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守るべき仲間を

守るべき仲間を


登場人物
アリス(DQ3)、キーファ(DQ7)、トロデ(DQ8)、マリア(DQ2)


アリスは暫く、井戸の入口から見える空を眺めていた。
少しずつ光を帯びて来たそれは、幼い頃から優しかった故郷の空と微塵も変らない。

そしてまた、瞳を閉じる。
――今は待つ事しか出来ない。
寒さがこたえ、睫毛ひとつ動かすのも億劫になってしまう。
だが、触れた肌部分からの更なる冷たさが付きまとう度に、恐怖が襲いかかるので眠る事が出来ない。

そう、怖いのだ。
隣で揺れる命の炎が正に今かき消えんとして居るのが。
またその悲しみを味わうのが。

(昔から私は何も出来ません。――酷く無力です。)
先程から瞼の奥にちらつくのは、父の姿だった。
いつも死人の事を考える度に思うのは、自身への酷い自己嫌悪だ。

アリスは学んでいた。
誰かに愛されてる誰かが、時に、死に追いやられることを。
だからこそアリスは仲間や母、通じ合える人達との今生の別れを覚悟で地下の世界に身を置くことにした筈だった。
未だ闇を湛えた土地を周り、一人でも多くの人を救うことが、「ロト」の名を冠した自身の責務だと感じたから。
それと同時に仲間には頼らないことも決めていた。
この役目は魔王討伐のように仲間を巻き込んではいけない、と。
各々が別個の人生を歩めるように、と。
思ってのことだった。
 
 
 
――フィオ、サマンサ、デイジー、スピル―…
一人は既にこの地に居ない者、一人は未だこの地に居る者、二人はかの地に残してきた者、いずれも仲間の名前が零れる。
アリス自身、自分が無鉄砲なことは自覚していたので散々迷惑をかけたのは容易に想像出来た。
そして、彼女達無しでは自分は魔王どころか孤独にも、打ち勝てなかった自信がある。
今更ながら仲間の存在が骨身に沁みて来た。

――そう、この少女も仲間なのだ。
失ってはいけない、失いたくない大切な人。
そこまで考えると、再び恐怖がアリスの全身を駆け巡った。
自然、マリアと繋いだ手に力が入る。
握り返して来る意思が見られない手はやはり冷たい、その感覚がちくりちくりとアリスの心を蝕んだ。

そして、心に反応するようにカンダダやレックス、リアといった目の前で死んでいった者の死顔のその瞬間、刹那が写真をひとつひとつ現像していく様に甦る。
もちろん、最後に思い出すのは、殺人さえ厭わなくなったあの僧侶。
あの時の狂気を多分に含んだ瞳と、歪まされた感情が忘れられない。
せめてルビスの加護の元、彼とその大切な人が再び巡り逢うことを祈ることぐらいしか出来ない。
 
 
 
クリフトがアリスに二つ残したものがある。
――ひとつは誓い。
真の元凶である主催者を討つ事。
そしてもうひとつは――罪の意識。

もしかしたら殺さずにすんだかも知れない。そんな考えが頭をもたげる。
過去にifはないと分かってはいるが、そんな考えばかりが浮かんでしまう。
無駄だと分かっていても。
分かっている。
だが、その拭い去れない意識は孤独感と共に膨らみ、今にも弾けそうだった。

その時、

――カツーン。

外の方から音がした。
床冷えする身体に緊張が走る。
再び井戸の入り口を見ると、人影があるのが分かる。
どうやら先程の音は上から小石が投げ込まれた音らしい。
しかし、此処からではいくら朝に向かって少しずつ光がともって来たといっても、十分ではなく、誰かまでは判別出来ない。
敵か、味方か。
判断がつかずに迷っている時だった。

「…誰か居るのかっ?!」

聞き慣れない声。
警戒心が普段の何倍も強い今、判断材料はそれだけで十分だった。

「…トロデさん、ちょっとここで降ろすからな」
そういってキーファは、井戸らしきものの近くに、トロデを降ろす。
たしか、この辺りからだった筈だ。
そう思いぐるりと辺りを見回してみる。
しかし見えるのは戦闘があった形跡のみで、ひとっ子一人見当たらない。

可能性があるとすれば、この井戸の中。それ以外はあるまい。
井戸の中に入るとなると、流石に運べないのでトロデを再び担ぎ上げ、安全な所まで移動した。
それから、警戒の為、試しに井戸の中にそこらの小石を放り込んでみた。
――反応はない。
今度は井戸の中を覗いてみる。
すると、薄明かりに人が倒れているのが分かった。

「…――誰か居るのかっ!?」
くわんっと、声が反響した。が返事は、無い。

「生きてる…よなっ!」
そういうが早いかロープを伝って降りて行く。
途中火傷した手の痛みが気になったが、そうも言ってられなかった。
 
 
下に降りた時、最初に眼に飛び込んで来たのは緑の緑色の僧侶の服を来た男の死体だった。
それは無残にも斬られ、飛び散った血が、服を赤と緑という不気味なコントラストにしている。
そして、次に見たのは幼い少女――これもまた、既に生き絶えた骸だが――だった。
やはり、可憐なドレスだったであろう服はあちこちが擦り切れ汚れていて、背中に深い傷があった。
いずれも死を惜しむ施しがなされており、二人が死した後に人がいた形跡を残している。

キーファをゾクリとさせたのは後者の遺体だった。
キーファは嫌な予感を抱きながら少女の骸へと近付き、そっと、今は熱を持たない組まれた手にそっと自身のそれを重ねる。

まさか間に合わなかったとは思いたくない。
だが、目の前の現実は事前の情報と余りにも符合していた。

「そんなっ…嘘だろ…?」
友を裏切ったと言う現実の前に、一人の少女さえ守れなかった己の腑甲斐無さが突き付けられた。

気が付けばいつもこうだ。
全てが砂の様にさらりと手から零れ墜ちて行く。
胸を締め付けられる思いから自然手に力が入った。

と、その瞬間、風が凪ぐ。
キーファは、途端に研ぎ澄まされたその空気に殺気が含まれているのを悟り、より強い方――キーファにとっての後ろ――を見る。

そこには細身の剣を構えた少女が立っていた。
 
 
 
アリスはマリアを抱え、敵と思われるものが下に下りるギリギリのタイミングで姿を隠すことができた。
そっと気づかれないように覗くと、そこには金髪に赤い服を着た少年が、リアの遺体の側にいた。
何をしているのかはこちらからだと伺い知れないが、ひょっとしたら支給品を探しているのかもしれない、アリスはそう思った。
そして、もしそうなら。と、手にした隼の剣を深く握り込む。
まだ足元がふらつくが関係ない。
私がマリアを守らなければ、誰が――その思いが今のアリスを支えていた。

アリスとキーファの間にピンと張り詰めた空気が差し込まれる。
相手は少し前から気付いていたようだが、行動は起こさなかった。

「その子から離れなさいっ!!!」

じりっと、アリスの足元から音がする。
重心を取るために足を少しずらしたのだ。
――体力も少しだけだけど、回復している。
その音を頭の端で聞きながら、確認を取る。現に、先程は立つのもやっとだったが、今は虚勢を張れるぐらいには動けるようになっていた。
 
 
 
「ま、待てよっ。俺は――」
「問答無用っ!!」

そのままパッと攻撃に転じる。いつもと違い力が入らない斬撃だが、はなからアリスの狙いは相手の予想を裏切れる第二次の攻撃だから関係ない。

二手目。
しかし、当たると確信していた攻撃に今の精一杯の力を込めるが、それは空しく空を斬るだけになってしまった。
そのまま体勢を崩してしまう。

――殺られる。
刹那、そう思い無理に体勢を立て直そうとするが、今のこの身体では事態を悪化させる一方だった。
余計にバランスを崩し、地面に倒れ込みそうになる。しかし、その瞬間に来るべき筈の斬撃・衝撃はどちらも来ない。
アリスの誤算、それは相手が素早さを上げていた事だったが、もう一つは幸いにも彼女を救う事になる。

それは、キーファに彼女を傷付ける気が毛頭ないことだった。

キーファもまた、アリスを支えるところまでは良かったのだが、とっさのことでバランスを崩しそうになる。が、こちらは何とか止めることが出来た。
しかし、ちょうどアリスを抱き込むような状態になってしまう。

「――取り敢えず落ち着けよ、俺はトルネコさんに頼まれて貴女達を助けに来たんだ」
アリスは少し上の方から降って来た言葉の中の一つの単語に反応した。
本来の救助を待つ相手の名前が出て来たからだ。

「…それは本当ですか」
「勿論」
 
 
 
高ぶった感情が、戦闘を中断したことで平常心を取り戻して行く。
アリスはこの時、まずい、と思った。
この少年は信用出来る。何故なら自身が隙をみせた時も、今でさえ殺すチャンスがあるのにそれをしないからだ。
それと、何の根拠もないが彼の言葉には自分と同じ、人を守ろうとする強い意思が見られる。

そうなると、いくら警戒していたからといって、味方を攻撃していいわけが無い。
避けてくれたから良いものの、傷付けなどしてしまったら――と思うと、非常に申し訳ない。

「すいませんでした。敵と勘違いして…」
「あ、別に気にして無――」

――そこで、キーファが続きをいうのを止める。

そう、悪夢のような放送が、井戸の空気を震わせたのだ。


【E-4/アリアハン城下町井戸/早朝(放送直前)】

【アリス@DQ3勇者】
[状態]:HP1/6 MP0 左腕に痛み(後遺症) 疲労大
[装備]:隼の剣
[道具]:支給品一式×4 ロトのしるし(聖なる守り) まほうのカガミ 魔物のエサ 氷の刃
     イーグルダガー 祝福サギの杖[7] 引き寄せの杖(3) 飛びつきの杖(2) インテリ眼鏡
[思考]:自身とマリアの回復 『真の悪』(主催者)を倒す

【キーファ@DQ7】
[状態]:HP1/2 両掌に火傷 両頬、左膝下に裂傷 疲労
[装備]:メタルキングの剣 星降る腕輪
[道具]:ドラゴンの悟り 祈りの指輪
[思考]:トロデを助ける 危機を参加者に伝える 己の腑甲斐無さによる自己嫌悪

【マリア@DQ2ムーンブルク王女】
[状態]:HP1/5 MP僅か 服はとてもボロボロ 脇腹に切り傷(凍傷進行中) 気絶
[装備]:いかずちの杖 風のマント
[道具]:支給品一式×2(不明の品が1〜2?) ※小さなメダル 毒薬瓶 ビッグボウガン(矢 0)
     天馬の手綱 アリアハン城の呪文書×6(何か書いてある)
[思考]:竜王(アレン)はまだ警戒

【トロデ@DQ8】
[状態]:HP1/5 腹部に深い裂傷(再出血中) 頭部打撲(出血中)
    全身に軽度の切り傷(ほぼ回復) 服はボロボロ 脳震盪・気絶
[装備]:なし
[道具]:支給品一式×2(不明の品が1?)
[思考]:仲間たちの無事を祈る 打倒ハーゴン


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