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果てた命は煌めいて

果てた命は煌めいて


登場人物
サマンサ(DQ3)、ローラ(DQ1)、ゴン(DQ!)、エイト(DQ8)、フローラ(DQ5)、ピサロ(DQ4)、フォズ(DQ7)


黒衣の魔王と、法衣の少女は夜を徹して歩いていた。
少女は、自らの足で歩くこと叶わず、魔王に抱かれ夜の中を行く。
夜通し歩いて幾分疲れが出たか、魔王の呼吸は少し荒かった。
少女はその度大きな瞳を心配そうに見上げ、魔王の身を案じる。
彼は視線に気づいて、自らの腕の中に一瞥をくれた。
「…見えてきたな」
「…ど、どこにですか?」

フォズが目を凝らせど、その村は見えず。
どうやら、魔王たるもの五感は人間のそれよりも優れているらしい。
魔王の胸の高さに抱き上げられていても、見ること叶わず。
しかし、魔王は僅かに顔を顰めた。
「…火が上がっている」
「ええっ!?」

まさか、と思ってもう一度目を凝らす。
確かにフォズの眼にも、ぼんやりと煙が上がっているように見えた。
誰かが火を放ったのか。
魔王を見つめる。
そのとき少女は、おそらく随分と不安そうな顔をしていたのだろう。
見上げたその顔は溜息をついていた。
「そう、泣きそうな顔をするな」
「えっ…」
 
 
今、自分の顔は幾分赤みを帯びていることが手に取るように分かる。
なんとも恥ずかしい顔を見せてしまったようだ。
魔王は衣を被る。
闇色のそれは、夜と彼らとを同化させた。
「姿を隠しつつ、接近する。村まで、あと数刻あれば辿り着くはずだ」
「あの…」
走り始めた足を止めないまま、ピサロは胸元の少女を一瞥する。
先ほどとは、また違う表情でもじもじと手を動かしていた。

「だ、抱っこして貰っておいて、…あの、こんなことを言うのは…申し訳ないんですが…」
「…何だ」
少女が衣をひっしと付かんで魔王の端整な顔立ちを見つめる。
その瞳はどこか宝石染みていた。
闇夜にも銀青の輝きを抱いている。
「なるべく急いで、貰えないでしょうか」
「…」
「いえ、あの…もし、傷ついた人がいたり、尽きようとしている命があったら……」
「……」
「それは、助けなければならないと思うから…」

─どこまでも綺麗な、考えだな。
以前のピサロなら完全に嘲ったであろうその望み。
だが、勇者の心に触れた彼は今、どうしていいのかひどく迷っていた。
あいつなら、こういう時に如何しただろう。
ピサロは、黙ってその足を速める事しかしなかった。

「ゴンさぁぁぁんッ!!」
「危ない、下がって!!」

姫の悲痛な叫びは、竜には届かずに咆哮で掻き消された。
唸る尾が姫を打ち据えようとするたびに、兵士は身を挺して庇い続ける。
竜は、破壊の限りを尽くそうとその力を大いに振るうままだ。
 
 
 
 
─うふふ、いい眺めですね。
皆様ごきげんよう、フローラでございまーす。
この世界でこんなに面白い見世物に出くわすとは思いませんでしたわ。うふふ。
なんとも滑稽な光景ですね、これは。
あんなに楽しそうにしていたのに、今は食うか食われるか。
仲睦まじかったお二人…というか、片方は魔物ですわね。悲しき食物連鎖の犠牲になる瞬間が待ち遠しいですわ〜。
あらやだ、はしたなかったですわね、コホン。
とにかく、ゾクゾクするショーですこと。
そこですわ、そこ。うふふ。

(……今の一撃で混乱が解けるかと思いましたが…どうやら大丈夫だったようですね)
息を殺しつつ見守るサマンサは、まるで凍てついたように表情を崩さなかった。
脳を揺さぶる混乱呪文は、頭部に衝撃を加えると解消されるケースが多い。
逃げ支度を始めていた手を休めて、再び竜と対峙する青年との戦いを観察する。
もちろん、いざとなれば自分から攻撃を加える手筈は整えていた。
ローラに当てることは叶わないが、単体呪文であるメラゾーマを叩き込む準備はいつでも出来ている。
そうすれば、多少苦労はするがどうにでもなる、と考えていた。
胸は痛む。
確かな痛みを、抱いている。
だが、その痛みに彼女を止めることはできないのだった。

そして、彼女が気にしているのはもう一つ。
新たな乱入者の気配。
ただ、それは自分からやや離れた茂みでじっと動かない。
─私の存在にも、間違いなく気づいている…
それなのに混乱に乗じて襲い掛からないのは、おそらく直接戦闘能力が出来なく、怯えて隠れているか…
私と、同じタイプの人間か。
どちらかの可能性が、考えられた。

そのまましばらく、戦いは繰り広げられていた。
もうどれほどだろうか、彼らは戦い続けている。
だが、彼女には何か、奇妙な違和感が感じられた。
先程までと、何かが明らかに違う。
何が?
彼女は目を凝らして必死にその謎の答えを探した。
そして、気づいたのだ。
(…攻撃が外れている?)

別におかしいことでは無いと思うかもしれない。
だが、あまりにも綺麗に外されてばかりいるのだ。
まるで、舞台で終わりまで覚えた戯曲を踊っているような─
 
 
 
(しまった!!!!)
気づいたサマンサがそう思うや刹那、即座に転がり出る。
直後、隠れていた木陰を丸ごと包み込むような特大の竜の息吹が視界を朱に染めた。
「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

ごろごろと、火の塊がもう一つ転がり出てきた。
ああ、私と同じく隠れていたあの方ですね。
災難、言うべきか、ご愁傷様、と言うべきか。
ともかく、一つ確かに言える事があった。
自分は、裏の裏をかかれた事。
目の前の竜はにやりと笑みを浮かべている。

「してやられた………というわけですね」
「ケッ。隠れて見守ってるなんざ、趣味が悪いぜ」

「…くっ」

以前、自分も似たような台詞を彼に言った気がする。
こんな魔物に自分が出し抜かれるとは、彼女にとって屈辱の極みであった。

「ゼシカ………!?」
「…おい、兄ちゃんよく見ろ…化けの皮が剥がれるからよ」

あの青年が、信じられない、という表情であの火だるまを見ていた。
ああ、顔見知りだったのかという考えは竜の呟きで掻き消される。
正確には…『顔見知りに化けた何者』でしょうね。
見る見るうちに変化が解けて、青年も合点がいったようです。
転げ周りながら火を消そうともがいています。
しかし、今はどうでも良かった。

「…いつから…正気に?」
「殴られた直後だ…あのあと、組み付きながら咄嗟に作戦を喋った。言ってみるもんだ」
 
 
時間は少し、遡る。
 
 
石突きで殴られたゴンは、その時点で正気を取り戻しエイトにこう持ちかけた。
「よく聞け、俺を混乱させた奴がそばに隠れてる。隙を待つから、このまま戦い続けろ」

急に小声で囁かれてエイトはやや狼狽したが、自分は近衛兵。
咄嗟の作戦変更等は、慣れている。
『臨機応変』─ 彼は、
即座に作戦を切り替え、ゴンとの戦闘を長引かせた。
互いに傷つけないように、ギリギリを狙う。
その繰り返しで時間を潰し、隙が出たところにゴンが合図。
エイトが避けたその空間の先、獲物の隠れた茂みに激しい炎をぶちまけた、というわけだった。
 
 
サマンサは唇を噛み締める。
正直、とてつもなく劣勢である。
目の前には実力者、そして今しがたドラゴンの炎で塞がれた退路。
勝てる要素も逃げられる要素も、無い。
最後の武器は、握り締めた杖。
(……バシルーラで…どちらか一方を消し…呪文で……)

光弾を当てられるかは、賭けだ。
それもかなり確立の低い。
だが、もう他の方法は─
「おのれェェェェェェェェ、穢らわしい魔物がァァァァァァッッッ!!!!」

叫びで思考を中断され、ビク、と一瞬硬直する。
目をやると、全身を火傷で覆われた女性が鬼のような形相で竜を睨んでいた。
竜とは、顔見知りなのだろうか?
竜はまたも憎たらしい笑みを浮かべた。

「よう、また会ったな……」
「一度ならず、二度までも、わ、私の顔にィィーーーーーーッ……!!!」

変化の解けた顔は、女性の美しいそれとは程遠く。
爛れて焦げた、その表情はどこから見ても人には見えなかった。
それほどまでの傷である。
竜は憤慨した女性を気にした様子も見せずにこちらに向き直る。

「お前も、あの女もここまでだ。大人しくしろ」
「……!」

好機。
問答無用で始末されないのであれば、今しかない。
ザックの中で握った杖を、引っ張りだして構えた。
この杖の効果は知らないだろうが、槍の青年とドラゴンは身構える。

防御は効くまい、杖を振り下ろす─と、その瞬間に。

「アアアァァァァァアアーーーーーーーーー!!!イ オ ナ ズ ンッッッ」

『!!!!!』
その場にいた全員が、蒼髪の女性の掌の中で迸る魔力に目を向けた。
馬鹿な。
呪文は、駄目だ。
「やめ─」

(構うものですか)
フローラとて、ローラの衣服の反射の力は判っている。
だが、ゴンとローラに対する憎しみは止まりはしない。
(傷つこうが、吹っ飛ばされようが…許しませんわッ!!!!)

響く、山彦。
二つのイオナズンが、時間差と共に放たれる。
咄嗟に竜の前に躍り出た、ローラのドレスが輝く─

跳ね返された爆発と、山彦で放たれたもう一つの爆発が、ぶつかった。

瞬間、炸裂。
村は轟音と破壊に染められた。

なんとも壮絶な破壊だった。

村の東側は、すでにただの荒地と化している。

体中が、痛む。
舞い上がった土砂にまみれ、瓦礫の破片で傷ついた体はボロボロだ。
やっとの事で顔を上げ、咄嗟に掴んだ為に遠くまで飛ばされずにすんだ帽子を被る。

見るとあの蒼髪の婦人は尻餅をついた姿勢で無事のままだった。
どうやら、二発目のイオナズンが盾の役割となり、正面にいた彼女は大した被害を被らなかった。
軽症ですんでいるようで、すぐに立ち上がる。
では、彼らは─

そこにいたのは竜と人の亡骸─ではなく。
 
 
地にしっかりと足をつけた青年と。
大きな体で姫を覆い隠したドラゴンと。
泣きじゃくるその姫が一人。
 
 
「なっ………」

あの婦人は絶句していた。
まともに食らったと、思っていたからだろうか。
生きているはずが無い、と思ったからだろうか。
しかし、現に彼らは己が瞳に生を携えていたのだから。

─逃げなければ…
あの婦人はこれだけでは済まさないだろう。
ここで戦うつもりだ。
逃げなければ、巻き込まれる。
ここは退く、退かねば。
だが、足が痛む。
左腕は、完全に折れているようで持ち上がりもしない。
走れる状態ではなかった。
そして辛くも生き延びた彼らも、満身創痍には変わりないようだった。
竜のほうは、炎竜の類かと見紛うほどにまで血で染め上げられている。
肉が燻る匂いもしていて、戦える状態ではないはずだ。
謎なのは、あの青年。
なぜ、あの爆発の中で?
 
 
それは彼女も知らない彼の特技の一つ。
『大防御』
背中の仲間たちを守るため、彼が習得した自らの体を鋼の盾とする技法。
生き延びることが出来たのは、そのおかげだった。
なんとか歩ける素振りを見せ、姫を庇うように立つ。
その姫も、煤けた冠にくすんでしまったドレス。
まるで童話のシンデレラのように泣いていた。
しかしサマンサは。
彼らは、彼女を守ってあの女を倒すことは出来ないと確信していた。
そんなサマンサの思考を、断ち切る声が突如響く。

「おいっっ!!!!」

その場の全員が、声を荒げた竜に目を向ける。
竜は、青年と姫の前にずいと進み出た。
「…悪ぃが…」
「……………ゴン、さん……」
「兄ちゃん。そいつ連れて、逃げろ」
「!?」
「ゴ……ゴンさんっ!!!」
「あんな奴ら…俺一人で、充分だからよ。手前らは、邪魔だ」

精一杯のぶっきらぼうな口調で、突っぱねた。
二人にはわかる。
彼は自分たちを逃がすために。
たった一人で戦う気だと。

「ゴンさん、駄目、駄目ぇぇっ!!!」
「しかし!!!」
「うるせえぇっ!!!とっととあの『勇者様』の所にでも行きやがれぇ!!!」
「何を、ゴチャゴチャとぉぉぉぉぉ!!!!」

彼らの話など意にも介せずに、突っ込んで来た。
手を翳して、極大火球呪文を放とうとした婦人の頬を、唸りを上げた竜の尾は捉える。
「げぶッ」
はしたない呻きと共に、淑女であった女は激しく吹き飛ばされた。

「……ッ…失礼します!!」
「あぁっ、ゴンさん!!ゴンさん!!!ゴンさーーーーーーんッ!!!!」
青年は、歯を食いしばって姫を抱き上げて全速力で離脱した。
サマンサは出来れば追いかけたかったが、体が動かない。
そして、竜は追いかけるというその行為を許しはしないだろう。
遠ざかる姫の悲痛な叫びを聞きながら竜はまた唇を持ち上げた。

「ゲフッ…ゲフッ……」
瓦礫から、ガラガラと身を上げた婦人の顔は、とても直視できる代物では無かった。
爛れて、腫れて、皮の剥けたそのグロテスクな肉の塊が、顔となって歩いているように見えた。

「口の中、ヤっちまったか?得意の呪文ができねぇな」
「……」

ここからでは腫れた左側面の顔しか見えないが、彼女の右眼はおそらく殺意の瞳を向けているのだろう。
確かに竜の言うとおり、詠唱破棄をしても最後のキーを口にしないことには、呪文は発動しない。
頭の切れる魔物だ、と思った。
本当に魔物であるか疑わしいほどだ。

徐に婦人は、黒い箱のような物を取り出した。
途端に、竜はぎょっとした表情を浮かべる。
そして、その箱を竜のすぐ脇を狙って向けているようだ。
その先には、横抱きに姫を抱えて逃げる青年の背中。

ああ、あれは飛び道具なのだろうかと思う間もなく、乾いた音が響き渡った。

銃声が轟いた夜の村。
弾丸は、竜の守りたい人を貫くことは無かった。
代わりに、竜の掌に孔が穿たれている。
残酷な婦人は、にぃっと笑った。
─ヨケラレナイデショウ?
もごもごと動く口から、そんな声が漏れたのが聞こえた気がした。
喋ることすら叶わぬほど、ひどくそこを痛めたか。
紡げない呪文の代わりとばかりに、何度も何度もフローラは引き金を引いた。
ゴンの体に一つ、二つ、と穴が増えていく。
弾が無くなれば、新たに装填して。
また、一つ、二つ、新たな穴をフローラは開けていった。
 
 
全身を血で染め、手足、腹を満遍なく打ち抜かれた竜は生きていた。
なおも立ちふさがり、姫の元へは行かせまい、と。
それは。
竜の王たる人に、命じられたその行為。
かつて、ロトの血を引く勇者も見た光景。
姫の前に、立ち塞がる竜。
 
 
フローラは、懐から毒針を取り出した。
竜の頬を、ゆっくりと撫でる様に触れている。
かつて聖母のような笑みも浮かべて─眼球に、針を突き刺した。
ゴンは上げる悲鳴すら、持ち合わせてない。
ただ、体を震わせながらも決して倒れまいと耐えるのみだった。
ぐりぐりと突き入れた針を掻き回して、吹き出す血をも厭わずに針を抜く。
そして、あの黒い箱の…引き金を、竜の額に押し当てた。
引き金に、指をかける。
 
 
高らかに、銃声が響いた。

命を奪う覚悟を持った、サマンサでさえわなわなと震えを見せるほど、残酷な光景だった。
反吐が出そうな表情を見せて蹲っている。

フローラは、笑った。
それは、悪魔と表現するも生ぬるいような、邪悪な笑みだった。
 
 
そんな姿を見てゴンも、笑った。
たった一言、言い残して。
唇の端を持ち上げた。
 
 
「ざまぁ…見やがれ」
 
 
 
笑みから覗く牙の先には、命の炎の如く紅い光を放ち始めた環があった。
勇敢なる竜は、最後の牙を掲げて散った。

フローラが、固まる。
そして、驚愕の声を上げて後ずさった。
「め メガンテ………ッ!!!」
その声ははっきりと、サマンサの耳にも届いた。
メガンテ?その威力は知っている。
この距離、この状態でくらったら?
死ぬ。
必死に這い蹲って、惨めな姿と分かっていてもずるずると逃げ出す。
死ぬ。死ぬ。死んでしまう、あの子を、守らなければ。
死ねない。死ねない。
使命感が、彼女に生への欲求を齎した。

動く足で、フローラは逃げた。
走れば間に合うかは分からない。
だが、死ねない。
あきらめてたまるか、死ねない。死んでたまるか。
愛のため、自分のため。
形振り構わず逃げるフローラを、サマンサの叫びが止めた。

「その杖を、こっちへッッ!!!!そうすれば助かるッッ!!!!!」
一瞬の判断で、振り向き、足元に杖がある事を確認した。
魔法使いが手をこちらに差し出し懇願している。
今、あいつは何と言った?
助かる?
死なずに済む?
考えている暇は無かった。
杖を拾い上げ、サマンサに向かって投げる。

─ありがとうございます。
これで、助かりますよ。

私だけが、ね。

音も立てずに、サマンサは消え去った。

フローラに何が起きたかを理解する時間は、与えられていなかった。

命の炎が、輝いていたのだから。
鼻先を焦がすほどの間近に、太陽のような白い光。
 
 
「リュカさ」
 
 
動いた唇は、愛する人の名も告げられず。

村は、その瞬間にただの大地に空けられた穴となった。
 
 
 
 
「…あの、光は」
「……」
その光を見た途端、体は石のように動かなくなった。
真珠と見紛う程の大粒の涙が、また、溢れた。
命を賭してくれた、竜の為。
「……ゴンさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあんっ!!!!!!」
 
 
魔王は鋼の斧の刃を丁寧に拭って、それで大地に穴を掘る。
充分な大穴になった頃、骸を見下ろす。
下半身だけの、竜。
吹き飛ばされた半身は集めることは叶わなかったが、もう半分を埋葬する。
薄くではあるが土を被せた。

─急げと言ったり、横道に反れたり…何がしたいんだこいつは。

少女の、涙ながらの懇願にしぶしぶ引き受けてやっている。
道中で、血の匂いがするとポツリと漏らさなければ良かったと後悔する。
言ったがとたん、その方向に行けとすぐさま頼んできた。
もちろん、急ぐとは言ったが、どうしてもとしつこいのでその血の匂いの方向へ向かってみた。
そして、この光景だ。
酷い有様に気絶しかけたその少女は、先程から魔物の死に祈りを捧げたままであった。

「……時間が惜しい。行くぞ」
「はい…あの、すいません」
ぺこりと、少女は頭を下げた。
しかし魔王は顔を、上げさせることなく、疑念を吐露する。

「魔物の一匹や二匹死んだだけで、何故ここまでする」

冷たい一瞥をくれると、しゅんとしたのか大人しくなった。
沈黙が長引くのは好かないので、また歩みを進めようとしたところ、少女が口を開く。

「いのちは、平等ですから」
「……」
「魔物も、人間も、命を失えば必ず悲しみを生むんです。だから…祈ってあげたかった」
「…………行くぞ」

魔王は、一つ分かったことがある。
この少女が、ひどく優しいこと。
そして、その事実が、自分を迷わせている要因だということが分かったのだ。
こいつがいる限り、自分は精神的にも勝手な振る舞いが出来ない、と悟った。
 
 
 
ピサロが村の方向を向くと、なにやら魔力が収束していくのが感じられる。
魔王は知っている。
この膨大な魔力が何を引き起こすかを。
反射的に、フォズを伏せさせていた。
 
 
轟音と共に、村が消え去った。

フォズは、何が起きたのかが分からない様子であった。
もう少しで辿り着けただろう村が丸ごと消え去ったのだから。
子トカゲも、少女の肩で固まっている。
ハッと気づいたかと思うと、また少女の服の中に潜り込んだ。

「……む…村が……」
「……自己犠牲呪文、か」

ピサロも珍しく焦りを見せる。
もし、もう少し急いでいて、村に辿り着いていたら…
魔王の肉体も、砕け散っていたかもしれない。
二人は、立っていることしかできなかった。

だが、唖然としている暇も無く、新たなる来訪者。

フォズが「ひっ」と小さく呻く。
ピサロが見下ろすと、そこには確かに誰かの気配。
傷だらけの魔法使いが、そこに蹲っていた。
傷つき、荒い呼吸を上げている。
表情は帽子の陰に隠れ、伺えない。
ピサロはその帽子に、目をつける。

「…魔法使い…か…」


【B-2/レーベ南の平原/深夜】

【ローラ@DQ1】
[状態]:HP 2/3 火傷
[装備]:光のドレス
[道具]:ロトの剣 支給品一式
[思考]:アレフを探す ゲームを脱出する

【エイト@DQ8主人公】
[状態]:HP1/4 左肩にダメージ 腹部と背中に打撃 火傷 MP3/4
[装備]:メタルキングの槍
[道具]:支給品一式 首輪 メルビンの支給品一式(不明二つ)
[思考]:アトラスを止める 仲間(トロデ優先)を捜し、護る
     危機を参加者に伝える ローラに会ったらアレフの伝言を伝える

【B-2/レーベ南東の平原/深夜】

【ピサロ@DQ4】
[状態]:疲労(休めば回復) MP6/7程度
[装備]:鎖鎌 闇の衣 アサシンダガー
[道具]:エルフの飲み薬(満タン) 支給品一式  首輪二個 鋼の斧
[思考]:ロザリーの仇討ち ハーゴンの抹殺 襲撃者には、それなりの対応をする
     【シャナク】【アバカム】の使い手を捜す 更なる首輪解除方法調査
     北西の方角に居る魔力の持ち主を探し、接触する
     首輪解除の目処が立たずに生存者が10名を切ったら、ゲームに乗ることも視野に――?

【フォズ@DQ7】
[状態]:健康
[装備]:天罰の杖
[道具]:炎の盾  アルスのトカゲ(レオン) 支給品一式
[思考]:ゲームには乗らない ピサロを導く

【サマンサ@DQ3女魔法使い】
[状態]:HP1/6 MP3/5 全身に裂傷・火傷 左足に負傷(軽) 左腕骨折(重)
[装備]:奇跡の石
[道具]:支給品一式 鉄兜  ゴンの支給品一式 ルビスの守り
[思考]:勇者の血を守る

(レーベ・半壊)
※フローラの荷物は、すべて吹き飛びました

【ゴン@DQ1 死亡】
【フローラ@DQ5 死亡】
【残り16名】


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