな希望が一つ、そこにあった。
 
 

 
 
 すぐに泣き疲れて眠ってしまったリアをベッドに寝かせ、改めてマリアが二人に向き直る。
 奥のほうに隠れていたトロデも挨拶にと出てきた。クリフトは念のため、奥に隠したままだが。
 ちなみにトルネコとトロデはお互いに「一度お会いしましたかな?」と首をかしげていた。

「では改めまして、私がマリアです。あちらがトロデおじさま。よろしくお願いします。
 お二人とも、リアちゃんをここまで守ってくださり、どうもありがとうございました」
「そちらも無事でよかったですよ。あと私は全然リアちゃんを守ってなんかいません。
 むしろ私は、リアちゃん達に助けていただいた側なんですよ」

 あの死闘の果て、瀕死で倒れていたところを、リアのはからいで命を救われたのだとか。

「それで、ご一緒だったカンダタさんは――」

 しまった、とばかりに口を押さえる。
 瀕死だったアリス、なのにカンダタが助けられなかった理由。検討はついていた。
 案の定アリスは少し暗い表情で、予想通りの結果を告げた。

「ええ、カンダタは、ヒミコに――はい」
「すいません、無神経で……」
「お気になさらず。私は大丈夫です。彼の分も、このゲームを破壊してやりますから!」

 右の拳を高く上げての力強い決意表明に、思わずマリアはふふ、と笑みをこぼした。

「ではあなたが、ずっとリアちゃんのことを?」
「トルネコです。私たちも大したことはしておりません。共にこちらまで歩いてきたことくらいです。
 真に彼女を守ったのは、ビアンカという女性ですよ」
「……そのお名前、放送で呼ばれていましたね」
「ええ、最後までリアちゃんのことを庇って――お亡くなりに」

 それは立派な「母」のようであったと告げると、マリアは天に向け黙祷を捧げる。
 恐らくは天に昇った彼女に向け、感謝でも告げているのだろうか。

「ビアンカ……のう」

 トロデがどこかで聞いたかのように頭をかしげる。
(あの子がびくりと反応したのは、ちょうどそんな名前じゃったか…?)

 アリスもマリアも知る由もないが、ビアンカは彼女ら保護し、説得したレックスの実の母親である。
 もし彼女が無事生存していたなら、彼もまた違った未来を見ることができていたのだろうか。

「ところでマリアさん、クリフトさんは一緒ではないのですか?」

 アリスから告げられた名に、びくっとマリアが反応する。

「おお、そういえば先ほどから姿が見えませんな」
「ええと、彼なら奥にいらっしゃいます…けど」
「そ〜うですか!実はクリフトさんと私は元の世界からずっと仲間としてやってきた仲です。
 是非ともお会いしたいのですが、もしかして、寝てらっしゃいますか?」
「いえ、そういうわけではないのですが……」
「なら早速奥のほうに失礼しましょう、アリスさんもどうです?」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「はて?それはまたどうして」

 急に歯切れの悪くなったマリアの返答に、トルネコが不思議がる。アリスも同様のようだ。
 しかしマリアはクリフトについて、どう対応すればよいのか困惑していた。

 温厚な中年、トルネコ。彼は確実に信頼できる方といえるだろう。
 あの戦闘から私達を庇い、援護してくれたアリスもまた、信頼できる。
 一方で、そのトルネコもアリスも「仲間」と言うクリフト。彼は違う。
 だが彼は我々に平然とザラキを唱えようとしてきた「ゲームに乗った疑いのある者」だ。信用できない。
 そして殺人者を仲間とし信頼する者となると、クリフトが牙をむくには絶好の相手だ。
 もっとも今の彼の状況からして、トルネコたちが無駄な被害を受けることはないだろう、だが。
(――全て話しておくべきでしょうか)

 知り合いがこのゲームに乗っていると聞けば、当然ショックを受けてしまうだろう。
 だが結局、彼を拘束している今の状況、いつかは事情を説明しなければいけない。

「信じられないかもしれませんが、クリフトさん――彼は、私達を殺そうとしてきました。
 なので今少し、手荒な真似をさせていただいています。……おじさま、連れてきてくださいますか?」
 
 

 
 
 程なく、クリフトが広間まで連れてこられた。

「……クリフト、さん」

 トルネコが、変わり果てたクリフトを見て思わず声を漏らす。
 全身を切ったシーツでがんじがらめにされ、身動きの一つも取らない、いや取れないというべきか。
 聞けばザラキを唱え、彼女達全員を抹殺しようと企てたらしい。
 やむなく麻痺させ、魔力を全て失わせたそうだ。これでは神官の彼は戦闘能力は皆無に等しい。

「混乱していたとは、考えられないでしょうか。元々彼パニックに陥るとザラキを連射する癖がありまして…」

 これは本当のことだ。かつての道中この悪癖には皆でたびたび苦笑いをしていたのを覚えている。

「残念ですが、意図的にザラキの詠唱をしていたのは事実です…。私にもそれなりに心得がありますので」
「まったく、王女とククールがいち早く気付かねば危なかったのじゃぞ!」
「リアちゃんのよく知るお姉さんである貴方が、こんなことで嘘をつくとも思えませんしなあ…」

 ふーむ、とあごに手を当てて考え込むトルネコ。
 暫しして顔を上げた彼は、何か決意を固めたような顔で二人にこう告げる。

「少し、彼と二人で話をさせていただいてよろしいでしょうか?」
「えっ?」
「彼に真意を問います。これは長く仲間をやってきた私にしか出来ないでしょうから」

 元々私達は馬車の常連で、その中で仲良く話をしていてましたからね、と付け加える。
 見れば、クリフトもまたトルネコをただじっと見ている。
 彼なら自分を助けてくれると思っているのか、それとも別の狙いがあるのか。
 何を考えているかを読み取ることは難しい。
 ただ「仲間」という単語を出されては、マリアも強く反対できない。
 アレンやランドと連れ添って――それを失って、「仲間」の与える影響力はイヤというほどに感じてきたから。

「分かりました。麻痺ならもう少しすれば解けるでしょうから、そうすれば彼からも話ができるかと」
「そうですか。本当は満月草でもあればよいのですが、まあ欲張ってもいられませんな」

 トルネコはそのままひょいとクリフトの体を摘み上げ、背負う。
 麻痺のせいか、クリフトが元々が細身というせいか、幾分簡単に持ち上げられた。

「では、朝までには何とかいたしますので…二階をお借りしますぞ」

 どんどんと階段を登るトルネコの背を、三人はただ黙って見送った。
 
 
「――よかったのかの?トルネコを一人にしてしもうて」
「……きっと何とかしてくださることでしょう。私は、二人の絆を信じます」
「トルネコさんなら大丈夫ですよ」

 きっとクリフトさんと仲良く戻ってきます!と言い切るアリス。

「元の世界には美人の奥さんと可愛い息子さんもいらっしゃるみたいですし、頼れるお父さんですもの!」
「なーんとっ!わしと大して変わらぬ見てくれをしておるくせにっ!」
「おじさまだって、とってもかわいい娘さまがいらっしゃるんでしょ?妬かないの」
「そうじゃ、ミーティア〜!わしもエイトもククールもゼシカもいなくて困っておるに違いない!
 ヤンガスだけではとても信頼できん!彼奴ならミーティアを売り飛ばしかねんぞい!おろおろろ」
「う、売り飛ばす…?」

 人身売買か何かが発達しているのだろうか、とついつい深く考え込むアリスだった。

「そういえば、ここに来るまでにククールさんを見かけませんでしたか?銀色の髪に、赤い服を着た――」
「とんでもない女たらしじゃ!アリスほどの美少女なら会ったら即座にナンパされとるぞい!」
「あ、はは、どうでしょうね。残念だけど、私達は見なかったですね」
「そうですか……。少し前に辺りの警戒をと外に出られたまま、そのままで。何かあったのではないかと」
「このあたりに留まっているのでしたら、今哨戒に回ってるアレンさんが見かけてるかもしれないですね。
 まあ、それまで私達は休憩でも――」

 しませんか、と言おうとしたところでアリスがはたと気付く。
 ――何故かマリアが固まっている。
 トロデも何やらそわそわと、マリアの方をちらちら見ている。

「えと…私、何か変なこと言いました?」
「――アレンが、生きてるんですか?」
 
 
「あれ、もしかしてマリアさん、アレンさんとお知り合いですか?」
「……アレンは、私の元の世界の仲間です」

 言いながら、ザックから名簿を取り出したマリア。
 ぺらぺらとページをめくり、一つの赤い線の引かれたページを開くと、アリスに見せ付ける。

「『夕方の放送で、名前が呼ばれた』アレンが、ですけれど」
「そんな!一緒にここまで来たアレンさんは、その方とは全然…」
「でも他にアレンという名の参加者は名簿にはありません。誰かが彼の名を騙っていることになります。
 ――アリスさん、そのアレンと名乗る、貴方の仲間は一体どの方ですか?」

 名簿を渡されたアリス。
 指示に従いぺらぺらをページをめくり――手が止まる。
 そこはマリアにとって、よく見覚えのあるページで。

「この方です。リアちゃんもトルネコさんも、アレンさんとしか言わなかったので、てっきり――」
「――嘘、でしょう」

 ククールから聞いていた。アレンを殺した魔物が居ると。
 てっきりゲームに乗り、無差別に人を襲っているのかと思っていた。
 だが、現実は違った。
 その魔物は殺した男の名を名乗り、リアたちを懐柔し、人の信頼を隠れ蓑に生きているらしい。
(殺すだけでは留まらず、彼の名を騙ってまで、彼を貶めるというの?――許せない)

「竜……王」

 マリアはまるで何かの呪詛のようにただ一言、その魔物の名を呟いた。
 
 

 
 
(やはり、戦闘が行われた形跡が見られるな)
 一方アレンは周囲の哨戒を続けていた。
 常人では見えぬような暗闇も、夜目の効くアレンにとってはあまり苦ではない。
 外から見ていたとおり、アリアハン城壁は大変な有様になっていた。城内も酷いことになっているだろう。
 城門前にもところどころに何かが爆発したかのような焦げた後と、それによる破砕痕が残されている。
(血痕もある……が、これらはあまり新しくはない。恐らくは半日以上経過しているか)

 他方、城下町の方には、それほど戦火は広がっていないようだ。
 行われていた戦闘がこれだけなら、今はもう周囲にゲームに乗った者はいないのかもしれない。
 そろそろトルネコたちと合流するか――と思った矢先、僅かに別の血の臭いを感じた。

 向かってみればそこはちょうどトルネコたちのいる(馬が繋がれていた)宿屋からは死角になる位置。
 考えようによっては、意図的に宿屋から離れた場所のようにも思えた。
 そこに倒れ伏す一つの「赤」を見て、アレンは大きくため息をついた。

「貴様か……」
 
 そこには、彼がアレンと名を名乗るに至るきっかけを起こした男の死体。
 片腕が消えているものの、それは間違いなくロトの子孫と自分との決闘に横槍を刺した忌まわしき男。
 あの時トドメは刺さなかったはずだが、どういういきさつか、結局はここで物言わぬ骸と成り果てていた。

「こういう形で貴様と再会することになるとはな」

 アレンは呟く。心のどこかで、まだ生きていることを願っていたのだろうか。
 見れば充足したようにも見える死に顔。男は何かを成し遂げた上で死んだようにも見える。
 もっとも辺りに死体はこれ以外無いことから、相対した敵は仕留めそこなったのだろうけれど。

「貴様がワシ達の決闘を邪魔したことを許すつもりはない。だが」

 事実として只あるのは、既にこの男が死んでいるということだけ。
 ――ならばもう、今更過去のことについて何も言うまい。
 
「貴様の最期は、ワシがしっかりと見届けてやろうぞ――人間流、でな」

 竜神王の剣で地面に穴を掘る。出来た空洞に男の死体を横たえ、埋めなおす。
 簡単な作業だが、これは俗に「埋葬」というものだそうだ。
 アリスと出会った地で、彼女が他の死者に対し行っていた事だ。
 魔物たちの世界では「死体」とは殆どが他の魔物たちの「食料」であり「埋葬」といった習慣はあまりない。
 人間の死体であれば、肉を喰らい尽くせばそれは「骸骨」として魔物となり、再生されたからだ。
 だから昨日までの――「竜王」であれば、この死体はただ打ち捨てるだけであっただろう。
 だが今の「アレン」は違う。人とのかかわりを持ち、人の文化を僅かであるが知った。
(こういうときは『冥福を祈る』と言うんだったか…フン、あの世でまことのアレンに詫びるのを忘れるなよ)

 男を横たえる時に気付いたことだが、その死体から流れ出る血液は、まだ新しいものだった。
 それは男を死に至らしめた戦闘から時間は大して経っていないことを示している。
 状況からして、もしかしたら男は宿屋内のリアたちの知己の仲間だったのかもしれない。
 そう考えると、宿屋から離れた場所で死んでいることにも合点がいく。

 だが一方でそれは、近くに襲撃者がまだ潜んでいる可能性を示唆していた。
(やはり一度トルネコたちと合流し、伝えておいた方がよいかもしれんな……)

 アレンは宿屋へと向かう。
 ――その先に、自身を仇とする者が居ることも知らずに。
 
 

 
 
 痛む左目を回復呪文で治療しながら、アリアハン城内から様子を伺うのは聖堂騎士マルチェロ。
 傷こそ大分ふさがったものの、視力が戻る気配は見られない。
(やはりもうこの左目が光を灯すことはない、か。――まったく、ヤツも厄介な置き土産を残してくれた)

 残る右目だけでは、外の様子を明確に把握することは難しい。
 だが逆に、視覚に頼れなくなったことで、周囲の気配が読みやすくなったようにも思える。
(先ほど来た新手が、ヤツの仲間たちと合流したようだな――)

 連中の総合的な戦力は分からない。
 もしかしたら烏合の衆で、ちょっと突付けば軽く打破できる集団かもしれない。
 しかし片目を失い、その治療に魔力を大幅に消費した今、少しの抵抗でも状況を逆転されかねない。
 先ほどから城下町を嗅ぎ回っている強い気配も気になる。
(こうなると無理に攻めるのは得策ではない、か)

 手元のカール・グスタフによる遠距離攻撃を行えば、ひとまず混乱を誘うことはできるだろう。
 だがその後集団対自分となったとき、この片目のディスアドバンテージは致命的になる。
 魔力の確保はそれを補う意味でも重要な課題だ。
 グランドクロスといった、大技を使える余力も残したい。
(異母弟よ、貴様の振る舞いは無駄ではなかったな)

 状況から判断したマルチェロの決断は、さらなる休息。
 まずは魔力を補給しなおし、その後隙を見て襲撃をすればよい。
 焦る必要は何一つない。時間などまだまだあるのだ。
(――既に未来なき異母弟とは違い、私にはまだ未来があるのだからな)
 
 

 
 
「さてクリフトさん。貴方が彼女達に手を出したのは――やはり、アリーナさんのことが原因ですかな?」

 宿屋二階の一室にて、クリフトと共に腰を下ろしたトルネコは問う。
 当のクリフトは未だ麻痺が解けておらず、返答は帰ってこない。

「ああ、ただ聞いてくださるだけで結構ですよ。時間はありますので。これは私の独り言です。
 私も彼女の死は放送で耳にし、ひどくショックでした。
 貴方に至ってはサントハイムからずっと共にいたのですし、さぞかしショックだったことでしょう」

(――それこそ、精神を病んでしまうほどに)
 元々クリフトがアリーナに対し、「仕える者」として以上の感情を抱いていることは知っていた。
 想い人が死んだと知れば、錯乱してしまうことも、凶行に走ってしまうのも無理はないと思う。
 かつて自分達の世界を混沌に陥れた「デスピサロ」の発端とて、同じようなものだったのだから。

「ですが元の世界には、ユーリルさんもライアンさんも、ブライ老だって、モンバーバラの姉妹だって居ます」

 そういえば、残された者達は今あちらの世界で何をしているだろう。
 我々が姿を消したことに気付いているだろうか。迷惑をかけていないといいのだが。

「この地にも、ルーシアさんこそ残念でしたが、私だって、ピサロさんだって、まだまだ健在におられます。
 だからどうか、自分を見失わないで下さい。貴方には我々がいます。――『導かれし仲間』たちが」

 怒りや憎しみ。これらは人を狂わせる。誰かが止めてあげなければ、それは無限に増幅する。
 かつて誰にも止めてもらえなかったデスピサロは、自らの体を変質させるほどに暴走してしまった。

 だが今のクリフトは違う。彼の前には私が居る。
 ならば私が、彼に救いの手を伸ばそう。それが仲間として、友として、やるべきことであるはずだ。

 クリフトの表情は変わらない。
 それは麻痺ゆえか、それとも――。
 
 
 
 それぞれの再会と共に、それぞれの思いが絡み合う。
 アリアハンの長い夜はまだ深く、夜明けは未だ、遠いようだ。


【E-4/アリアハン城下町宿屋/深夜〜黎明】

【リア@DQ2サマルトリア王女】
[状態]:睡眠 健康
[装備]:ロトのしるし(聖なる守り)
[道具]:支給品一式 風のマント
[思考]:マリアと再会した喜び マリアに風のマントを返す

【アリス@DQ3女勇者】
[状態]:健康 左腕に痛み(後遺症) MP0
[装備]:隼の剣 王者のマント
[道具]:支給品一式
[思考]:マリアの態度に困惑 クリフトはトルネコに任せる このゲームを止める 悪を倒す

【トロデ@DQ8】
[状態]:HP3/5 腹部に深い裂傷(止血) 服はボロボロ 全身に軽度の切り傷(ほぼ回復)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(不明の品が1?) 大錬金釜 ミレーユの通常支給品
[思考]:マリアの態度に悲しみ クリフトはトルネコに任せる 打倒ハーゴン

【マリア@DQ2ムーンブルク王女】
[状態]:HP4/5 MP0 服はボロボロ 全身に軽度の切り傷(ほぼ回復)
[装備]:いかずちの杖
[道具]:支給品一式×2(不明の品が1〜2?) ※小さなメダル 毒薬瓶 ビッグボウガン(矢 0)
    天馬の手綱 インテリめがね アリアハン城の呪文書×6(何か書いてある)
[思考]:竜王(アレン)を倒す クリフトはトルネコに任せる 呪文書を読み解く 打倒ハーゴン 

【E-4/アリアハン城下町宿屋二階/深夜〜黎明】

【トルネコ@DQ4】
[状態]:健康
[装備]:氷の刃 無線インカム
[道具]:まほうのカガミ 引き寄せの杖(4) 飛びつきの杖(4) 
    支給品一式×3 ワイヤー(焦げて強度は弱くなっている)
    まだらくも糸 魔物のエサ イーグルダガー ホットストーン
[思考]:クリフトを説得する 他の参加者に危機を伝える

【クリフト@DQ4】
[状態]:左足に火傷(ある程度治癒) 背中に火傷(ある程度治癒) 麻痺している MP0
[装備]:なし
[道具]:祝福サギの杖[7]
[思考]:トルネコと話し合う? マリアたちと同行し、油断させて殺す
    自分が優勝し、アリーナを復活させてもらって元の世界へ帰る

※ファルシオンは宿屋の外で待機しています

【E-4/アリアハン城下町→宿屋/深夜〜黎明】

【アレン(竜王)@DQ1】
[状態]:健康 MP0
[装備]:竜神王の剣 まふうじの杖
[道具]:プラチナソード ロトの盾 ラーの鏡 首輪×2
     折れた皆殺しの剣 聖なるナイフ さざなみの剣 破壊の鉄球
[思考]:アリスたちと合流 アリアハン周辺の敵を警戒 この儀式を阻止する アレンの遺志を継ぐ

※ククールの死体は埋葬しました

【E-4/アリアハン王城内/深夜〜黎明】

【マルチェロ@DQ8】
[状態]:左目欠損(傷は治療) HPほぼ全快 MP1/3
[装備]:折れた皆殺しの剣(呪い克服)
[道具]:84mm無反動砲カール・グスタフ
    グスタフの弾(対戦車榴弾×1 発煙弾×2 照明弾×1)
[思考]:城内で休息 隙を見て宿屋を襲撃 ゲームに乗る(ただし積極的に殺しに行かない)


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