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ドラゴンの受難

ドラゴンの受難


登場人物
ゴン@DQ1ドラゴン、ローラ、フローラ、フィオ@DQ3女僧侶


(どうしてこんなことになっちまったんだ……)
ドラゴンは溜息をついた。
主たる竜王から任を受け、海底洞窟にてローラ姫を護衛していた彼。
姫の相手役ができるようにと、ドラゴンの中で最も知能が高い彼が選ばれた。
そして姫を救出に来た勇者アレフに討たれ彼の命は絶えたはずだった。
だが今また命を持ってこんな殺戮ゲームに参加させられている。
なんと中には竜王や勇者までいるらしい。そしてローラ姫も。
なんとなくローラ姫のポケポケした顔が思い浮かぶ。

苛ついた。

(あの馬鹿女、あの時も自分の状況を良く飲み込めてなかったみたいだからな。
 やれ、着替えたいだの、紅茶が飲みたいだの、身体を拭きたいからお湯もってこいだの……
 その度に魔道士やなんやに人間の町に行かせて……思い出しただけでも腹が立つ)

竜王からは丁重にもてなせと命じられているから無碍にするわけにもいかない。
話し相手になってくれと言われて延々とラダトームの国の素晴らしさや家族愛なんかを説かれた
時には途方に暮れた。

(どうせ今も自分の状況を良くわかっていないに違いない。見つけたら鬱憤晴らしを兼ねて
 食い殺してやる……)

それはそれとしてドラゴンはこれからどうするべきかを考え始めた。
ハーゴンは気に食わないが脱出することはできそうにない。
ならばゲームに乗るか? しかしそれも勇者やまして竜王に勝てるわけもない。
竜王が優勝するために命を捨てて参加者を狩るか?
最後の案がドラゴンには一番正しいように思えた。
主のために命を散らすなら本望である。しかし……

(竜王様ならハーゴンに従うのを良しとせず、ゲームを壊しにかかるかも……)

そうすると自分の行動は竜王にとって邪魔になってしまうのではないか?

しばらく考えたがこれだというような案は思いつかなかった。

(まず竜王様に会おう。そして指示に従おう)

そしてドラゴンは考えるのを止めた……。
竜王と合流するまでは他の参加者との接触は極力避けることにしてドラゴンは移動を始めた。
移動をしながら支給品を確認してみた。爪で器用にザックを開けると中には通常の支給品の他に
腕輪が入っていた。人間の腕に合わせて作られているのでドラゴンには装備できない。
なんか悔しかったので牙に嵌めてみた。ピッタリだった。ピッタリ過ぎて取れなくなった。
説明書が付いていたので読んでみる。メガンテの腕輪だった。
物凄く落ち込んだが、死んでも相手を道連れにできるんだと納得することにした。
支給品はもう一つあったのだがドラゴンはもう確認する気がなかった。

(何か……せっかく生き返ったのについてねぇなぁ)

深々と溜息をついてドラゴンは歩みを再開した。
しばらく進むと女性二人が視界に入った。こちらには気付いていないようだ。
よく見ると一人はなんとローラ姫だった。もう一人は青い髪の良家の夫人のようだ。
(うーん、馬鹿女に会ったら食い殺してやろうと思ったが今は余計なことはせんほうがいいな。
 ここは奴らが通りすぎるのを待って別の方向に進もう)
そう考えてドラゴンは伏せてローラ姫たちの様子を見ることにした。
ローラ姫は何やらはしゃいでいる。青い髪の女はそれに微笑みながら付き合っている。
そしてローラ姫が女に背を向けた時、女は懐から短刀のような針を取り出し振り被った。

「あぶねぇ馬鹿女ッ!! 後ろだァ!」

ハッとローラ姫は振り返り、女はこちらを見た。

(な、何やってんだ俺は!? 関わらねぇと決めたばっかじゃねぇか!
 しかも何でよりによってあの馬鹿女を助けるんだ?)

思わず叫んでしまった自分の行動が信じられずドラゴンは混乱する。

自分の声によってローラ姫は女の攻撃を避け、何かを言ったようだった。
女は何かを言い返し、何か黒い小さな筒のようなものを取り出してローラ姫に向けた。
危険を察したドラゴンはまたしても飛び出し、炎を女に浴びせかけた。
女は悲鳴を上げて炎から逃げる。そして黒い筒をドラゴンに向けてきた。

パンッ

破裂音が響き、ドラゴンの左肩の鱗が弾けとぶ。
(痛ぇ!? なんだこの攻撃は?)
何か小さな固いものが自分の皮膚の中に食い込んでいるようだ。
だがその位置は浅い。竜の鱗と竜の筋肉を貫くには些か力不足だったようだ。
ドラゴンは筋肉を膨張させて、弾丸を体外へと押し出す。
それを見た女は黒い筒を仕舞うと今度は呪文を唱え始めた。
(魔法使い!? ヤバイ、間に合うか!)
詠唱を阻止しようとドラゴンは女に迫るが、それよりも早く呪文は完成した。

「メラミ!」

灼熱の光球がドラゴンへと迫り来る。かわせないと知り、ドラゴンは防御体勢を取った。
しかしその時、なんとローラ姫がドラゴンを庇いメラミをその身で受け止めた。

(な!? 馬鹿女? なんで俺をお前が庇うんだよ!?)

ドラゴンはローラ姫の死を確信したが、ローラ姫のドレスが金色に輝き呪文を跳ね返した。
呪文を弾く効果を持った光のドレスを着ていたのだ。火球はそのまま女に炸裂し、その身を焼く。

「ぎゃぁああーーーーっ!」

悲鳴を上げ、火に包まれながらも女はこちらに背を向けて走り出した。
「逃すか!」
後を追おうとすると今度はドラゴンの前にローラ姫が立ちはだかった。
「お待ちなさい! 殺してはなりません!」

その強い意志を持った命令にドラゴンは思わず止まってしまう。
女はその隙に木々の合間へと姿を消した。
「馬鹿か! あいつはお前を殺そうとしたんだぞ! 何で庇う!?」
「それではあの邪悪な者の思惑通りになってしまうからです。
 フローラさんの行動は残念ですけれど……ここでは仕方のないことなのでしょう。
 憎むべきはあのハーゴン。彼女ではありません」
一瞬、気圧されて止まったドラゴンだが沸々と怒りがわいてきて怒鳴った。
「この大甘のお人好しが! お前みたいな馬鹿女はどうせこの先生きのこることはできん!
 この場で俺様が食い殺してやるぁ!!」
ドラゴンはぐわっと大口を開けてローラ姫の頭からかぶりつこうとする。
「まぁ」
その間の抜けた声にドラゴンは力が抜けて地面に突っ伏した。
本当に本気で自分に襲われるとは考えてなかったようだ。
(苦手だ……やっぱこの女は苦手だ)
動かないでいるとローラ姫は自分に向かって頭を下げてきた。
「そういえばお礼がまだでした。助けていただいてどうもありがとうございました」
ドラゴンはジロリとローラ姫を睨む。
「俺が怖くねぇのかよ」
「私が竜王に攫われていた時に色々とお世話をして頂いたドラゴンさんですよね?
 お声で判りましたわ。あの時も本当に感謝しています。
 アレフ様に倒されたと知った時本当に哀しかったですわ。
 あなたのことを話したらアレフ様もあなたに悪いことをしたと仰ってくださったんですよ?」

(あの勇者が? フン)

それを聞いてドラゴンはそっぽを向いたが、悪い気はしなかった。
勇者も自分も自らの使命をかけて命がけで戦ったのだ。元より憎んではいなかった。
もうどうでもよくなりドラゴンはローラ姫に背を向ける。

「気が削がれた。お前はしばらく生かしておいてやる。じゃあな」

早く竜王様を探して指示を頂かねば。

ドラゴンはのっしのっしと歩き出す。

とっとっと

後ろから何か聞こえた。
(気のせいだろう)
ドラゴンは無視して歩いた。

のっしのっし、とっとっと、のっしのっし、とっとっと……

だんだんと苛ついてくる。
「ハァ、ハァ、ハァ」
荒れた呼吸まで聞こえ出し、ついにドラゴンは振り向いた。

「何でついてくるんだよ!?」
「まぁ」

驚いたようにローラ姫は立ち止まった。
「せっかくこのような世界で出会ったのですからご一緒しましょう」
「大御免だ! 俺はお前みたいな馬鹿女が嫌いなんだよ!」
「あら、私はあなたのことは好きですけれど……」
これだ。だからローラ姫がドラゴンは嫌いなのだった。
あの洞窟に幽閉していた時も同じで魔物である自分に妙に懐いてくるのだ。
人間には嫌われるのが当然だったドラゴンはローラ姫のこの反応に妙に苛つくのだ。
問題なのはその理由がわからないことだ。
(ち、なんなのだ…… 一体)
そしてドラゴンは再び考え始めた。どうもローラ姫は諦めそうにない。
なら殺すか、無視するか……。だが殺す気にはなれなかった。
大体何故自分がローラ姫を助けてしまったのかも理由が判らない。
そのもやもやが晴れないことにはどうにもローラ姫を傷つけようとは思えなかった。
かといって無視はローラ姫がさせてくれそうにもなかった。
どうにもできない。その時、ドラゴンに閃くものがあった。

(そうだ、竜王様はローラ姫にご執心だったのだ。ローラ姫を連れて行けば喜ばれるかも知れん)
ローラ姫を連れて行く理由を思いつき、ドラゴンはホッとした。
とにかく目の前の問題が一つ片付いたように思えたのだ。
「ローラ姫。俺は竜王様を探している。それまでは一緒に行ってやる」
「はい、私もアレフ様を探していますのでご一緒に探しましょうね」

(何か……何か違う……)

そうは思ったがドラゴンは諦めて何も言わずに歩き始めた。
ドラゴンの後について行きながらローラ姫はザックに入ってる剣を思う。
(早くアレフ様にこの剣をお渡ししなければ……)
それこそは幾多の魔王を切り裂いてきた伝説のロトの剣だった。

ローラ姫を襲った女、フローラは全身に火傷を負いながらも未だ生きていた。
しかしドラゴンから逃げ切った所で流石に力尽き倒れる。
(嫌……私はこんな所で死ぬの? リュカ様……)
かつて一目惚れしたリュカとの恋に敗れ、アンディと結婚した彼女だったが
未だにリュカを忘れられないでいた。
そんな時にこのゲームに巻き込まれ、フローラは嘆くよりもチャンスだと思った。
自分が最後まで生き残れば何でも望みを叶えてもらえるという。
ならばその時はリュカに釣りあう若さとリュカの蘇生を願おう。
ビアンカとその子供がいなくなればリュカは自分を愛するしかない。
このまま死んだような人生を送るよりもこのゲームに賭ける。それがフローラの決断だった。
しかしそれがここで終わるのか……絶望のままフローラは気絶する。
その時、偶然にも一人の女性が通りかかった。
「ん? 人が倒れてるね」
女僧侶フィオは倒れているフローラに近寄り、具合を見る。
「ん、これは酷い火傷だね。ま、ここで会ったのも何かの縁。
 治療してやるとするかね」
そして回復呪文の光をフローラへと当て始めた。

………。

のっしのっし、とっとっと、のっしのっし、とっとっと

チラリとドラゴンはローラ姫の足元を見る。
ドラゴンは身体が大きい為、一歩一歩の歩幅が大きい。
それについていく為ローラ姫は小走りになっていた。
このような森の移動には慣れていないのだろう、時々転びそうになりながらも懸命に走っている。
ドレスの裾は土で汚れ、ローラは荒く息を弾ませていた。
またしてもドラゴンは苛つく。
(どうしてだ。なんでこの女はこうまで俺を苛つかせる)
ドラゴンは立ち止まると身を伏せた。

「どうされたのですか?」
「乗れ」
「え、宜しいのですか?」
「勘違いするんじゃねぇぞ。お前の身を案じたからじゃねぇ。
 そんな荒く息を傍で吐かれちゃ気が散ってムカつくからだ。とっとと乗れ」
「はい、ありがとうございます!」

ローラ姫は喜び、素直にドラゴンの背に腰掛けた。
それを確認するとドラゴンは立ちあがり、歩き始めた。
これでもう苛つかせられることはないだろう。
「ドラゴンさんはお名前はなんと仰るのですか?」
そう思った途端、ローラ姫がそんなことを尋ねてきた。
「洞窟にいた時も聞きそびれていたものですから……ドラゴンは種族の名前ですし」
この女は俺を苛つかせる天才だ。ドラゴンはそれを認めざるをえなかった。
黙ってもこの女は教えるまで聞き続けるに違いない。
「……ゴン、だ」
「え?」
「うるせえ! 呼びたきゃ好きに呼べ! 魔物には名前で呼び合う習慣なんぞねえんだ!」

「はい、ゴンさん」
「聞こえてんじゃねぇかぁっ!!」

ゴンの受難は続く……かも知れない。

  


【B-5/森林〜山岳地帯の境/朝】

【ローラ@DQ1】
[状態]:少々の疲労
[装備]:光のドレス
[道具]:ロトの剣 支給品一式
[思考]:アレフを探す ゲームを脱出する

【ゴン@DQ1ドラゴン】
[状態]:左肩に銃創(浅い)
[装備]:メガンテの腕輪
[道具]:支給品一式(不明アイテム一つ所持)
[思考]:ローラを竜王の所に連れて行く それまでは護る

【C-5/山岳地帯/朝】

【フローラ@DQ5】
[状態]:気絶 顔から右半身にかけて火傷
[装備]:なし
[道具]:毒針 ベレッタM92(残弾14) マガジン(装弾数15)×2 支給品一式
[思考]:ゲームに乗る 永遠の若さとリュカの蘇生を願う

【フィオ@DQ3女僧侶】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(アイテム不明)
[思考]:目の前の女性を助ける


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