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呼べよ奇跡の階を

呼べよ奇跡の階を


登場人物
ピサロ(DQ4)、マリア(DQ2)、アレフ(DQ1)、エイト(DQ8)、アリス(DQ3)、フォズ(DQ7)、竜王(DQ1)


五本。
五本の首縄は解かれた。
しかし鳥籠は、依然闇夜に揺られるがまま。
仮初の自由を手にした五匹の小鳥が口にするのは、喜びではない。
不安であった。
残る二匹の首は、いつ捻られてもおかしくない。
縄の伸びる先には、血色の悪い顔に笑みを湛えたあの男が、きっといるから。
だからこそ、一刻も早くこの籠を破らねばならない。
あの男、ハーゴンを討たねばならない。
小鳥は囀る、勝利の歌を。
籠の内より、解き放たれんと。
一匹の小鳥が、背を向けた。
二匹を贄に自由を得たことを、悼んでいた。
 
 
 
 
 
「……」

アレフは卓を囲んだ皆に背を向け、仏頂面で本を読んでいた。
傍らで眠る、マリアが読んでいたものだ。
皆が一寝入りした後も書の解読、加えて首輪解除。
ずっと休むことなく頭を働かせ、心休まらずに居たのだ。
アレフが怒りの声を上げたあの後間もなく、赤子のように眠りについてしまったのだった

誰も起こそうとはしなかった。
アレンとピサロも、寝かせておけと言っていた。
それほどまでに、彼女はがむしゃらに働いてくれていたのだ。
そして、眠った彼女の首輪の異変を見張る役を引き受け、アレフはここに座り込んでいる。
本当は二階の寝台まで上がりたかったのだが、それでは爆破の危険がまだ残る首輪に対処できない。
寝室に皆で押し入って話すわけにもいかず、今は床にシーツを広げて寝かせている状態だ。
寝息を立てるマリアの顔を見て、アレフの仏頂面が一瞬元の人のいい顔に戻った。

「ありがとう、マリア。今は安心して眠っていてくれ」
「すー……すー……」

そして、また仏頂面に戻る。

手持ち無沙汰だったので傍の本を読んでみたが、内容は頭にさっぱり入ってこなかった。
適当に開いた頁の三行目に書いてあった上級呪文の魔力構成式の辺りでもう嫌になり、半ば惰性でページを捲っている。
「これを読んで修行してたらベギラゴンまで使えたのか」なんて思いもちらと頭を掠めたが、今となってはどうでもいい。
アレフの心は、マリアの寝顔を見てことさら締め付けられたのだから。

(……この小さな肩に、こんな重荷を背負わせることになってしまった)

ただ、辛かった。

 

あの二人、ピサロとマリアの行為が辛かったのだ。
何故、真意にもう少し早く気づけなかった。
刃を交え、そして見届けると誓った彼の真意。
愛すべき者の面影を見出し、全力で守るとそう誓った彼女の真意に。
アレフの両肩には、外れた首枷以上の重みがずしりと圧し掛かっていた。
しかし、自分よりもマリアの重荷を気遣う。
勇者だからではなく、ただ仲間の身を案じる一人の人間としての感情。

(すぐにその重みを、下ろさせてやるからな)

諦めかけた呪文書を、もう一度開いた。

「……このアリアハンという地は幻影、ないしは呪術か魔法で作り上げた紛い物である。というのは間違いなさそうだな」
「間違いないと思います」

卓を囲んでいるのは、アレフとマリアを除いた5名。
先程の事もあり、もはや盗聴の可能性は考えていない。
そのうち紙も足りなくなる、とはピサロの弁だ。
彼らは気兼ねなく口が利いている。
首輪を外す方法も固まった今、残るはこの造られた世界からの脱出方法を考えるだけとなった。

「だが、ワシらがなんらかの方法でまやかしを払うとして……一つの可能性が考えられる」
「それは?」
「この地の秘密を暴くことが、すなわち崩壊に繋がるのではないかということだ」

 

アリスたちは息を飲んだ。
ハーゴンたちが自分らに行った放送、監視などの行為。
それらを行っているに辺り、この世界そのものが「箱庭」なのではないかとの考えは持っていた。
例えるなら、アリアハンがあった大地から見たアレフガルドや、ピサロが城を構えた魔界。
ここは「小さな異世界」であり自分達はそこに幽閉されている、という発想でまとまりつつある。
例えば、マリアが体験したようにハーゴンが神殿に幻影を被せたとのであれば、その偽りの皮を剥げば石造りの寒々しい光景が広がるであろう。
では、「偽りそのもので成された世界の偽りを暴くことは、どうなるのか?」
考えられるのは、世界の崩壊。
そこに存在する命がどうなるか、考えたくもない話である。

「脱出には恐らく、幻影……の解除が必須ではないかと。しかし、崩壊が始まるとすればその解除直後から考えられますね」
「しかし、どうしたものか……ワシは、異世界を渡った経験なぞ無い」
「僕も、世界をまたぐには特殊な状況下にならない限り無理ですね……それも、何か大いなるものの力を借りなければ」

エイトが思い出したのは、かつてあのイシュマウリと出合ったあの場所だった。
月の光が生み出した影が、異世界への扉へと変貌したことを。
しかし、世界が贋物ならば空の月もまた、神秘など秘めぬ偽りの光。
脱出の糸口とは、程遠いものであろうと考えられた。

「私は神殿から外に出た経験も少ないし……すいません、お力になれそうになくて」
「まあ、そう都合良く体験などできまいよ。かなり特殊な状況下に在らずば、世界を渡るなど有り得ない」
「勇者アリス、お前はどうだ」
「うーん……私から見たら、アレフガルドが異世界だったんですよ。
 闇の世界と呼ばれていて……それで、二つの世界をルーラで行き来したことがあります」

 

ギアガの大穴を境界とした、二つの世界を行き来する勇者。
穴の閉じた今、それはできなくなったがあの時は確かに転移呪文ルーラで上世界への帰還が果たせた。
ルーラが単なる飛行呪文ではなく転移呪文であるが故である。
入り口が開いている以上は一繋がりの空間として、瞬時の移動を可能としたのだ。

「ルーラ、ですか?幸いここには使い手が多くいらっしゃいますし、それなら……」
「……いや、駄目だ」

遮ったのは、アレフ。
背を向けたまま、本を開いたままで皆の話を聞いていたのだ。
マリアを起こさぬよう気遣いつつ、続ける。

「この世界の壁を破って、ルーラで帰れたとして……それはあいつから逃げることだ」
「……」
「ハーゴンの野郎にやられっぱなしでなんかいられないさ」

アレフの言い分に、皆は閉口する。
だが、誰もがその通りであるとも思っていた。
ここで帰還したとして、ランドがキーファに伝え、キーファがエイトに伝えた「邪神の復活」たる目的は止められない。
邪悪な意思に背を向けることは、彼らの信念が許さないことであった。

「他の方法を考えるとするか」
「そうですね……何か手がかりがあればいいんですが」
「それなら……」

マリアを起こさぬよう、アレフが静かに腰を上げる。
ちらと横の、アレフにとっては頭の痛くなる物を見やった。

「この本を読むのを手伝ってくれないか?」
「確かにファルシオンの件もありますし、何かあるかもしれませんね」

 

アレフが平積みになっている本を持ち上げ、ひょいと卓に乗せる。
と、一番上に積んであった本が滑り、床に開いたまま落ちた。

「おっと……すまない」
「待て」

拾い上げようとしたアレフの手を、ピサロが制した。
捲れあがるページの中、魔力の匂いをちらと感じ取ったのだ。
ピサロが油断無く感覚を研ぎ澄ませていると、アレンが何か解したかのようにふむと声を上げる。

「……なるほど、真実を映し出す鏡、か」
「でかしたな」

先程使用した二枚の鏡を荷物に立てかけて置いたところ、ラーの鏡に今の本が映し出されたようだ。
微かに光を帯びた鏡面に映された像は、変化の兆しを見せている。

「……この頁だ」

ピサロが開いた頁は何の変哲も無い、魔術構築の紋章図案のようにも見えた。
しかし、ラーの鏡から出でる光を浴びせるとどうであろう。
描かれた一筆一筆が光を帯びて、まるで生きているかのように動き出したではないか。

 
「……偽造文書、か」
「……ハーゴン側の内通者か……?」
「あ……絵が、変化して……」

変化が終わったとき、その頁は様変わりしていた。
雨雲と強い光を帯びた珠の姿を描かれなにやら説明が書かれている。

「……これは」
「……雨と太陽が合わさるとき、虹ができる」

一目見たそのとき、アリスが思い出すように呟いた。
その言葉に、アレン、アレフが反応する。

「ご先祖、それは」
「かつてゾーマの元へ辿りつくため、この言い伝えに従い私は『虹のしずく』を手に入れました」
「えっと……その言い伝えが、わざわざここに隠してあるということは……」
「……確実に何らかの意味がある、というわけですね」
「よし、他の本も調べてみましょうか!」

それぞれが本を手に取り、ラーの鏡の前に晒す。
アレフもまた、たった今真の姿を暴かれた本を持ち、マリアの傍へ座った。
分厚い本の中、そのたった一頁に隠された真実があると信じて。

 
「『英雄の眠る石』に『隠された太陽』……『鏡は光を受け、太陽の力を取り戻す』……これは太陽の石、そして鏡のことだな」
「……破壊呪文…………『マダンテ』……『マナスティス』……『ミナデイン』、『ジゴ、デイン』?これは勇者の呪文……」
「……マハトラーナ ソテミシア レキダントラン ヒガン……読んでて寒気がしてきました……何でしょう……」
「これは、重要な記述だと思います、皆さん見てください」

エイトが示した文書も、やはりラーの鏡により真実をあらわにした物。
それはこの舞台─このバトルロワイアルの核心に迫る一文。

「……破壊神に捧げる魂、とありますね」
「これは我々のことだろう、その後に『魂を闇と血に浸し、極上の贄とする』ともな」
「キーファさんやマリアさんが言ってたことは正しかったんだ」
「……こ、ここ……」
「?」

フォズが眼を見開いて、おずおずと指を指す。
その先に、血のように赤い字で記された一文があった。

「『血に狂った魂を喰らい糧にし、嘆き苦しんだ魂を浴びその身を清め、破壊神は再び我らの前に姿を現す』
 『破壊の裏は即ち創生、死の舞台を創り上げて様々な感情で彩られた魂が出来上がるのを待つであろう』
 ……これが真実か。邪神の復活?そうではなかった」
「?どういう……」
「……この記述、私たちが今立つ大地を邪神の力で作り出したものとも読めますね。
 神官、教徒などが尽力したとしても……あきらかに人の理を大きく越えた術法などが確かに使われている」
「だが、敢然には復活していない状態……例えるなら片腕がこちらの世界に蘇りつつある、とでも言おうか」
「それはつまり!」
「邪神は……既に、復活しつつあるのですか!?」
「……あくまでも可能性だが、色濃いな」

 

少なくともハーゴンだけではなく邪神を相手にする可能性が、皆の頭に浮かんだ。
そのおぞましい神の実体は解らないが、持ち合わせる恐怖は文面に表れている。
フォズの顔は、続く文章が眼に入るとさらに青くなった。

「ひっ……ひどい……」
「『その舞台とは、中に生きる生命の強さを柱とする蟲毒の牢獄なり』
 ……我々が生きている限りこの世界は続き、生命が尽きれば世界は砕ける、ということかな」
「こ、これが正しいとすると……破壊神は、魂を……このような、湯水のように……」
「神と名乗るのもおこがましい、最も邪悪で下種な行為ですよ、これは……!!」

アリスの怒りが爆発した。
卓に乗せていた手が震え、感情が抑えきれずに叩きつけてしまう。
年季が入った卓が大きく軋んだ。
思わぬ手がかりを掴んだ喜びは立ち消えてしまった。
真実には、絶望の色濃い影が落ちていたのだから。

「……臆したか?」
「……まさか、ですよ。逆に怒りが沸いてきました」
「僕らに立ち止まっている暇は、ありません」
「……では、続けよう。脱出の方法だったな」

アリスは猛る、エイトも臆すことは無い。
その勇気が彼らを導くのだから。
 

「結局、全てに何らかの意図があったのか……図書室全ての本に細工がしてあったのかもしれんな」
「今となっては、確かめようが無いがな」
「あ……」
「どうした?」

フォズが何やら声を上げる。
どうやら、最初に調べた本に何かが挟まっていたようだ。
はらりと舞ったそれを、フォズが拾い上げる。

「…大……る、女神…の守 ……に、五つの…紋……読めませんね」
「余程慌てていたのでしょう、インクも乾かないままここに隠したみたいです」

エイトが挟まっていた頁を広げると、インクが掠れ広がっている。
内通者の慌てぶりを見るに、この後何かあったのであろうか、とも思われた。

「五つの、紋?……あぁっ!」
「!?」
「フォズ、しっ」

五つの、という言葉に自らの首に下がる守りの存在を思い出し、思わず声をあげてしまった。
アリスが人差し指を口の前に立て、制する。
見ると、マリアが小さな呻きを挙げて寝返りをうっていた。
ああ、起こしてしまうところだったのかとフォズは顔を赤らめ口を押さえる。

(マリアさんが全てを知っている……聞くの、忘れていました)
 
 
本人が眠りについてから思い出すとは、しまったとフォズは思った。
そんな内心を知ってか知らずか、ピサロがアリスに話を切り出す。

「ところで勇者アリス。先程の『虹のしずく』についてだ」
「あ、はい。まだ説明してませんでしたね……ええと」
「ゾーマの元、というと魔の島……今は我が城を構える島へとたどり着くためにそれを求めたと?」
「ああ、俺もその道具のことはよく知っている」

ピサロとアリス、さらにアレンが加わり虹のしずくについての話を始めた。
アレフも話に反応して、こちらを振り向く。

「アレフさん、マリアさんは私が見ていますから……」
「あ……すまない、話が済んだらすぐ戻るからな」

気を遣い、フォズは席を空けた。
先程までアレフが腰掛けていたマリアの傍らに腰を下ろす。

後ろに耳を傾けると、アレフガルドを知る三名がピサロにその『虹のしずく』についての詳しい話を聞かせている。
話によると、その代物はアレフガルドに伝わる品物らしい。
そういえば、とフォズは思う。

(このルビスという精霊神のお守り……アレフさんやアレンさんと同じ、アレフガルドのものでしたね)

ちゃり、と音をたて胸の前で揺れる首飾り、はめ込まれた珠を見つめる。
合流してからの急速、首輪に関する騒動。
ルビスの守りの宝玉の周囲についた五つの珠の内一つに何かが刻まれていたことをすっかり忘れていた。

「……?」

周囲の、何も無かったはずの残り四つ。
微かな光を放ったようにも見えたが、何も刻まれていない。

(……ひょっとして……?)

皆がそれぞれ脱出への手順を踏む中。
最大の一手への核心に、フォズは一人迫りつつあった。

 
 


  
【E-4/勇者アリスの家一階/夜】
 
【ピサロ@DQ4】
[状態]:HP1/2 MP3/5 右腕粉砕骨折(固定、治療済み) やや眠い
[装備]:鎖鎌 闇の衣 アサシンダガー
[道具]:支給品一式 首輪×5[首輪二個 首輪(分解) 首輪×2] ピサロメモ 宿帳(トルネコの考察がまとめられている)
[思考]:ハーゴンへの復讐 世界からの脱出方法を模索 虹のしずくについて話を聞く
※ピサロの右腕は通常の治療では完治できません。
 また定期的な回復治療が必要であり、治療しないと半日後くらいからじわじわと痛みだし、悪化します。
 完治にはメガザル、超万能薬、世界樹の雫級の方法が必要です。
 
【マリア@DQ2ムーンブルク王女】
[状態]:健康 MP3/5〜 (回復中)熟睡中
[装備]:いかずちの杖 布の服 風のマント インテリ眼鏡 鉄の杖
[道具]:小さなメダル  
[思考]:儀式の阻止 アリスを支えたい 最後の決戦の前に、アレンの最期のことを竜王本人に問う

【アレフ@DQ1勇者】
[状態]:HP5/6 MP4/5 左足に刺傷(治療済み) 首輪なし
[装備]:ロトの剣 ロトの盾 鉄兜 風のアミュレット
[道具]:支給品一式 氷の刃 消え去り草 無線インカム
[思考]:このゲームを止めるために全力を尽くす 虹のしずくについて話す
※左足の傷はとりあえず塞がりましたが、強い衝撃を受けると再び開く可能性があります。
 
【エイト@DQ8主人公】
[状態]:健康 MP1/7 首輪なし すこぶる眠い
[装備]:メタルキングの槍 はやてのリング 布の服(アリス家から調達)
[道具]:イーグルダガー 支給品一式 無線インカム
[思考]:悲しみを乗り越え、戦う決意
 
【アリス@DQ3勇者】
[状態]:健康 MP2/5 首輪なし
[装備]:メタルキングの剣 王者のマント 星降る腕輪 
[道具]:支給品一式 ロトのしるし(聖なる守り)炎のブーメラン 
    祈りの指輪(あと1.2回で破損) 虹のしずくについて話す
[思考]:仲間達を守る 『希望』として仲間を引っ張る
 
【フォズ@DQ7】
[状態]:健康 MP4/5 内臓に軽症(ほぼ完治)神秘のビキニの効果によって常時回復 首輪なし
[装備]:天罰の杖  神秘のビキニ(ローブの下) ルビスの守り(命の紋章 他の4紋章も変化の兆し?)
[道具]:支給品一式  アルスのトカゲ(レオン)奇跡の石 脱いだ下着 ドラゴンの悟り
[思考]:ゲームには乗らない ピサロとともに生きる 5つの紋章についてマリアに話を聞く 紋章をそろえる?
 
【竜王@DQ1】
[状態]:健康 MP1/3 人間形態 首輪なし
[装備]:竜神王の剣
[道具]:外れた首輪(竜王)
[思考]:この儀式を阻止する 死者たちへの贖罪 脱出方法の模索 虹のしずくについて話す

※アリアハン城で発見した呪文書がそれぞれ変化しました
(破壊呪文の書かれた呪文書 バトロワひみつの書 虹のしずくの書 なぞの呪文書 天馬覚醒の呪文書 太陽のアイテムの書)


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