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双竜激突――そして

双竜激突――そして


登場人物
ヒミコ(DQ3)、サマンサ(DQ3)、ローラ(DQ1)、ゴン(DQ1)、テリー(DQ6)


「ふふ、これで二人きりじゃのう」
楽しげに笑うヒミコの声にサマンサはうんざりと溜息をついた。
「いいでしょう、前と同じように焼き尽くして差し上げます」
そう言ってサマンサが手を掲げるとそこに赤光が生まれる。
それを見てヒミコもニヤリ、と哂った。
「ほう、それはこういう風にかえ?」
「!?」

ぼごりっ

ヒミコの左肩が異常に隆起したかと思うと竜の頭が飛び出てきた。
その顎から灼熱が漏れ出る。
その動作は――サマンサが呪文を唱えるより早かった。
轟、と空気を焼いて一直線に火線が伸びる。
「クッ、メラミ!!」
なんとか呪文の詠唱が間に合い、迫る炎に火球をぶつけ防御する。
空間が爆裂し、吹き荒れる熱風からサマンサは身を護るように身体を竦めた。
その瞬間、爆煙の中から竜の頭が現れパクリ、と口を裂いた。
「しま――」
避ける間もなくサマンサは竜の牙によって右肩の肉を喰い千切られてしまう。
「ぁあああああ!!」
鮮血が舞い、サマンサは地面を転げまわる。
煙が晴れ、ヒミコがその姿を現した。
既に両の肩から竜を具現させ、ニヤニヤとのたうつサマンサを見ている。
「クックック、美味じゃ。わらわの飢えた心がそなたの血によって満たされていくのが判るぞ……。
 だが足りぬ。次は……その白い手足のどれかを頂こうかのう!?」
双頭の竜が高速でサマンサに迫る。そしてヒミコの両腕もまた竜の頭へと変化し、合わせて四つの首が
連なり襲い掛かった。
サマンサは激痛を堪え、なんとか一頭目、二頭目の竜を回避するが、三頭目の竜に撥ね飛ばされ宙を舞う。
「そなたの弱点はその身の脆弱さよ! 遠方からの呪文は強力なれど接近戦においては無力。
 あのでいじーとか申す女戦士やありすの援護がなければわらわに抗すること敵わぬわ!」
地面に叩きつけられたサマンサを最後四頭目の竜が襲う。

そしてその白い右腕を銜えようとした瞬間、サマンサの姿が忽然と消え去り、空振りした。
「何?」
姿を消す呪文、レムオル。攻撃を回避しながらもサマンサはこの呪文を唱えていた。
消えている間は他の呪文を唱えることはできないが完全に近い隠密行動が可能になる。
「ふん、姿を消して呪文を唱えられる場まで逃げるつもりか、だが……無駄じゃ」
ヒミコの首が竜へと変化していき、その身体もまた巨大化し鱗に包まれる。
5つの首を持つ巨竜、やまたのおろちへと完全に変化すると、大きく息を吸い込んだ。
煉獄の炎が5つの首から全方位に放射され周囲一体を焦がす。
レムオルは姿が見えなくなるだけでその存在を消してしまうわけではない。
当然のこと炎の影響を受けることになる。
「きゃああ!」
虱潰しに巻かれた炎によってサマンサは燻りだされてしまう。
レムオルの効果が解け、サマンサの姿が現出する。
「そこじゃ!」
5つの首がサマンサに肉薄する。
しかしサマンサはヒミコが自分を補足し、迫るまでの僅かな時間に次の呪文を完成させていた。
「マヒャド!」
「ぐぬ!?」
広範囲に放射された冷波は一帯の炎を鎮火させ、おろちの足を止めた。
そしてさらにサマンサは呪文を唱える。
(今の私ではやはりやまたのおろちを相手に勝つことは出来ない。
 姿が醜くなるので敬遠してきましたが……仕方がない!)
「ドラゴラム!」
「なんじゃと!?」
サマンサが唱えたのは竜化の呪文。
その身体は光の粒子となって分解し、更に別の姿へと再構成されていく。
「おのれ!」
おろちはその光のシルエットに向かって激しい炎を浴びせかけるが、
そのシルエットもまた炎を吐き出し、中空で火炎がぶつかりあった。
相殺され、炎が弾け散る。
その向こうにおろちが見たものは……自身と同等の巨体を持った一匹のドラゴンだった。
「それでわらわと互角になったつもりかえ?」

「少なくともこれで倒せなければ私に手段は残されていないでしょうね。
 まぁお付き合いください」
「短い付き合いになるがな!」
「奇遇ですね、私もそのつもりです!」
おろちは身体を捻るとその長い尾を遠心力と共にサマンサに向けて繰り出した!
高速で打ち込まれた尻尾をサマンサはその顎で咥え受け止めると、思いきり首を振って投げ飛ばす!
「おおお!?」
その巨体が成す術も無く宙を舞い、側にあった巨岩を砕きつつ地面に叩きつけられる。
「ゴハァッ」
とどめを刺すべくサマンサは駆け、その鋭き爪を叩き込もうとした時。
その巨体に見合わぬ素早さで身を起こしたおろちの首の一つがその爪を牙で受け止める。
そして残り4つの牙がサマンサの鱗を引き裂いた。
「がぁあああ!」
激痛に吼えたところを痛烈な尾の一撃で吹っ飛ばされる。
ゴロゴロと転がり、身を立て直したところに火炎が浴びせかけられた。
肉の焦げる臭いが鼻腔を突くが、サマンサは痛みに構わず炎の中を突き進んだ。
まさに肉弾となっておろちの腹部に体当たりを食らわせる。
「ゲボォ」
火炎の代わりに輝く粘液を五つの口から吐き出し、おろちは膝を突く。

そして、それからもまた互いの爪が、牙が、尾が、炎が、互いの肉を裂き、喰い千切り、打ち、焼いた。

血みどろの凄惨な戦いを制したのは……やまたのおろちだった。
五つの首からなる多角的な攻撃にサマンサは対抗しきれず、ついに押し切られその巨体を地に伏せた。
弱弱しい光がその身を包み――サマンサは竜身から満身創痍の人身へと戻る。
「ふ、ふふ、カァ、クハハ……随分と、手こずらせてくれたのう……さすが、と言うべきであろうな?」
おろちもまた全身に裂傷が疾り、紫の血をダラダラと流している。
「む?」
見ると、全身を痙攣させながらもサマンサはゆっくりと立ち上がろうとしていた。
手には一つのザックを携えている。
「…わ、たしは……使命を果たすため、に……ここで無駄に……死ぬ、わけには……」
「命乞いかえ? ククク、よいぞ。よいぞよいぞよいぞよいぞよいぞよいぞ!!!」

おろちは高く哄笑すると尾を振り回し、サマンサを撥ねる。
それと共に手に持っていたザックの中身が散らばった。
それはサマンサが殺害したマリベルに支給されたザックだった。
通常の配給品以外にザックに入っていたのは三つ。面、杖、石だった。
「実に、実に心地よい。そなた等のその姿を眺める為にわらわはここにいるのじゃ。
 さぁ、もっと泣き叫べ。命乞いをしろ。地べたに額を擦りつけよ! わらわの気が変わるやも知れぬぞ!!」
愉悦の笑みを浮かべながらおろちは一歩一歩ゆっくりと地に倒れたサマンサに近付いていく。
「ん?」
その時、おろちの視界の端に先程ザックから零れた面が映る。
鬼を象った面、般若の面だ。
「ほう、中々面白いものを持っておるな」
ほんの僅かな間……おろちの興味はサマンサから般若の面へと移った。

朦朧とした意識の中、それでもサマンサは必死に現状を打破する策を考えている。
例え相打とうともアリスの障害となる輩は討ち果たすつもりだった。
(でも、それでこの様……私は盾となることもできない)
それなりの痛手も与えたが、あの様子では大したこともあるまい。

無駄死にだ。

あれだけの決意も、あの自分が奪った少女の命も……意味が無くなる。
あの娘の……アリスの命を護る、ただそれだけの為に戦った。
それらは全て無意味となる。

許容、できない。

それだけは絶対にあってはならない。自分は無駄死にが許される立場ではない。
ならばどうするのか。戦えば死、命乞いをしても死、逃走しても死。
死、死、死。どの道を選んでも未来には死が溢れている。
たった一つを除いて。

何度、思索を繰り返しても自分が生き延びる道はそれしか思い浮かばない。
しかしこれは賭けになる。
自分の危地が救われても、アリスに窮地をもたらすかもしれない。
(それでも、もう私にはそれしか手が残されていないのですね)

サマンサは目の前に落ちている杖を手に取り、握り締めた。

おろちは般若の面を拾い上げている所だ。
そしてそこで身を起こしたサマンサに気付いたようだ。
口を裂き、牙を見せながら哂う。
「しぶといのう、それでこそ、それでこそよ。さぁ命乞いの言葉は考えたかの?」
「何、か……勘違いして、いるようですね……。あなたに乞うものなど、塵芥一つとして、存在しないのですけれど」
「ほう、ほう、まだ吼えよるか。腕の一本も喰らえばその考えは……変わるかのう!?」
竜の首の一本が高速でサマンサへと迫り来る。
その牙は正確にサマンサの左腕を捕らえていた――が。
「その面は餞別に差し上げましょう」
サマンサが杖を振るう。
杖から放たれた光弾はカウンター気味に迫る竜の鼻先に命中。

そして――おろちは消失した。

おろちの姿と気配が完全に消えたことを確認して、サマンサはガックリとひざを落とした。
「情けない……天運に行く末を任せるとは……なんと」
サマンサが手にしている杖。その名をバシルーラの杖という。
名の通り、対象を何処かへと転移させるバシルーラの呪文が込められた杖だ。
これでやまたのおろちはこの大陸の何処かへと転移したはず。
サマンサの窮地はこれで去ったことになる。
「願わくば……アリスからは離れた位置に飛んでほしいものですね」
杖を支えによろよろと歩き、サマンサはザックから零れたもう一つのアイテムを拾う。
事前に読んでいた説明書によると奇跡の石という治癒効果をもたらす道具だ。
石を手にし、念を込めることで僅かだが活力が流れ込んでくるのがわかる。
(それでも、微々たるものですね。今しばらくは動けませんか)

適当な木を背にして休もうとしたその時、声が聞こえてきた。

「本当にこの辺りですの?」
「ああ、確かにこっちの方向から同族の気配がしていた。匂いも残ってる」

木陰からチラリと声の方を見ると、お嬢様然とした女性と一匹のドラゴンがいた。
(さて、どうしたものですかね。あのドラゴン、人間と一緒にいるということは好戦的ではないと
 見受けられますが……もし双方共に『乗っていた』場合、うかつな接触は死を招きます)
今の自分の状態では慎重な行動にならざるを得ない。
しかしこのままでは見つかってしまいそうだ。
動くべきか、動かざるべきか。

その時、視界がグラリと揺れた。

(え―――?)
眩暈がしたかと思うと地面がどんどん迫ってくる。
衝撃と共にサマンサは自分が倒れたことを悟った。
(しまった……血を、失いすぎましたか……このままでは)

「きゃあ!? ゴンさん、この方凄い怪我ですわ!」
「おい、放っておけ! ……チ、面倒な」

駆け寄ってくる足音を聞いたのを最後に、サマンサの意識はすっと薄れていった。
(……アリス、あなたは……生きなさい……)

「ガァ!?」
完全に補足していたはずのサマンサが忽然と消え、彼女の腕を食い千切る筈だった牙は盛大に空振りした。
「なんじゃ? またレムオルか?」
消えたサマンサを探そうと周囲を見渡し、少しおろちは混乱する。
先程の森林とは全く場所が違う。

城のそびえる町の門、それもどうやら裏門の辺りに自分はいるらしい。
しばらく周囲を観察し、ようやくおろちは自分が転移したことを悟った。
「あの杖の力か。おのれ……今一歩のところで食い逃してしもうた。
 こうなら嬲るのではなかったわ。ええい、口惜しい!」
吐き捨て、おろちはその姿を人身ヒミコへと変える。
一息つき、とりあえず町に入るかと門に足を向けたとき、一つの視線に気付いた。
青いニット帽を被った青年が門の脇に立ち尽くし、こちらを見ている。
「そなた……見たのか」
「ああ、どうやらそのようだ」
ヒミコは考える。
この青年、腰に下げた剣、また物腰からしてかなり出来ると見た。
アリス達を喰らわぬうちは面倒ごとは避けたい。

「わらわの本当の姿を見た者はここではそなただけじゃ。
 黙っておとなしくしている限りそなたを殺しはせぬ。それでよいな?」

青年は答えない。
無駄か、と悟りヒミコが再びやまたのおろちへと変化しようとした時、青年は口を開いた。
「あんた、ゲームに乗っているのか」
「む?」
ヒミコは竜化を止め、青年を注視した。
「何故、そのようなことを問う?」
「答えてくれ」
ふむ、と頷きヒミコは考える。この青年に興味が出てきた。
少し付き合ってみることにする。
「乗っている、おらぬの二択ならばわらわは乗っておらぬ、ということになるであろ。
 しかしそれはわらわが今、別の目的を遂行しておるからであるからして、その後は……
 さあ、どうするかの」
「目的?」
「わらわの命を奪いおった三人の娘を生きたまま喰らうことよ。
 アリス、フィオ、サマンサ。心当たりは居らぬかえ?」
青年、テリーはゆっくりと首を横に振る。

「そうか、まあよいわ。それで今度はわらわが問おう。
 おぬしは何ゆえそのように問いかける? しかも化け物たるわらわにのう。
 おぬしの目的はなんじゃ?」
「俺は……姉さんを生き残らせたいと思っていた。その為にゲームに乗った。
 だけど俺は、殺せなかったんだ。何度も、誰と会っても俺は殺せなかった」
ヒミコは黙って聞く。
テリーもヒミコが聞いているかどうかはもう関係ないかのように告白を続ける。
「そして、姉さんの死を知った。その仇とも相対した。
 憎しみのままに剣を取り……そして俺は……殺せなかったんだ」
拳を握り締め、テリーは涙を零す。
「姉さんを殺した奴を俺は殺せなかった! 憎くて、憎くて堪らないのに殺せなかったんだ!
 姉さんが……止めるんだ。俺を、俺の殺意を止めてしまう」
テリーは己を抱きかかえ、震える身体を押さえつける。
「俺は姉さんを生き返らせるためにゲームに乗らなくちゃならない。殺さなくちゃならない。
 でも姉さんが耳元で囁くんだ。そんなことは止めてって……殺さないでって!」
「なるほどのう……二律背反、姉の意志と己の意志が反していることに苦しんでおるというわけか」
「俺は姉さんに生きていて欲しいんだ! でも、どうすればいいのかわからない。
 だから、城を出て……最初にあった奴に聞いてみようと思った。
 そんなことくらいしか思いつけなかった。それが、あんただ」
テリーはヒミコを見つめる。
随分と思いつめた、切羽詰った顔を見てヒミコはニヤリと哂う。
大声で哂いだしたかったがそれはかろうじて堪えた。
「よい物をやろう」
ヒミコは懐から一つの面を取り出す。手に入れたばかりの、般若の面。
「これは……」
「察したか。その通り、これは呪いの面。だがこの面の呪いはおぬしの迷いを消してくれるだろうよ。
 それどころかおぬしの望みを叶える為に大きな力となろうよ。さ、受け取れ」
般若の面を受け取り、テリーはじっとその面を見つめる。
「被るかどうかはおぬしに任せよう。そなたは面白い男であった。
 ささやかな一興となったわ」
そう言い残してヒミコは町の中へと入っていった。
振り向きもせずテリーはじっと面を見つめたままその場に立ち尽くしていた。

「さて、あの者どうするかの?」
門に入り、一人ごちてみる。
青年の気配を伺いながらしばらくじっと待ってみた。
そして…… 一つの雄叫びと黒い波動が門の外ではじける。
ヒミコが再び門の外に出ると青年は北に向かって走り去るところだった。
青年の周囲には黒い靄のようなオーラが纏わりついている。
般若の面を被ったことによる影響であった。
あの黒いオーラがあらゆる防壁となって青年を攻撃から護るだろう。
そしてその殺意のまま殺戮を繰り返すはずだ。
クク、と哂いを噛み殺しながらヒミコはゆっくりとテリーの後を歩き始めた。
「傷を癒すのに二、三人喰らいたかったところであるが、思いもよらぬところで
 思わぬ手駒が手に入ったものよ。これで労せずして栄養にありつけそうであるな」
ヒミコは気取られぬよう後を追い、テリーが斬った者たちを喰らうつもりであった。
また見境のなくなったテリーがアリス達を殺してしまわないように監督する意味もある。
そして何よりもヒミコがこのようなことをする訳は……。

そのほうが面白いから。

急ぐことはない。
あの面の邪気は同じく邪悪なる眷属たるヒミコにとっては大分遠くからでも感じ取れる。
戦いの気配も知れる。ゆっくりと後を付いていけばいいのだ。

気まぐれな竜の巫女は薄く笑みを浮かべ、ゆっくりと歩いていく。

――日は、落ちようとしていた。


【B-4/森林地帯/夕方(放送直前)】

【サマンサ@DQ3女魔法使い】
[状態]:気絶 HP1/8 MP1/5 全身に裂傷 貧血
[装備]:バシルーラの杖(5) 奇跡の石
[道具]:支給品一式 鉄兜
[思考]:勇者の血を守る

【ローラ@DQ1】
[状態]:健康
[装備]:光のドレス
[道具]:ロトの剣 支給品一式
[思考]:目の前の女性を介抱する アレフを探す ゲームを脱出する

【ゴン@DQ1ドラゴン】
[状態]:左肩に銃創(浅い)
[装備]:メガンテの腕輪
[道具]:支給品一式(不明アイテム一つ所持)
[思考]:ローラを竜王の所に連れて行く それまでは護る

【E-4/アリアハン城下町、裏門の外→北へ/夕方(放送直前)】

【ヒミコ@DQ3】
[状態]:HP3/5 疲労
[装備]:なし
[道具]:きえさりそう ホットストーン
[思考]:テリーの後を追う 幾人か喰らい傷を癒す サマンサ、アリス、フィオを喰らう

【テリー@DQ6】
[状態]:呪いの効果により防御力が大幅に上昇
[装備]:さざなみの剣 般若の面
[道具]:ボウガン(鉄の矢×30)  イーグルダガー
[思考]:殺戮


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