トップ 差分 一覧 ソース 検索 ヘルプ PDF RSS ログイン

気苦労が絶えませんが、私は元気です

気苦労が絶えませんが、私は元気です


登場人物
トルネコ(DQ4)、アレン(竜王)(DQ1)


 アトラスを追いかけたアレフの姿が見えなくなったのを確認し、トルネコはようやく肩の力を抜いた。

 去り際にアレフの唱えたベホイミのお陰か、それとも持ち前の「人ならざる者」としての生命力のお陰か、
 倒れたアレンの呼吸は既に落ち着き、静かに眠っていた。
 その外見も、巨大な竜の姿からいつもの人に似た姿へと戻ったところだ。
 トルネコはこの変化を見るのは二度目の事になる。
 一度目はバズズの自己犠牲呪文の爆発から自身とリアを庇おうと仁王立ちしたときのことであったが、
 こう異形への変化を目の当たりにするたび、彼はやはり人間ではないのだなと身震いすることがある。
 そしてそのたび思うのだ、この方が人に仇なす存在とならなくて実に良かったと。

 先ほどのアレフとの連携は見事の一言だった。それは本当に彼らがかつて宿敵と互いを敵視し、
 剣を向け合った存在であったのだろうかと疑問に思うほどに。
 だがそういえば「デスピサロは自身の村を滅ぼした仇敵だ」と語ったユーリルも、
 エビルプリーストの戦いの最中まるで長年のパートナーの如くピサロと見事な連携を見せたと聞いている。
 実は身近な者よりも、敵対していた者同士の方が呼吸が合うのかもしれない。
 まったくわからないものだとトルネコは思う。だが、今はそれがとても頼もしい。
 彼らが居れば、この忌々しき戦いに終止符を打てる。そんな希望を抱くには十分だったのだから。

 朝日が昇り始めたことは、『死を告げる鐘の音』の時間が近いことを意味しているのだろう。
 次にアレフの名を聞く機会が『鐘の音』からでないことを信じ、トルネコは崩れた城に背を向けた。
 このまま野ざらしにアレンを放置しておくわけにはいかないし、宿屋のトロデに無事を報告したかったからだ。
 まずは自分のザックに全ての荷物を一まとめにした後、続いてアレンの体の持ち上げにかかった。

 見た目以上に体重のあった体を持ち上げるのは少々骨が折れたが、それも鉄の金庫や
 たくさんの武器防具を背負い、各地を旅した実績を持つ自慢の足腰の前には些細な問題で、
 アレンの体はすぐにトルネコの背に乗せられた。

 体勢を整え、面を上げてみればそこには一面の朝焼けが広がっていた。
 その日差しの眩しさに目を細めながら、丸一日まともな睡眠も食事も取ってなかった事を思い出し苦笑する。
 今こそ気分が高揚しているが、すぐ鉛のように体が重くなるのだろうと考えると思わずため息が出る。
 宿屋に戻ったら、今度こそ落ち着いた食事や睡眠を取りたいものだ。
 もっとも心からの休息は、この地に居る限りは出来ないだろうけど。
 
 
 
 何事も無く宿屋の入口へと辿りついた彼らを、出迎えるものは誰も居なかった。
 宿屋の入口に繋がれていた筈のファルシオンも、宿屋の中のトロデの姿も無く。
 何の気配も感じられない周囲を見渡して、ようやくトルネコの全身を不安が包み込んだ。

 まさか自分たちがアトラスを迎撃している間に、別の襲撃があったのだろうか。
 トロデには身の危険を感じた時はファルシオンと共に逃げるように伝えておいたものの、
 クリフトを追ったアリスたちや、先に彼女らやトロデのところへ向かったキーファという少年までもが
 この時間まで戻ってきていないというのは、さすがに何か起きたとしか思えなかった。

「すぐ戻ります」
 未だ意識の戻らないアレンを壁に寄りかからせ、念のため彼の手元にさざなみの剣を残しておく。
 そしてトルネコは破壊の鉄球を片手に、周囲の哨戒に乗り出した。
 万が一、ということもある。考えたくは無いが、仲間達誰かの死体を見つけることも覚悟して。
 身のすくむような恐怖には、今動けるのは自分しかいないのという責任感が上回った。

 唸る心臓を押さえつけるように鉄球の持ち手を強く握り締め、入念に見回りをしていたトルネコは、
 やがて宿屋の裏で日光を反射しながらその存在を主張する、一つの大きな壺を見つけた。
 拾い上げてすぐ、トルネコはそれによく見覚えがあることを思い出す。
 これはトロデが大事そうに抱えていた『錬金釜』に違いない。
 ならば……と周囲を見回してみるも、やはり本人の姿は無く、トルネコの不安は更に強まるだけに終わった。

 さらに武器屋の方へと足を伸ばそうとしたところで、奥の茂みががさりと揺れる音。
 静寂の中に響いたそれに気付くや否や、トルネコは声にならない悲鳴をあげた。
 その心臓は更に高鳴り、口どころか肋骨から飛び出そうと暴れる。
 より強く、もう握り潰すかのように鉄球の持ち手を握り締めて、ようやく振り返ったトルネコが見たのは
 ふらふらしながらも自身へと歩み寄ってくるファルシオンの姿だった。
 見知った顔の登場に緊張を打ち砕かれたトルネコは、乾いた笑いを浮かべながらへなへなと座り込んだ。
 しかしすぐに、ファルシオンがここにいることが「トロデは馬に乗り逃げたのではない事」を、
 そしてファルシオンの痛ましい火傷が「敵襲があった事」を現していることに気付いた。
 気を取り直して立ち上がり、ファルシオンに尋ねる。

「一体、何があったのですか?」
 その返事は弱弱しい馬の言葉。聞いたところでトルネコに理解する事は出来なかった。
 ふらりと倒れそうになったファルシオンを支え、まずは痛々しい脚の火傷の治療からかとザックを広げた。
 中から水入りのボトルを取り出し、その後ろ脚にかける。洗浄と冷却のためだ。
 染みたのか冷たさに驚いたのか、危うく蹴り飛ばされそうになったが、何とか踏みとどまってくれたようだ。
 人の恋路を邪魔しても居ないのに馬に蹴られて死んでしまってはたまらない。
 ボトル一本を使い切る前に、最後に自身の縞模様の服を少し千切って水を含ませ患部に巻きつけた。
 衛生面に不安はあるが、回復呪文の使えない自分に出来るのはこのような応急処置が限界だ。
 薬草でもあれば話は違うのだが、そんな便利なものはこの大陸には用意されてなどいないだろう。

「アレンさんがお目覚めになれば、回復呪文を使っていただけるかもしれません」
 宿屋にアレンがいることを説明し、ファルシオンもそこに向かうように伝える。
 ファルシオンもこちらに言葉が伝わらない事をむず痒く思っているのだろうが、やはり怪我が辛いようで
 大人しく宿屋へと向かうことを選んではいるものの、未だその足取りはおぼつかないものだった。
 危なっかしくて見ていられない、と仕方なくトルネコも踵を返し、その手綱を取る。
 どうやら彼らを置き去りに、この場を離れる事はできないようだった。
 
 
 手負いの竜と馬に、忽然と消えたトロデ。そしてリアの奪還から未だ戻らぬ少年少女たち。
 一難去ってまた一難とはよく言うが、果たしてこれは何難だろうとトルネコは一人頭を抱えた。


【E-4/アリアハン城下町宿屋/早朝】

【アレン(竜王)@DQ1】
[状態]:HP1/7 MP1/5 気絶
[装備]:なし
[道具]:さざなみの剣
[思考]:この儀式を阻止する アレンの遺志を継ぐ

【トルネコ@DQ4】
[状態]:HP3/4
[装備]:無線インカム 破壊の鉄球
[道具]:支給品一式(水残り1本) ホットストーン 聖なるナイフ 錬金釜
    プラチナソード 折れた皆殺しの剣 ラーの鏡 マジックシールド 魔封じの杖 首輪×2
[思考]:アレンとファルシオンの介抱 仲間の安否を心配 他の参加者に危機を伝える ピサロといずれ合流

※【ファルシオン@DQ6馬車馬】
[状態]:右後ろ脚に火傷(応急処置済。完治には回復が必要)
[装備]:縞模様の布切れ


<<BACK [ 本編一覧 ] NEXT>>


-Aqua System 2007-