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人の誇り 竜の誇り

人の誇り 竜の誇り


登場人物
アレン(DQ2ローレシア王子)、竜王(DQ1)、ククール(DQ8)


(ハーゴンが生きている……何故だ? 僕達は確かに……)
森の木々に囲まれながらローレシアの王子アレンは思い悩む。
確かに自分の剣はハーゴンの心の臓を貫いたはずだ。
そしてハーゴンの屍を生贄に現れた破壊神もランド、マリアと共に破壊した。
それで世界に平和が訪れたはずだ。なのに……。
「ハーゴンが死んでいなかったのなら……今この世界にいる人たちはみんな
 僕が巻き込んだようなものだ。だったら僕がなんとかしないと」
もうこれ以上ハーゴンたちの為に哀しむ人たちを増やしてたまるものか。
アレンは決意して立ち上がる。
すでに一人のエルフの少女が犠牲になってしまっている。
そして今一刻にも誰かが殺し合い、憎み合ってしまっているかも知れない。
それを放って生き延びようとすることは彼の矜持が許さなかった。
支給されたザックから自分の武器を確認してみた。
しかし中には武器が入っていなかった。代わりに入っていたのは――
「これは……ロトの盾じゃないか!」
不死鳥ラーミアの意匠が装飾された伝説の盾。
武器がないのは不安だが防御に関してはかなりの自信がついた。
「ハーゴンから支給されたっていうのが不安だけど贋物ってわけじゃないみたいだ。
 何を考えているのか知らないけど、余裕だとしたらつけこむチャンスかもしれない」
そして中に入っていたのはもう一つ。真実を映し出す魔力を秘めたラーの鏡。
かつてハーゴンの呪いからマリアを解放したことがある奇蹟のアイテムだ。
武器の確認を終えたアレンは今度は名簿を開く。
最初のホールで出会った仲間たちの名前が確認できた。
それにハーゴンと共に倒したはずの三体の悪魔たちも。
そして……アレフ、ローラ……竜王。ご先祖様とその宿敵の名前。
(まさか……いや、でもひょっとしたら)
あの会場には様々な者たちが集められていた。見たことのないモンスターも。
もしかしたら本当にハーゴンは時空を超えて呼び出してしまったのかもしれない。
しかしアレンはその事実に恐怖よりも好奇心が先に湧いた。
(もし本当にいるのなら……会ってみたい)
その願いはすぐに叶えられることになる。
森から出ると平原に出た。森の木々に遮られてわからなかったが、側には巨大な塔が立っていた。

塔の中を調べてみようかと思ったが、それより前に海岸に立っている一人の影に気が付く。
そのシルエットは……(竜王の曾孫?)
黒い角のあるフードに荘厳なローブ。杖を持って立っているその姿はアレンと友誼を結んだ
竜王の曾孫とそっくりだった。しかし名簿には曾孫の名前はない……ならば。
アレンの姿に向こうも気が付いたようだった。
警戒も怯みもなく、悠然とこちらに向かって歩いてくる。
「ほう……懐かしい、といっていいのか。馴染みの深い気配を持つ者と出会えたものよ」
「あなたは……まさか竜王……」
「いかにも。ワシが王の中の王、竜王だ。」
威厳あるその姿はまさに王と呼ぶに相応しい重圧を感じる。
(物凄い力を感じる。アレフ様はこんなのを相手に戦って勝ったのか……)
アレンは気圧され、ゴクリと唾を飲み込む。
しかし彼もまた王族の誇りがある。相手が名乗りを上げたからには自らも返すのが礼儀である。
「僕の名はアレンといいます。お気づきの通りロトの血に連なるものです」
「ほう」
途端凄まじいほどの殺気がアレンを襲い、アレンはその場を飛びずさる。
何か攻撃されたわけではない。しかし飛びのかなければ確実に死んでいたという確信があった。
竜王は小さく笑みを浮かべながら杖を仕舞うと一振りの剣を取り出す。
竜の装飾が施され、見るからに強大な魔力を秘めているとわかる。
「我が業敵の血族か。我と知り名乗ったならばこの場で殺されても文句はあるまい?」
「ま、待ってください。ハーゴンの思惑に乗るつもりですか!?」
アレンの言葉を竜王は鼻で哂う。
「フン、ハーゴンとやら。中々に小賢しい真似をしてくれるものよ。
 奴の玉座に飾られていた邪神像……あれには覚えがある。破壊の神シドーという古の邪神。
 此度の遊戯はその邪神復活の為の生贄の儀式であろうよ」
「そ、そこまで解っているのなら僕達が争い合う理由はない。協力して……」

ビシャァンッ!!

「うわぁあああ!!」
アレンの言葉が最後まで終わらぬうちに、竜王は剣を振りかざした。
無数の稲妻がアレンの周囲を焦がし尽くす。

しかしアレンそのものは全く無傷であった。意図的に稲妻が避けて落ちたようだ。
「人間と協力だと? 哂わせてくれる。人と魔物は相容れぬ。
 時代が、ワシの存在がそれを証明しておるわ」
竜王は憎悪に顔を歪ませ、アレンへと向けて一歩踏み出す。
気圧されアレンは一歩後退してしまった。
「この儀式は破壊する。されど人と、ましてロトと協力するなど有り得ぬ話よ。
 貴様はここで果てるがよい」
もう一歩竜王は歩を進める。しかし今度はアレンは退かなかった。
「嘘だ!」
「なんだと」
竜王の動きが止まる。
「僕はあなたが存在した時代……その世代のロト、アレフの時よりも遥かな未来の人間です。
 しかし確かに僕の時代も魔物と人の争いは続いています。でも…僕はあなたの子孫と出会った」
「……」
「竜王の城で僕はあなたの曾孫と友情を結んだ。彼は人間である僕たちを信じてくれたんだ。
 その時に僕は思った。人と魔物はわかりあえると。共に生きることができるんだと。
 僕達の知らない世界では人と魔物が仲間と呼び合えるような関係が生まれているかも知れない」
「それが真実というのなら我が子孫とは思えぬ惰弱さよ。人などに心を許すとは」
「あなたもなんじゃないんですか」
アレンの反論に竜王は眼光を鋭くする。
「ワシを愚弄するか」
「あなたは人間を愛した」
「ローラのことを言っているのか? あれは人間どもに敗北感と屈辱を味あわせるために攫ったのだ。
 支配をやりやすくするためにな。本気で后になどするものか」
「それならばローラ姫を隔離する必要はなかった。でもあなたは強力な魔物の蠢く居城から離し
 あなたの眷属によって護らせた。それはあなたが本当にローラ姫を傷つけたくなかったからだ!
 そうじゃないんですか!?」
「黙れ!」

ビシャァンッ!!

竜王の怒号と共に再び雷の雨が降る。しかし例によってアレンは無傷だった。

「よくもまぁ小五月蝿く囀ってくれたものよ。もはや聞く耳持たぬ。
 我を従わせたいならば力で語れ!」
竜王は剣を……竜神王の剣と呼ばれるその剣を持ってアレンへと飛び掛った。
ガィン!
その一撃を咄嗟にロトの盾で受け止める。しかしあまりに思い一撃に腕が痺れてしまった。
「うぁ……」
追撃が来る前にアレンは横に飛び、竜王との間合いを開ける。
(く、くそ。なんて重い攻撃なんだ。受け止めるんじゃなくて受け流すようにしないと……。
 でも武器がない。呪文も僕は使えない。何より今のこの竜王を倒すべき敵だとは思えない!
 どうする……どうすれば……教えてくれランド、マリア!)
かつて共に苦難を乗り越えた仲間たちの姿が脳裏をよぎる。
このままでは電撃の攻撃で自分は遠からずやられてしまうだろう。
それがなくとも防御だけであの攻撃をいなし続けられるとは思えない。
アレンのその様子を見て竜王は相手が武器を持っていないことに気付く。
「ふん、武器を持たぬ、か。剣を持たぬ勇者など様になるまい。
 使うがいい」
竜王はザックから白金に輝く剣を取り出すとアレンへと放った。
「え?」
アレンは思わずそのプラチナソードを受け取り、呆然と竜王を見る。
「これで武器を持たぬから負けたなどという下らぬ言い訳はできんぞ」
「ま、待ってくれ! 僕はあなたとは戦いたくないんだ!!」
「力なき者の戯言など聞こえぬな」
カシィンッ
アレンの剣と竜王の剣が撃ちあい、火花を散らせる。
竜王の斬撃を受け流し、彼の背後に回るとアレンは大きく飛びずさった。
(竜王は……僕を試している)
アレンはそのことに気付く。アレンをただ殺すだけならばあの雷を撃てばいい。
アレンがただ憎いだけならば剣を渡す必要はない。

『我を従わせたいならば……力で語れ』
『力なき者の戯言など聞こえぬな』

竜王はずっとアレンに伝えてくれていたのだ。
(僕の言葉が本気なのか。僕がそれを実現できるほどの力を持っているか。
 それを竜王は確かめたいんだ。なら……僕はそれに応える!)
それはアレンの妄想かもしれない。ただ希望的な観測なのかも知れない。
しかしアレンはそれを信じた。
「解りました。竜王……僕の力を、ここに示します。
 今、全力であなたを倒す!」
「フン、来い」
アレンは青い尾を牽く彗星となって竜王に斬りかかった。

ナジミの塔の2階にククールはいた。
「やれやれ、こんなくだらないゲームに参加させられるとはついていない。
 どうやらエイトやゼシカもここにいるようだが……さて、どうしたものか」
そしてあのマルチェロもいる。
彼の上昇志向、栄光への執着はよく理解していた。
「あいつがゲームに乗るってんなら……フゥ――止めるのは俺の役目だな」
その為にはまず情報を集めないといけないだろう。
仲間、敵、そして首輪やこのゲームそのものに関して。
「まずは自分のことからだな」
そういってザックを漁ってみる。彼自身はこのゲームに乗るつもりは微塵もなかった。
見も知らぬ他人の集まりだというなら自分がどう判断するかはわからなかったが
少なくともゼシカやエイト、ついでにトロデ王を蹴落としてまで生き延びたいと思うほど
彼のプライドは安くない。
そしてザックの中から出てきたのは巨大な自動弓、ビッグボウガン。
そして馬の手綱らしき白い綱。最後はつけた者の頭脳を冴えさせるというインテリめがねだった。
「使えそうなのはこのボウガンか。苦手な武器でなくて良かった良かった、と」

ビシャァンッ!!

唐突な外での落雷にククールは塔の窓から下を見る。
そこでは魔族と思われる者と青い服の戦士が戦っていた。

なんらかの問答を繰り返した後、剣を撃ちあう。
「ふーむ……剣の腕は互角……いや、戦士のほうが上かな。だがあの魔族のほうが余裕がある。
 さっきのギガデインのような呪文があるようだし、戦士は打ち合いに付き合ってもらっている
 といったところか。これは俺の出番かな」
あの戦士が仲間になってくれれば心強いだろう。
ゲームに乗った魔族を倒し、戦士の命を救い仲間を得る。
すぐに方針を固めたククールはビッグボウガンを構え、魔族に狙いを定めた。
ククールがエイトたちとの冒険で重点的に鍛え上げたのはカリスマと杖、弓のスキル。
特に弓に関してはアローエンペラーと呼ばれるまでに達していた。
一度狙いを定めれば外す気はしない。
「喰らえ」
ククールは静かにニードルショットを放った。

すでに20合を超える斬撃の応酬がなされている。
だが互いに呼吸を荒げながらも未だに意気衰えず両者は剣を振るい続けた。

ガキィンッ

(ほう、技量そのものはアレフには及ばぬが……力と速度は奴のそれを上回っておるな。
 油断をすれば即座に押し切られてしまいそうだわ)

ガチッ、キィン!

(いける! 剣の勝負なら僕の方が上だ……剣の威力では劣るから迂闊には飛び込めないけど
 このままの剣の戦いが続けば勝てる!)

体勢を整える為にアレンが一旦、後ろへと下がったその時。
竜王の背後の塔からボウガンを構えるククールをアレンは見つけた。
そしてその矢が放たれる瞬間……アレンは何も考えずに飛び出していた。

「竜王ッ!!」
「ぬぅ!?」

不用意に飛び込んできたアレンに竜王は違和感を感じながらもすれ違いざまにその胴を薙ぐ。
そしてククールの放った矢はアレンの左肩へと突き立った。
「「な、何だと!?」」
竜王の、そしてククールの声が唱和する。
アレンは胴から鮮血を撒き散らし、地面へと倒れ落ちた。
竜王は呆然と倒れたアレンを見る。
「馬鹿な……ワシはこのような決着を望んだのではない……こんな、こんなことが」
「……う、……うう……」
「!」
アレンの呻き声を聞き、竜王はアレンの下へと駆け寄る。
「おい、生きているのか? このような所で死ぬような輩をワシは認めんぞ、おい!」
「お願いです。僕たちに力を貸してください……人と……力を……」
「貴様! さんざん好き勝手にほざいてワシの言い分を聞かぬつもりか!
 許さぬぞ、目を覚ませアレン!!」
しかしアレンはもう二度と口を開かなかった。
その体温が急速に失われていくのがわかる。

ヒュオッ パシィ!

風を切って再び飛来した矢を竜王は受け止める。
不意を討たれたならともかく攻撃の予測ができるなら矢を受け止めることなど造作もない。

「貴様ァアアア!!!」

竜王は烈火のごとく激怒し、その掌にギラの炎を集中させた。
無数のギラが収束し、上位呪文ベギラマへと変化する。
いや、それはベギラマとも呼べぬさらに強大な炎となってククールへと襲い掛かった。
「う、うお!?」
ボウガンを窓枠に固定して撃っていたため、ククールは逃げるのが遅れる。
ベギラマの炎は塔の窓枠を破壊し、その爆圧はククールを外へ放り出した。
2階という低い位置だったので何とかククールは空中で姿勢を整え、受身を取って着地する。
しかし眼前に竜王が憤怒の形相で迫ってきていた。

「く、くそっバギクロス!」
ククールは呪文を唱えるが、それよりも先に竜王が杖を取り出し振るう方が早かった。
その杖はマホトーンの力が込められたまふうじの杖。
結果ククールは呪文を封じられバギクロスは不発に終わる。
「よくもワシの決闘を邪魔してくれたものだな! 消えよ!!」
「ごはっ」
杖の一撃がククールの腹部を直撃し、ククールは血反吐を吐きながら吹き飛び気絶した。
「止めだ!」
剣を振りかぶり、その喉笛目掛け振り下ろし――肩を掴まれた気がして竜王の動きが止まる。
(何をやっている……こやつは我が決闘を穢したのだ。それこそは万死に値する罪。
 振り下ろせ! こやつを冥府へと叩き落し、己の罪を思い知らせるのだ!)
しかし竜王の腕は小刻みに震えながらも硬直したように動かない。
(殺せ! 殺すのだ!!)
必死に自らを叱咤するが竜王の腕は動かなかった。

『あなたは人間を愛した』

アレンの言葉が竜王の動きを止めていた。
しばらくそうしていた後、竜王は小さく息を吐きククールの処断を諦める。
「お前は……命を張ってワシを救った。自分の言葉をその命で証明したのだ」
竜王は剣を下げると、ザックへと仕舞った。代わりにククールから赤いマントを剥ぎ取る。
「王に歯向かう者には死を与えねばならぬ。だが、殺せぬのならそやつはもう王ではない。
 見事だアレン。お前は……見事この竜王を討ち倒したのだな」
気絶したククールを放置し、竜王はアレンの亡骸へと歩み寄る。
「しかし困ったな。ワシは今まで竜王としか名乗ってこなかった。
 真実の名が存在したはずだがそれももう忘れてしまった。これからどう名乗ったものか……」
顎に指を添えて思案に暮れる。
「おお、そうだアレンよ。お主の名を貰ってよいか」
竜王はさも名案というように小さく笑った。
「ワシの名はアレン。もはや王の中の王でもなんでもない……ただ一匹の竜、アレンだ」

――フヮサ――

アレンは友の亡骸へと赤いマントを被せた。
そしてしばらく黙祷を捧げた後彼はゆっくりと塔の中へと消えていった。
 


【E-3/ナジミの塔/午前】

【アレン(竜王)@DQ1】
[状態]:普通
[装備]:竜神王の剣 まふうじの杖
[道具]:プラチナソード ロトの盾 ラーの鏡
[思考]:この儀式を阻止する アレンの遺志を継ぐ

【E-3/平原/午前】

【ククール@DQ8】
[状態]:HP1/2 気絶 マホトン
[装備]:ビッグボウガン(矢 18)
[道具]:インテリめがね 天馬の手綱
[思考]:マルチェロを止める

※サマルトリア王女リアはレーベの方角へ飛んだため、竜王たちに気付いていません。
 また塔の頂上にいたため、戦闘の音にも気づいていません。

【アレン@DQ2ローレシア王子 死亡】
【残り35人】


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