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影になる

影になる


登場人物
サマンサ(DQ3)、ピサロ(DQ4)、フォズ(DQ7)、アレフ(DQ1)、アトラス(DQ2)


「でもサマンサさん、あなたは心の奥底では、光の道を望んでいるのではないですか?
 光と共に歩んでゆける道を……」

フォズがいった言葉をサマンサは反芻する。
少女の言葉は真実だ。
私は光を望んでいる。
光と、アリスと共に道を歩めるのならどんなにいいだろう。

「『道』を選ぶのに資格なんて無いんです」

アリスの言いそうな言葉だった。
魔道に身を堕とした自分でも彼女なら許すだろう。
だが戻れない。戻るつもりはない。
自分は誇りをもってこの道を歩むことを決めたのだから。
この使命を、決意くだらない情によって貶めることはあってはならない。

「自分の事を、信じてあげて下さい。
 そうすれば、きっと――」

そうしよう。私は私を信じよう。
そうすれば、きっと――私は、私になれる。
アリスに寄り添い、共に行く……彼女の影になる。
 
 
 
存外に村から近かった地下道を通って早数時間。
ところどころに燈された蜀台が回廊を淡く照らしているので足元に不安はなかった。
そんな中、サマンサは腕の痛みを堪え必死にアリアハンへと向けて歩んでいた。
傍らにいる少女は不安そうにこちらを見上げながら、回復呪文をかけてくれている。

付き添っているフォズの治療によって何とか足は普通に歩けるまでに回復しているが
走るのはまだ無理だ。

「フォズ、その程度にしておけ。ここで魔力を使い切るな」

先を行く銀髪の男が治療を続ける少女に注意をする。
それに少女は小さく反発した。

「でも、まだサマンサさんは……」
「我々は戦地に向かっている。その時に力を使い果たし何も出来ない、では本末転倒というものだ。
 その女も行動には支障ないほどに回復している……そうだな?」

ピサロは僅かに振り向き、その眼光でサマンサを射抜く。

(やはり、私を警戒している……)

必要以上にサマンサを回復させたくないのだろう。
だがここでピサロの不興を買うわけにはいかなかった。
後の選択肢を狭めてしまう。
今はまだ恭順の意志を示さなければ……。

「ええ、治療のおかげで左腕も大きく動かさなければ大した痛みもありません。
 今後なにがあるとも解らないのですから、魔力は温存した方がいいでしょう」

サマンサにまでそういわれてはフォズも自分を押し通すことはできない。
しゅん、として治療をやめた。
ここで回復呪文が受けられなくなるのはサマンサとしても辛いが
どのみちアリアハンまでの行程で完治するほど軽い骨折でもない。
添え木を当て、固定してあるため無理な動きをしなければ悪化することもないだろう。

(もっとも、無理をしなければならない場面は確実にやってくるでしょうね)
 
 
サマンサは静かな決意とともにその未来を確信した。
先刻の通信から時が過ぎ、サマンサの頭も冷えてきている。
アリスの窮地に間に合う見込みはない。
それはピサロの言ったとおりに。
ならば彼女が窮地を乗り切っていてくれることを祈るのみだ。
自分が今すべきことは一刻も早くアリスの元に行き、無事を確認すること。
そして……その後の行動方針を固めることだ。
アリスが死んでいた場合のことは考えない……そうなれば自分が起こす行動は1つしかないのだから。
地下回廊に入り、充分な光量が確保できるとピサロは1つのメモを渡してきた。
それはピサロがこれまでに纏めた首輪の解除のための考察だ。
盗聴の可能性、あらゆる呪文、特技を弾く呪詛が間断なく生まれ続けている可能性、
それらは納得のいく推論であり、サマンサも思わず感嘆した。

(しかし……これらには検証が足りない)

そう、もっともらしく理論は構築されているがこれは全てピサロが単独で推察したものだ。
それまで他の参加者との接触による情報交換や、首輪爆破の検証がされていないため
真実である保証がまるでない。
もしも盗聴だけでなく監視されていたら。
もしも自分達の能力が通じず、それを主催側に悟られてしまったら。
自分達の命運はそこで尽きる。
チラリ、と先を行くピサロを見た。
先ほど自分が挙げた問題点は彼もまた承知の上だろう。
そしてこれから検証を行うならば最終的には生きた人間に対して実験をしなくてはならない。
盗聴を気にし、演技をしながら。
それは賭け以外の何物でもない。

脱出できる可能性はある。しかし可能性が低すぎる。

しかも自分の呪文だけでなくピサロの力を組み合わせる必要がある。
これでは単独利用は叶わず、アリスのみを逃がすことはできない。

彼女のプランは崩れ、この時点でピサロに協力するメリットが消える。
他の参加者を全て殺害するほうがまだしも可能性が高いはずだ。
サマンサは最初の広間で出会ったハーゴンの凍てつく視線を思い出した。
そして嵌められた冷たい異物の感触を。
成すすべなく召喚させられ、首輪を嵌められた時点で負けていたのだ。
自分はそのことを認めた。しかしピサロはそれを認めていない。
2人のスタンスの違いはその差だ。相容れることはない。

(全ては勇者のために。それが世界の意志)

サマンサは静かに右手を握り締めた。
そして傍らを歩く少女に視線を送る。
その視線に気づいた少女は申し訳なさそうに微笑んだ。
回復呪文を止められてしまったことをまだ気に病んでいるらしい。

(彼を正面から相手どって勝てる見込みは万に一つもないでしょう。
 でも、彼が側においているこの少女を使えば……)

一瞬でもピサロの動きを止めることができれば、可能性はある。
力なき者を人質にとり、隙を突く。
その外道に劣る行為も今の自分には相応しい。
だが今はその時ではない。
それだけで何とか出来ると思うほど彼女は浅慮ではない。

(何かもう1つの要素が必要です。例えば強大なる敵による襲撃――)

そう考えた時、何かが崩れる音が回廊内に響き渡った。
音は小さく、大分距離が離れているようだ。

「これは?」
「洞窟内のどこかが崩落したようだ。音が反響して方向はおおよそしか判らんが……」
 
 
ピサロは南東の方角を見る。
それは――アリアハンの方角。

「まさか!? ピサロ、あの通信機を!」

声を荒げるサマンサにピサロは煩げに眉を顰める。
しかし文句を言うのも無駄とばかりに簡潔に答えた。

「先ほどから使っているが通じない。どうやら地下ではこの『インカム』の効果は届かないようだな」
「そんな……」

動悸が激しくなるのがわかる。心臓の辺りの筋肉が収斂したように引き絞られる。

(何があったの? アリス――――!!)
 
 
 
 
駆けるアレフの眼前に跳ね橋の落ちた堀が迫る。
通常ならば飛び越えられる筈もない幅であり、迂回するしか道はない。
しかし彼は速度を緩めなかった。
彼の右手に光るはやての指輪から流れ込んでくる力が彼に普段以上の俊足を与えている。
そしてロトの盾を構えると、落ちた跳ね橋の跡に向かって腕を振り上げた。

「竜の吐息よ……この掌に宿れ―― ベギラマ!!」

彼や竜王が扱うベギラマは他の使い手のものとは違い威力が拡散しないため
凄まじい破壊力を持っている。
失われた呪文の多い時代――それに悲観せず彼らの世代が改良を重ねた結果である。
その後、時をかけていくつかの呪文が発掘され、復活を遂げることになるがそれはまた別の話――。

橙の閃光が収斂し、白い輝きとなってアレフの掌から射出される。
光は瞬時に彼の足元の地面に着弾し、炸裂する。
そしてアレフはその爆風をロトの盾で受け止めると、全力で地を蹴った。
爆風の力を盾で受け止め、その力を跳躍の力へと上乗せしたのだ。
白く染まり始めた夜空にアレフの身体が舞い上がる。
身体を捻ってダメージになりそうな力を受け流し、彼は見事に堀の対岸へと着地した。

だがその瞬間、着地した大地がひび割れ堀へと落下する。

「うをっと!?」

慌ててアレフはその場を飛びのくことで難を逃れた。

「ちょっと高く飛びすぎたか……危ないところだった」

冷や汗を拭うと彼は地下への階段へと走る。
息をついている暇はない。
自分に回復呪文を数度かけ、息を整える。
あの赤鬼の脅威は今のうちに断っておかなくてはならない。
地下への入り口は崩れかけていたが、今はまだ何とか通ることができた。

「完全に崩れるまで猶予はないな……それまでに戻る!」

彼は死にに行くわけではない。彼の手には約束がある。
竜の覇者が手にするべき剣が――。
 
 
 
 
「グガァアアアアアアアア……!!」

赤の巨人は叫ぶ。

闇が消えない。光が見えない。
走っても走っても暗い場所から逃れることができない。
身体のあちこちを壁にぶつけ、その度に洞窟の壁が破壊される。
それでも何度でも身体を立てなおし、彼は走り続ける。
これは罰なのか? 負けられぬ自分が二度も負けた罰なのか?

「ベリアル! バズズ! 今度は勝つ、アトラスは勝つ!」

だから許して欲しい。
この闇の中から助け出して欲しい。

――炎となったアトラスは無敵だ!

ベリアルの言葉が頭の中で何度も甦る。

(今までのアトラスは炎じゃなかったか? アトラスはまだ火だったか?)

ならば炎になる。
自分の命を燃やし、ベリアルのくれた風の力を取り込んで、アトラスは炎になる。

炎になれば自分が負けることはないと、そうベリアルが言ったのだ。
そうすれば自分は許されるに違いない。
この闇から抜け出せるに違いない。
それを証明するためにも、アトラスは闇の中を走り続ける。

「ど、何処にいる!? アトラスの敵は何処にいる!」

戦って倒すのだ。
炎となって闇の中を照らすのだ。

そしてもう一度―――赤鬼は吼えた。
 
 
 
 
 
ピサロは近づいてくる振動と咆哮を聞いて冷静に判断した。

「ふん、こちらに向かってきているな。声に聞き覚えがある。
 トルネコの言っていた巨人か……」

鎖鎌を腰に巻くと、ザックから鋼の斧を取り出した。
使い慣れぬ武器ではあるが、巨人を相手にするのに鎖鎌や短剣では心もとない。

「あああ、あの、ピサロさん」
「下がっていろ……迎え撃つ。まあ、接触までもう少し猶予があるようだな」

フォズは震えながら何か言おうとするが、それを遮り彼は戦闘態勢を整える。

「ち、違うんです。これから向かってきている相手からは強い怯えがかんじられら、るんです!」
「何?」

慌てているのか口が回っていないがその内容に興味を引かれピサロは振り向いた。

「と、遠くなのではっきりとは判りません。でも、もっと近づけば判ると思います。
 て、敵じゃないかもしれないです。だから……」
「ふん、関係はないな……」

どのみち、あの声を聞けば恐慌しているのは明らかだ。
分別がつくようには思えない。

「こ、殺さないで下さい……わ、私たちは――むぐ」
「そこまでにしましょう。ピサロをこれ以上煩わせてはなりません」
 
 
言葉の途中でサマンサに口をふさがれる。
そしてそのまま、後ろへと下がった。

「私は戦闘が出来る状態にありません。彼女と一緒に後方へ下がっていますわ。
 援護はお任せ下さい」
「いらん、隅で大人しくしていろ。殺すか殺さないかは後で決める」

その返答にサマンサはほんの少しだけ唇の端を持ち上げる。

(ええ、あなたの大切な少女とともに、ね)

いま迫っているのがアリアハンを攻めていた巨人だというのなら
アリスを襲う脅威が一つ減ったということだ。
心配事の1つが消える。
まだ不安要素は尽きないが、それはもう考えても仕方がない。

(それよりも今はこの好機を逃すことは出来ません)

ピサロがこの少女を側においているのには理由がある。
この短い間でも彼が少女を気遣う場面は多々見ることが出来た。
この少女を利用すれば確実にピサロに隙が生まれる筈。
確実な戦闘を間近に控え、ピサロにはサマンサを警戒する余裕がないだろう。
小さく笑ってサマンサはピサロの方をチラリと見――
 
 
その時、ピサロの眼光がサマンサを射抜いた。
 
 
異常なまでの殺気がサマンサの心臓を鷲掴みにし、絞り上げる。。

「余計な真似はするなよ、女」

それだけを言って彼は何事もなかったかのように回廊の奥へと向き直る。
圧迫から解放されサマンサは膝を突き、多量の脂汗を流し呼吸を荒げた。

「サ…サマンサさん? どうしたんですか!?」
「いえ……なんでもありません。少し腕が痛んだだけです」

突然うずくまった彼女を心配するフォズ。
それに小さく首を振って無理に笑みを形作る。

(甘く見ていた……彼は私を侮っていると思っていた。
 しかし、侮っていたのは私の方だということですか……)

ピサロはいつでもサマンサを縊り殺すことができる。
それだけの力があるのだ。
相手の力を再認識し、サマンサは一度息を呑んだ。

(でも、だからといって怯めない。私の決意は揺らがない。
 全ては……世界の意志。私の使命!)

アリスの為に命を捨てる覚悟はとうに出来ている。
殺せるならば殺すがいい、だがその時は――。

(アリス以外の全てが死した時です)

彼女は懐に隠していた奇跡の石を握り締めた。
迫る危機を感じてか、少しだけ力が石から流れ込んでくる。
 
 
そうだ、私は――アリスの影となる。
 
 
 
アレフは駆けていた。
アトラスは吼えていた。
ピサロは構えていた。
フォズは震えていた。

そしてサマンサは――待っていた。

全てが集束する時を。
 
 
悪夢を告げる鐘が鳴る時まで、後わずか―――


【E-4/アリアハン城地下→ナジミ塔の方向へ/早朝(放送前)】

【アレフ@DQ1勇者】
[状態]:HP3/5 MP1/4 背中に火傷(軽) 疲労 全身打撲
[装備]:竜神王の剣 ロトの盾 はやてのリング
[道具]:鉄の杖 消え去り草 ルーシアのザック(神秘のビキニ)
[思考]:アトラスに止めを刺す ローラ姫を探し、守る このゲームを止める

【E-4/アリアハン城地下→ナジミ塔の中間位置/早朝(放送前)】

【アトラス@DQ2】
[状態]:HP1/5 首からの出血(小) 全身火傷 片膝負傷 眼球に傷 失明 恐慌
[装備]:風のアミュレット
[道具]:支給品一式
[思考]:恐怖に駆られている 出会う全ての者を倒す

【E-3/岬の洞窟・地下回廊ナジミの塔の近く/早朝(放送前)】

【ピサロ@DQ4】
[状態]:若干の疲労 MP2/3程度
[装備]:鋼の斧 鎖鎌 闇の衣 アサシンダガー  炎の盾 無線インカム
[道具]:エルフの飲み薬(満タン) 支給品一式  首輪二個 ピサロメモ
[思考]:襲撃への応戦 ロザリーの仇討ち ハーゴンの抹殺 襲撃者には、それなりの対応をする
     サマンサに対して警戒する アリアハンへ向かうサマンサへついていく
     【シャナク】【アバカム】を利用した首輪解除方法を話し合う
     首輪解除の目処は立ったが、状況の度合いによっては参加者を減らし優勝

【フォズ@DQ7】
[状態]:健康 MP2/3
[装備]:天罰の杖
[道具]:アルスのトカゲ(レオン) 支給品一式
[思考]:これから起こる戦闘に若干の怯え ゲームには乗らない ピサロを導く

【サマンサ@DQ3女魔法使い】
[状態]:HP2/3 MP4/5 全身に裂傷・火傷(治療)左足に負傷(少し回復)左腕骨折(添え木で固定)
[装備]:奇跡の石 神鳥の杖(煤塗れ)
[道具]:支給品一式 鉄兜  ゴンの支給品一式 ルビスの守り
[思考]:フォズを利用し、ピサロを討つ 勇者の血を守る
    アリアハンに行き、とにかくアリスを守る


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