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影が刺す

影が刺す


登場人物
サマンサ、ローラ、ゴン


視界が暗く、体が重い。
『ん、なんだい。まだ、ねてるのかい?アンタらしくないね』
『…つかれているんですよ。もう少し…眠らせてください』
目を閉じたままサマンサは言った。
『ん、ほら、ほら。教会で、朝の鐘がなってるさね』
『睡眠不足は美容の敵…』
言い訳しながら寝返りを打つ。
『ん、バカな事やってないで、さっさと起きな』
誰かに顔に数滴の水をかけられる。子供じみた行為に、あきれながら、仲間の名を呼ぶ。
『…フィオ』
いつもの、旅の光景。

目を開けると、頬が濡れている感触。
「良かった!!」
視界に飛び込んできたのは、泣きはらした美しい可憐な少女。
「ゴンさん、気づきましたよ」
「まったく。おい、おまえ立てるか?」
「ええ。 …!」
声をかけたほうを見て、構えをとろうした途端、足元の地面が揺れる。
「きゃ、危ない!!」
「よっ、と」
よろけたところを、ドラゴンが支えてくれた。
魔物だが、どうやら害意は無いらしい。
「よかった。私達では回復方法が無くて。
失礼かと思いましたが、ゴンさんと一緒に貴女のザックも見させて頂いたのですけど・・・、あ、品物は、ちゃんと元に戻しておきましたから」
「いえ、助かりました。ありがとうございます」
言いながら、ドラゴンから離れる。
 会話をかわしている間にも、鐘の音が響いている。
「この鐘は、なんでしょう?」
「さあ?」
「知るか」
 
 
疑問はすぐに解消された。
ハーゴンの独特の癇に障る低い声が聞こえ、次いで甲高い音が。
ゲームに参加している人間には声色がどのようなものであっても、2つとも最悪な声に違いない。
「禁止エリアですか、気をつけないといけませんね」
「ええ」
 メモをとりながら、会話を普通にできたのもここまでだった。

 『さて、死んだ『可哀想な』もの達の名を読み上げる』
三つの口が閉じられる。
 ……『フィオ』…
(ああ!…アリス!どうか無事でいて!!!)
 仲間の名前が読み上げられた瞬間、彼女の無事を真っ先に祈った。
ただ、ひとりの少女の無事を祈る。
この時ばかりは、理性よりも感情が心を占領する。
 それも束の間のこと、彼女の冷静すぎる理性が感情を押さえ込む。
(それは希望の名。彼女さえいれば、全ては無駄ではなく、未来は開かれるのだ…)

「大丈夫ですか?」
少女が頬を手でぬぐってくれている。
「だいじょうぶですよ」
少女の細い手をどかした。
「ひょっとして、誰か知合いが…?」
「ええ」
「そうですか…」
 黙り込む少女。
声をかけるのを遠慮しているのだろう。
 だが、私には、仲間をしのんで泣いている暇などない。泣くのは全てが終ってからでいい。
少なくとも、今は悲嘆にくれている時ではない。
泣く前に、考えろ、考えろ。
このゲームに勝つ為にはどうすればいいのかを。
 まず、目の前の一人と一匹を殺す方法を。

手に握り締めたままの石があたたかくなり、効果を発揮して、サマンサの体を癒す。
「まあ、だいぶ顔色も良くなりましたわ」
「ええ。おかげさまで」
ひとりは簡単だろう。
この少女に人を殺す能力があるとは思えない。
もう一方に、目をやると、ドラゴンがこちらを注意深く睨んでいる。
しばし、睨み合う。
…駄目だ。この体では、多少回復しただけでは勝てない。
ゲームに乗っているのを、一人と一匹に知られてしまっている。これ以上、増えるのは流石にまずい。
(ここは引くか)
「ありがとうございます。ここで休んでいれば大丈夫ですから」にっこり笑う。
「でも…」
「俺らは、やることがあるだろうが。先を急ぐぞ」
可憐な少女は考えた後、思いついたらしく、手を叩く。
「そうですわ!一緒に参りません?」
「はぁ?」
「えっ」
「ゴンさんーああ、自己紹介が未だでしたわね。わたくしローラです。こちらはゴンさん。あなたのお名前は?」
「は、はぁ。ご丁寧にどうもアリガトウゴザイマス。サマンサです」
「あ、それでですね、ゴンさんも私も人をそれぞれ探しているんです。
サマンサさんも、治療できる人か傷が回復するまで、ご一緒しませんか?」
「あの、」
「ね?」
「ええっと」
「ね?」
首をかしげている少女、大変風情のある可愛らしい姿なのだが。
隣にいたドラゴンが溜息を1つ。
「諦めろ。馬鹿女は言い出したら、止まらねぇ」
ドラゴンの背中にどこか哀愁があるような…魔物だろう、お前。
「他に何かご一緒できない、わけでもありますの?」
 なんの害意もありませんとばかりに、無邪気な笑顔で問われてしまう。
 
 
 咄嗟に返答できない。
(まさか、殺せないからとは…)
返答を渋っているのも怪しまれるだろう。
「では、ご一緒させていただきます」
「まあ。良かった。よろしくお願いしますわね」
「ふん」
(確かに、この体を回復させるのが最優先です。
それに先ほどの戦いで1人の限界を知ったばかり。
一緒にいれば二人を殺せるチャンスが来るかも知れません。
大人しく利用されてくれればいいのですが)
「ほらよ」
ゴンが背中にサマンサを、背中あわせで抱える。
「うわっ」
「こっちのほうが、進みが速いだろう」
「良かったですわね、サマンサさん」
「は、ははははは。ありがとうございます」
「礼を言われることじゃねぇよ。遅いと、いらつくだけだ。おい、馬鹿女、地図を見て先導してくれ」
「分かりましたわ〜」
サマンサは小声で言った。
「何か違う…」

 ゴンは歩きながら注意深く様子をうかがう。
(視線があった時、明らかに俺の力を測っていた。この女には注意しなければ。
背中あわせにして、ローラを視界に、できるだけ入れないのもその為だ。
 用心しなければ、ならねぇな。チッ…面倒な)
無意識に、ゴンは、閉じた口の舌で、腕輪を触っていた。


【B-4/森林地帯/夜(放送直後)】

【サマンサ@DQ3女魔法使い】
[状態]:HP3/8 MP1/5 全身に裂傷 
[装備]:バシルーラの杖(5) 奇跡の石
[道具]:支給品一式 鉄兜
[思考]:勇者の血を守る

【ローラ@DQ1】
[状態]:健康
[装備]:光のドレス
[道具]:ロトの剣 支給品一式
[思考]:アレフを探す ゲームを脱出する

【ゴン@DQ1ドラゴン】
[状態]:左肩に銃創(浅い)
[装備]:メガンテの腕輪
[道具]:支給品一式(不明アイテム一つ所持)
[思考]:ローラを竜王の所に連れて行く それまでは護る


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