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ただ君を救いたい、ただあなたを救いたい

ただ君を救いたい、ただあなたを救いたい


登場人物
アレフ(DQ1)、ルーシア(DQ4)


走る。
草の根を分け、地を蹴って。

救いたい。

ただ君を救いたい。

それだけを想い、彼――アレフは森を駆け抜ける。
アレフは腕の中にいる少女に視線を落とした。
顔は真っ青に、唇は紫色に変色している。
極力揺らさないように抱えている為、腕が痺れてきていたが
そんなことを気にしている余裕はない。
早く治療しなければ、一刻も早く毒素を取り除かねば彼女――ルーシアは死ぬ。
こうしている間にも毒素は彼女の身体を蝕んでいるのだ。
彼女の様子を見ていると、動かさない方がいいのかもしれないと思ってしまう。
それはもちろんそうだろう。激しく動かすことで毒がそれだけ早く回ってしまうのは自明の理だ。
しかし彼女を一人置いていくことは出来なかった。
解毒ができる誰かを探しに行って戻ってきてみたら手遅れだった、などという事態になったら
目も当てられない。そうでなくても誰かに襲われるという事態は有り得た。
そう、先程のように。
思わぬ乱入者によってその時はなんとか乗り切ることは出来たが次もそうなるとは限らない。
自分が身体を張って護らなければならないのだ。
しかしこうして抱えて走っているだけでも彼女の寿命は縮まって行ってしまっている。
どちらが正しいのか判らない。ならば目の届く場所で護る。
それがアレフの答え。

「大丈夫だ、必ず助かる。助けて見せる」

幾度目かの虚しい激励を発し、アレフは走っていた。
そして森を抜ける所でアレフは立ち止まり、手近な巨木の幹に身を隠した。
平原からこちらに向かってくる影があったからだ。
もう二度も騙し討ちを仕掛けられているアレフは慎重に相手を見極める。

(あれは……ドラゴンか!)
辺りは日も落ち始め薄暗くなっていたが、なんとか遠目にその姿を確認する。
背に誰か乗っているようだがそこまではさすがに確認できない。
(く、今は戦っている余裕なんかない。……迂回するしかない!)
アレフは一度道を少し戻ると南から森を抜け、ドラゴンに鉢合わせないように平原を駆けた。

目の前の命を追っていたアレフは一つのすれ違いに気付かない。
彼が想うことは一つ。

――ただ、君を救いたい


アレフさんはやさしいですねえ。
こんな私のために一所懸命になってくれて。
ルーシアただの足手纏いになっちゃいました。
ドジです。
天空城でもよく言われてました。
ルーシアはちょっとトロいところがあるって。
友達はそう笑って、そういうとこが好きだって言ってくれましたけど。
やっぱりルーシアちょっと気にしてました。
こんな怖い世界に連れてこられて、しっかりしなくちゃって想ってたんですけど、
こういうのって治らないものなんですねえ。
こうしてアレフさんやゼシカさんに迷惑かけちゃってます。

胸が痛いです。

毒のせいもあると思うです。
でも心と身体が両方痛いです。
アレフさんは走りながら声を掛けてくれてるみたいです。
でももうルーシアにはその言葉が聞き取れません。
本当にごめんなさい。

そう伝えたいのに喋ることもできないです。
唇が動きません。
とても泣きたくなって、でも泣けなくて……痛いです。

胸が、痛いです。

そんな時、ルーシアに呪文を教えてくれた先生を思い出しました。
怪我をした私にホイミをかけてくれたのがきっかけで呪文を教えてもらいました。
その時もルーシア、痛い痛いって泣いてました。
ルーシアはちっとも変わってません。
お元気でしょうか。
そう、今日はまだドランに餌をあげてません。
お腹すかせてないでしょうか。
誰か気付いてあげてくれてるでしょうか。
ああ、そういえばお城の図書室から本を借りっぱなしでした。
どうしましょう。また司書さんに怒られちゃいます。
なんだかどんどんいろんなことを思い出しちゃいます。
ユーリルさんの姿が浮かびます。
世界樹での私の助けに応えてくれた勇者さま。
今どうしているでしょうか。
そうです。ユーリルさんのお仲間さんもここにいるのでした。
元気なアリーナさん。頼りないクリフトさん。物知りなトルネコさん。
みなさん無事でしょうか。

……無事、だったらいいです。

またアレフさんが何か声をかけてくれました。
答えられないのが申し訳なくて、せめて顔を見ようと瞼を開けました。
瞼はとっても重かったですけどルーシア頑張りました。
ぼんやりとアレフさんの顔が見えます。
何か口を開いて話しかけてくれてます。
とっても哀しそうな顔をして、必死に呼びかけてくれてます。

いいんです、アレフさん。
そんな哀しそうな顔しなくてもいいんですよ。

だってこうなったのはルーシアのドジのせいなんですから。
アレフさんが哀しいとルーシアまで哀しくなっちゃうです。

だから、笑ってください。

……無理、ですよね。アレフさんはやさしいですから。
ルーシアのせいで、哀しくさせちゃうんですよね。
何とかしたいです。
ルーシアにできることは何かないでしょうか?
その時、気が付きました。
アレフさんはとっても汗をかいていて、息も弾んでます。
ルーシアを抱えて走ってるんですから当たり前ですよね。

ルーシアに任せてください。

先生に習ったおかげで回復呪文は得意だったりするんですよ。
あ、でも口が開きませんです。
困りました。
いえ、ここで諦めちゃ駄目です。
頑張りましょう。
頑張って、頑張って口を開きましょう。

えい。

/
 
 
 
「……ベ……ホ、マ……」

僅かに開いたルーシアの口からか細い音が漏れた。
そして暖かな光と共に、僅かだけアレフの体力が戻る。

「!?」

先程まで何も答えずにいたルーシアから突然回復呪文をかけられてアレフは驚く。
「何をやってるんだ! そんな余裕があるなら俺じゃなく自分に使うんだよ!」
そう反するが、もう再びルーシアは何も応えなくなっていた。
「くそ、必ず救う! だから、それまで頑張るんだ!!」
アレフは自分の無力さを嘆きながら走る。
ルーシアは既に自分の中級回復呪文程度では受け付けない。

走ることしかできなかった。

そしてアレフは……彼女がその呪文を最後に呼吸を止めたことに気付かなかった。
最後まで、気付かなかった。
 
 
/

――うふふ、ルーシアお役に立てましたか?


【B-3/森林地帯/夕方(放送直前)】

【アレフ@DQ1勇者】
[状態]:HP4/5 背中に火傷(軽)
[装備]:マジックシールド
[道具]:鋼鉄の剣 鉄の杖 消え去り草
[思考]:ルーシアの毒を治すためにレーベを目指す ゼシカを助けに戻る ローラ姫を探す

【ルーシア@DQ4 死亡】
【残り25名】

※神秘のビキニと祈りの指輪はルーシアのザックに入ったままです。
※アレフはルーシアの死に気付いていません。


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