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黄金の勇者VS白銀の魔王

黄金の勇者VS白銀の魔王


登場人物
レックス(DQ5王子)、ピサロ(DQ4)


 魔王ピサロが、地下洞窟の奥深くに上り階段を見つけたのは、
このゲームが始まってから1時間弱経ってからであった。
 暗く長い回廊を抜けた先には血の香りが漂っていて。
闇色の衣と白銀の長髪が、飛び散った紅の鮮血と奇妙なコントラストを生み出している。
牢獄には、二つの人間であった物が転がっていた。
「……まだ、新しい骸だな」
 冷静に状況を判断する。
二つの屍は互いに離れた位置で死んでいる。
 そして、荷物は無くなっており同じ傷跡が残されていること。
この事実から。
「…近くにいる、ということか」
 少女の首に填るそれを、ちらと見る。
首輪を見ると、つい先刻の事だと言うのに瞼に焼き付いてしまったあの光景が蘇った。
頭に浮かぶたびに自らの心臓を抉り出したくなるような歯痒さを覚える。
少女の首に填められたそれが、何よりも愛する彼女の命を奪った。
その事実にドクン、と胸がざわめく。
 ああ、もう何もかも滅ぼし勝利者となって奴の思い通りになろうか。
そうすれば、望むとおり奴の眼前へ行くことができる。
 そうなったら。絶望以外の感情が無くなるまで殺す。
死にそうになったら癒し、また殺す。
臓物を引きずり出し、頭蓋を砕き、原型を留めなくなるまで殺しても殺し足りない。
全てに、死を。
人間であろうが魔物であろうが関係ない。全てを、無に。
(ピサロさま)
 狂気に走りそうになる気持ちを、心の底のエルフが留めた。
そう、それが今の彼の果たさなくてはならぬ事。
 愛する者の仇を、狂人にどう討てるというのか。
奴の言及に惑わされているようでは、魔族の王失格である。

例え一時であろうとも、ハーゴンの掌で踊るような真似はしたくない。
 ピサロの自尊心が、それを許さなかった。
(奴の不意を突く事。それが、今の我が全てよ)
 鎖鎌を手に取り、二つの骸を並べる。
赤髪の少女と頭巾の少年の首を、手慣れた様子でごとり、と落とす。
首に填められた、自分達をこの地に縛り付ける首輪。それを二つ拾ってザックに入れた。
 まずは、自分の首のこれを外さなければハーゴンには勝てない。
ピサロにはこの首輪に抗うことが難しいことが解っていた。
(…爆破は、任意によって行われる。ということはこちらの動きがわかるということはまず間違いあるまい)
 二つの骸には何の関心も持たずにそこらに捨て置く。
敗者とは、こういう物とピサロは解っている。そして、自分はそうなるつもりは全くないのだ。
(…この娘。強大な魔力を持っていたようだな。惜しいことをする)
 この二人を葬った事に関して疑念も怒りも沸きはしない。
ただ、彼が興味を持ったことは二つ。
一つは、二人分とその殺人者の支給品。
この二人を斬った剣は相当な業物であろう。ピサロは是非手にしたかった。
 そしてもう一つ、呪文の跡。少女を死に至らしめた呪文を、彼は知っていた。
「……ライデイン………」
 死体の焦げ跡から熱を孕む呪文であることは解る。
そして、ここまで凝縮され、一撃で貫通する威力を持つということは雷の呪文に他ならない。
天空の勇者の、呪文。
(奴はここに来ていない……とすると、別の勇者がいるということか?)
ピサロは続いている血の跡を辿って階段を上った。

 レックスは、玉座の前にいた。
二人を殺害後、城の中をふらふらと散策していたのだ。
血に染まった大振りの剣を引き摺って最上階まで辿り着くと、眼に入るのは王たる者を受け入れる玉座。
レックスは父がそこにいるかのような錯覚を覚えた。
 しかし、一瞬でその感覚はかき消える。
「…誰かいないかな……?どこかな?」
剣が、血を、死を求めている。
レックスの意志は既に剣と一つであった。
 ゲームに乗った後は清々しい気分であった。刃を突き立てた時の感触も、快感すら憶えるほどだ。
 ハーゴンを倒す事はもうどうだっていい、ただこの剣に血を吸わせたい。僕が殺す、皆殺す。
抑えられない狂気の昂ぶりは増すばかりだ。
 ふと、背後に気配を感じて彼の金髪が揺れた。
ゆっくりと振り向いた先にいたのは、長身痩躯で流れるような銀髪。そして纏われた邪気。
 金髪の勇者と銀髪の魔王は、たった今相対した。
ただ、両者共に暗黒道へと堕ちている事が共通点であったが。
「小僧、貴様が殺人者か」
「……」
 返答は、皆殺しの剣による斬撃であった。
身体全体で突撃してくる少年の剣技は思った以上に磨かれている。
だがピサロは、易々とそれを捌いて距離を取る。
「…ライデイン!!!」
 少年の指先から雷が迸った。
真っ直ぐピサロの心臓を狙って放たれた雷の矢は、闇の衣の表面を薄く焦がすだけに止まる。
 闇の衣の効果で、ピサロの回避能力は飛躍的に向上していた。
その素早さは雷と同等、いやそれ以上。
息もつかせぬうちに背後に回り込んで、距離を取りつつ鎖分銅で皆殺しの剣を拘束していた。
「っ……」
「やはり、勇者か。フッ、堕ちた物よ」
 ギリギリと、綱引きの形になる。
体格差からどうしても、レックスが不利であった。

だが、レックスは敢えて自らピサロの懐に飛び込んだ。
無論、大振りの皆殺しの剣は頼りにならない。
 彼は懐に忍ばせたアサシンダガーを空いた左手で握り、ピサロに向かって突きだした。
「見え透いた手を使うな」
しかし、悲しき哉そこは子供。
リーチの短さはやはりどうにもならずにピサロの膝蹴りが一足早くレックスの鳩尾にめり込んだ。
「がッ……」
 一瞬呼吸が止まり、肺の中の空気が逆流して激しく咳き込む。
レックスの手からすっぽ抜けたダガーを、
ピサロは空中で掴み取り、逆手に構えて頭蓋に突き刺そうと振り下ろした。
 蹲っているレックスは辛くも横に転がって避け、体制を立て直す。
床にダガーは突き刺さり、ピサロは鎖鎌を一振りして、鎖を解きつつ勇者の小さな身体を投げ飛ばした。
壁に叩き付けられそうになりながらも受け身を取り、皆殺しの剣をしっかりと握り直す。
 着地した勇者は突進、雄叫びと共に斬りかかる。
ピサロは受け、捌き、逸らし、互いに決定打を与えられないまま、二人は斬り結ぶ。
レックスは魔王の眼前に跳び上がり、唐竹割の如く剣を振り下ろした。
魔王の肩口を掠め、剣は地面に当たり、がぁんと大きな音が響く。
 その隙を突き、レックスの小さな身体にピサロの掌底が入った。
刹那、ピサロが呟く閃熱呪文。
「ベギラゴン」
掌から生じた閃光がレックスを包み込む。
生じた熱が空気を膨張させて弾けた。
このまま丸焼きとなることをピサロは予想したが、火炎から飛び出したレックスはすぐに反撃に出てきた。
これには虚を突かれ、左腕にピッ、と赤い線が走る。
レックスの外套、父が纏いし王者のマントの防御性能は伝説の鎧すら上回るのだった。
 そうして何度目かの攻防を終えた頃、レックスの眼が血走って荒い息で呪文を完成させる。
同時に、ピサロも言霊を紡ぎ禍々しい呪文が発動しようとしている。
二人の掌に集中された魔力が、全てをなぎ払う雷と化していた。
「来たれ、勇者の雷!!!」
「出でよ、地獄の雷」
 両者の周囲の温度が上昇する。
波動が城壁を揺るがし、窓は震えていた。

「ギガ…デインッ!!!」
「ジゴスパーク!!!」

 全く同じでいて全く違う、勇者と魔王の雷がぶつかり合った。
耳を劈くような雷鳴が轟き、互いに炸裂して弾け飛ぶ。
轟音と共に、アリアハン城最上階の城壁が吹き飛んだ。
衝撃波が城下町にまで達する。
バラバラと崩れ落ち、瓦礫がたちまち積み上がっていく。
城の近くにいた者は見えたであろう。
一瞬凝縮した光が漏れ、直後雷鳴が轟いて城の最上階が半壊した所を。

「…いない。チッ、少々やりすぎたか」
 煙が晴れた時には、既にレックスの姿は無かった。
残されたアサシンダガーを床から引き抜き、ピサロは一人、階下へと戻って行った。
城下町へ向かい、人を探すためである。
利用するなり、殺すなりは後で決めるのであったが。

「……ハッ…ハッ…」
 中庭に落下したレックスは、花畑の中荒い息を止められずにいた。
ジゴスパークを放たれた瞬間に王者のマントで身を護ったのが幸いだった。
しかし、疲労がどっと押し寄せてきている。
 ピサロという男、命を落とさずに済んだのが不思議なくらいであった。
なんと、強大な存在であろう。
だが次こそ。次こそは、仕留める。
レックスは、あの爆発の中でも離さずに握り締めていた剣を杖代わりに立ち上がり、また何処へとも無く歩き出していった。


【E-4/アリアハン城中庭/昼】

【レックス@DQ5王子】
[状態]:呪われている 全身に軽度の火傷 疲労
[装備]:皆殺しの剣 王者のマント
[道具]:小さなメダル トゲの鞭 毒薬瓶 アルスの支給品(不明の持ち物1〜3個)
[思考]:剣の意思に負け、ゲームに乗る

【E-4/アリアハン城門/昼】

【ピサロ@DQ4】
[状態]:やや情緒不安定気味 右肩と左腕に切傷(軽)
[装備]:鎖鎌 闇の衣 アサシンダガー
[道具]:エルフの飲み薬(満タン) 支給品一式  首輪二個
[思考]:ロザリーの仇討ち ハーゴンの抹殺
     ゲームに乗りつつも、ハーゴンの虚を突く為首輪を外す方法と脱出方法を考える


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