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太陽のように

太陽のように


登場人物
アレン(竜王)(DQ1)、トルネコ(DQ4)、ローラ(DQ1)


 できることをやろう。
 竜王アレンに諭された商人トルネコの目には、今までとは異なる、決意の光が宿っていた。
 とはいえ。
 散らばった仲間達の「帰る場所」であるために、居残るべきとは重々理解していれど、
 いかんせん、ただ黙って座っているだけ……というのは、なんと居心地の悪い話でもあった。

 トルネコは好奇心が旺盛な人間である。
 貯蓄したゴールドを一ゴールドたりとも魔物から奪われないようにできる鉄の金庫があると聞けば
 大岩の転がる危険な洞窟へも平然と飛び込んで行ったし、
 高値で売れる女神像があると聞けば、水の流れる洞窟を筏一つで攻略してみたりもした。
 「未知のダンジョン」「未知のお宝」があれば、動かずにはいられない。
 そんなトルネコにとって、ただ待つだけという時間は、無駄な時間にさえ思えるものだった。

 アレンの負傷は軽いものではなく、放送後は自らの回復呪文による治療を続けていた。
 そんな状況で悪いと思いつつも、ファルシオンの火傷の治療も頼んであった。
 手負いの二人を見張りに、自分だけ眠ってしまうというのはいくらなんでも情けない。
 かといって、このまま何もしないというのも落ち着かない。
 ならば今の自分にできることは何か。暫し考えた末に、一つの案にたどり着く。
 それは現状の把握。そして「帰る」為の推理。落ち着いた今だからこそ、できることであった。

 ばさばさと、ザックの中身をぶちまける。
 突然の奇行を怪訝そうに見つめるアレンには引き続き回復を促し、トルネコはメモと鉛筆を取り出した。
 鉛筆を握ったところで、アレンもしようとしていることを察したようで、再び回復に集中しはじめた。
 
 
 元々、トルネコは頭脳労働が得意だった。
 武器屋としての道具知識に始まり、かつての道中では、最年長のブライと参謀役を二分することもあった。
 戦闘こそライアンやアリーナのような屈強な戦士に譲ったが、その分頭脳で仲間を支えてきた自負があった。
 思えばあの頃から、仲間のためにできることを必死に手探りで考え、実践していたような気がする。
 ふっと笑みがこぼれる。何だ、ならば状況は今までとあまり変わっていないではないか。
 改めて、そのことを思い出させてくれたアレンに感謝したかった。

(さて、まず整理すべきは、放送からでしょうか)
 唯一のハーゴン側からの情報提供である、半日に一度行われる定時放送。
 今まで二度行われたそれからは、普通に聞く限りでは死亡者と禁止エリアの通達以外に情報は得られない。
 しかしトルネコはそれ以外にも、情報を手に入れることに成功していた。
 それは声だ。
 一度目は、低く冷淡な印象を受けた男の声。あれは確か、ルール説明をした神官と同じものだった。
 対して先ほどの二度目は、ハスキーでおしゃべり――無駄口が多いともいう――な女の声。
 これにより少なくとも、ハーゴンには二人以上の側近がいることが分かった。
 ルール説明や放送を任せる以上、それなりに地位を任されている者と見て間違いないだろう。

 しかし、ハーゴンに仕える魔物たちはそれだけではないだろう。
 次にトルネコは、自身がされているだろうと推理した「盗聴」を管理する人件の予測をはじめた。
 一つの首輪につき一匹の魔物が担当していると仮定すると、最大で四十三匹。
 参加者の会話を管理する役割ともなれば、人間の言葉を理解できる、やはりそれなりに頭のいい魔物であると考えられる。
 そこに更に自らこの地に降り立ち、殺戮を行ったあの三匹の魔物を加えると――その数は約五十匹。
 あの三匹こそ撃破したとはいえ、いまだ相当数の魔物が、この惨劇に加担している事になる。
 かつてのピサロの城「デスパレス」が生温く見えるような数字に、トルネコは戦慄を隠せなかった。

 ここから脱出するにあたって最も重要なのは、ハーゴン側の戦力だとトルネコは分析していた。
 もしその戦力が僅かであれば、打倒せずとも脱出(逃走という表現が正しいが)できる可能性が生まれ
 逆にその戦力が強大なものであれば、打倒する以外に脱出の可能性を見出すのは難しくなるからだ。
 
(ですが今のところは、ハーゴンの打倒の他に、脱出の術は無いと見るべきでしょうな)
 少なくとも異国・異世界の人間たちを一同に集わせるほどの力を持つものが相手だ。
 万に一つ逃げ出す事が出来たとしても、ハーゴンが存命である限り、その脅威は消える事はない。
 いつか再び、この地に呼び戻されるかもしれない。
 次こそは、ネネやポポロにも、危害が及ぶかもしれない。
 それだけは、絶対に避けなければならなかった。

 すらすらと支給されたメモに考えをまとめながら、気付く。
 このままではこのメモだけでは足りなくなるかもしれないと。
 やむなくトルネコは宿屋のカウンターから宿帳を拝借し、そこに改めて考えをまとめることにした。

(気を取り直して……今一度禁止エリアも見直してみますか)
 地図を開く。
 それは放送内容が反映され、一部エリアに時刻と斜線が引かれていた。
 ちなみに一度目の放送でトルネコ自身が情報を記した地図は。クリフトに奪取され手元にないため
 トルネコはアレンの地図を借り、それに禁止エリアを記述している。

 一度目の放送で禁止エリアとして潰されたのは、外海であったり、人の寄りにくい山地であったり
 あまり自分たちにとって影響が無い地区であったために、深く考えることはなかった。
 しかし先の二度目の放送では、一転して拠点「レーベの村」が封鎖されようとしていた。
 更によく見直せば、加えて東の祠や洞窟に繋がる道も大きく規制される予定であるようだった。
 当然、もしその周辺に生存者がいたとすれれば、大きな影響を及ぼすだろう。
 D−5の規制に至っては、下手をすれば生存者がその地区に取り残されかねない。
 ――これが何を意味するのか。名簿と睨めっこしながら、トルネコは一つの結論を出した。

(やはり、アリアハンへの誘導というのが一番可能性が高そうですね)
 今度は名簿を開く。
 線の引かれていない僅か十二名の生存者に、ざっと目を通す。
 
 生存者のうち、既にアリアハン周辺にいるのがトルネコとアレンを含めて七名。
 またピサロも最後の連絡状況からしてアリアハン寄りにいる可能性は高く、加えれば八名。
 なるほどアリアハンを封鎖しこの八名を散らすよりは、残る者をアリアハンに集わせるほうが手早いか。
 もっともそれは、裏を返せば「アリアハンから逃がさない」という意味にも取れるのだが、
 ともかく人が多く集まるほど、人々に火種が生まれるという事をハーゴンたちはよく分かっているようだった。

(ローラ姫はアレンさんとアレフさんの知り合いとして、残る三人が果たしてどういった方々なのか)
 名簿ではエイト、マルチェロ、フォズと記された三人。写真を見る限りはどれも無害そうに見えるが
 彼らがどういった経緯でこの地で一日を過ごしてきたかは分からない以上、油断はできない。
 近いうちに遭遇する事もあるだろうが、警戒するに越した事はないように思えた。

(それにしても、これではまるで私たちの位置を元に禁止エリアを決めているような……まさか)
 浮かんだ一つの可能性。
 もし「盗聴」だけでなく「監視」もされているとしたら?
 脱出に足掻く生存者を、ほくそ笑みながら見下ろしているとしたら?
 アリアハンへの道中、秘密裏に行ってきた筆談も全て看過し、あえて泳がせているのだとしたら。
 その時は、文字通りお手上げである。
 我々が希望に満ちて首輪を外す瞬間にでも、笑いながら起爆スイッチを押すだろう。
 あるいは自分たちの推測が見当違いの方向に行っているのかもしれない。
 こちらは否定できなかった。だが違うかもしれないといって、それを諦める理由にはならない。

(どの道動かなければ何も変わりません。ならばひたすらに、足掻いてみるまでですな)
 最悪の想定は、するだけ無駄。トルネコはそう結論した。

 放送から得られた情報を一通りまとめ終えたところで、ひとまず一息つくことにした。
 ザックから支給されていたパンを取り出し、齧る。――少しだけ、ネネの弁当が恋しくなった。
 
 
 ○
 
 
「もう、大丈夫なんですか?」
「いつまでも泣き言は言ってられんからな。それに、ファルシオンも治療してやらねば」
「私が僧侶であれば、あなた一人に負担をかけることにはならなかったでしょうが」
「構わぬ。おぬしだからこそ出来ることもあると、先に言ったばかりではないか。
 ……では少し、表に出てくる。話はその後だな」
「分かりました。ファルシオンをお願いします」

 簡単な治療を済ませたアレンを見送り、トルネコもパンの最後の一切れを口に放り込む。
 栄養が補給されたところで再び宿帳のページをめくり、思考を再開することにする。

(次に考えるべきは、やはりこの首輪を外す方法ですね)
 首筋に手を伸ばせば、冷たい感触が伝えられた。
 ハーゴンを倒すためにも、この世界から脱出するためにも、まずこの首輪を何とかしなければならない。
 夜の森で筆談した内容を思い出しながら、文字を走らせる。

(首輪にかけられた強力な呪詛を解くには、『聖なる光』が必要……)
 ザックから放り出した、もう主のいない――元々はビアンカかバズズのどちらかの――首輪を手に取る。
 あの時見た、ラーの鏡の力で具現化した禍々しい呪詛。あれは生半可な光では取り除けそうもなかった。
 言った自分でさえ、そんな光が本当に存在するのかとさえ思うほどに。

 それでもアトラスとの戦中にて、トルネコは一つの可能性を見出していた。
 それは、デインの光。
 選ばれし者のみが使える聖なる雷であれば、あの呪詛を除去できるかもしれない。
 使い手である天空の勇者はいなかったが、アレンらがあの剣をかざした時に放たれた雷。
 あれはまごうことなきギガデインであったように見えた。ならばあれを、呪詛にぶつければ、と。

(しかし、これには致命的な問題があります)
 それは、外すべき首輪は人体につけられているということ。
 取り外された首輪の呪詛であれば、いくらでもギガデインの直撃を浴びせる事もできるだろう。
 しかし人体につけられた首輪の呪詛を取り除くとなれば、そうもいかない。

 ラーの鏡で具現化した呪詛は、首輪の主のすぐ側にあるはずだった。
 それにギガデインの直撃を与えれば、当然、首輪の主もひとたまりもない。
 失敗すると首輪が爆発するとか、そういう以前の問題だった。
 呪詛を取り除くための聖なる光は、人体には無害なものでなければならないと考えられた。

(聖なる光だけを、確実に放てるような道具……何があるでしょうか)
 ぱっと思い立ったのが、太陽の光。日光といえば、闇を振り払う象徴と言ってもよいものだ。
 しかし、トルネコはすぐに否定する。
 ただの日光に当てたところで、あの強烈な呪詛に効果があるとは思えない。
 そんな甘っちょろい細工で外せるなら、はじめからこの首輪には何の拘束力もないだろう。

 ならラーの鏡で日光を受け、呪詛をピンポイントに狙ってみてはどうだろう?
 いや、それもダメだ。
 反射すればそれだけ密度の濃い光は生まれるだろう、しかしその分温度も膨大だ。
 呪詛を祓う前に、体が焼き払われてしまうだろう。ギガデインと同じ結論だった。
 太陽のように光を放つ道具があればあるいはといったところだが、それは森で否定されたばかりだ。

 ――結局、森での筆談から進歩がないではないか。
 ぐしぐしと頭をかき、トルネコは独りごちる。やはり独りではこれが限界なのだろうか。
 気分転換にと、首を回してみる。目に付いたのは、先ほど拾った錬金釜だった。
 それとなく拾い上げ、商人独特の手つきで調べてみる。

(「錬金」という響きからみるに、複数の道具から、新たな道具を生成する道具……ですかね)
 壺のような形状からして、中に道具を放り込めばよいのだろうか。
 ためしに聖なるナイフとプラチナソードを入れてみれば、しばしごとごと動いた後、ぽんと排出された。
 突然飛び出した刃物に、中を覗こうとしなくて良かったと肝を冷やしながらも、分析を続ける。
 どうやら組み合わせは決まっているらしい。正しくない組み合わせでは、釜に拒否されてしまうようだ。
 正しい組み合わせを見つけた場合のみ作動し、新たな道具となって出てくるという仕組みだろう。
 
 
 なるほど調べれば調べるほど不思議な仕組みで、探究心を煽る道具だった。
 詳しい使い方をトロデから聞いていなかったのが悔やまれる一方で、疑問も沸く。
 何故こんな地で、こんな使い方の限られる道具が支給されたのだろうか?

(……ふむ。これも何かのヒントなのかもしれません)
 もしこの錬金釜によって、支給品から何か新しい道具を生み出せるようになっているとしたら。
 もしかしたら、聖なる光を放てる道具が作れる可能性もあるのではないだろうか。
 もちろん、可能性は低いだろう。
 ハーゴンが、わざわざそんな『抜け道』を用意しているかどうかも疑わしい。
 だが絶対にない、とも言い切れないのではないように思えた。

(例えば、『光を放つ道具』と『光を持つ道具』の二つを――)
 この二つを錬金釜に入れてみれば、強力な光を放つ道具が出来上がったりしないだろうか。
 ――ぞくぞくと、好奇心がくすぐられるのが分かった。
 冒険に出かける直前のようなわくわくする感覚が、トルネコの全身を駆け巡る。
 今のところ、手元にそれらしい道具はない。
 だが人が集えば、本当にそれらの道具を持つものが現れるかもしれない。
 あるいは本当に、聖なる光を生み出す事もできるかもしれない。

 錬金釜の可能性を、しっかりと宿帳に書き記しておく。
 もし今後自分やトロデに何かあったとしても、仲間たちへと繋ぐ事ができるように。

(さてと。自分ひとりで考えられるのは、このあたりが限界でしょうか)
 大きく息を吐いて、ぱたんと宿帳を閉じる。
 本当はもう一つ、「ハーゴンが一体どこにいるのか」という問題があった。
 これについては、以前リアから聞いた「ハーゴンは幻術が得意だ」という話から推測する限り
 ハーゴンと同じ世界から呼び出された者達――今となってはマリア一人だが――から話を聞かない事には
 トルネコ一人では分かりそうもなかったため、深く考えることはしなかった。
 
 
 
(後は皆が無事に集ってから、もう一度話をしてみることにしましょう)
 ほんのわずかではあるが、進展したような感覚にトルネコは満足していた。
 窓から射し込む朝の日差しは暖かく、充足した気持ちも相俟って、実に心地よいものだった。
 
 
 ○
 
 
 独り平原を歩むラダトーム王女ローラが、流れた放送にて最も身を案じたのは
 大切な思い人のことでも、大好きな竜の仕えた竜の王のことでもなく
 目の前で川に流された、バンダナを巻いたとあるお国の兵士長のことだった。

 祈るように聞いた十三名の死亡者の中に、エイトの名前が無かった事に涙を流して喜び
 そしてサマンサとドラゴンの名前があったことに、少しだけ消沈する。

 戦に疎い自分でも、レーベの村でゴンを惑わせた犯人がサマンサであることは理解していた。
 つまり彼女がゴンの死の原因を作ったと言っても過言ではなく、恨みがないといえば嘘になった。
 一方で、こうも思う。彼女も彼女なりに、やらなければいけないことがあったんだろうと。
 そうでなければ、共に歩いた道中、あんな悲しい目をしていたことに説明がつかない。
 できることならもう一度、会って話をしたいとローラは考えていた。
 恨み辛みをぶつけるためではなく、彼女をもっと分かりたかったから。
 それが叶う事はなくなってしまったこと。それがただ、残念だった。

(……あっちでゴンさんと、ケンカしてたりしないでしょうか)
 せめて現世でのいがみ合いは忘れ、仲良くしていてくれればいいのだが。
 ローラはささやかな祈りを捧げ、追悼の代わりとした。
 
 
 ローラは川沿いを進んでいた。
 アリアハンに向かうためには、そうしていてはやや遠回りになる。
 でももしかしたら、岸にエイトが流れ着いているのではないか、という期待が捨てきれなかったからだ。

 結局、城下町が見えるようになっても、エイトを見つけることは叶わなかった。
 生きているという希望のお陰で悲しみは振り払えたが、とにかく心配だった。
 きっと反対側、あの塔の在る小島の方に流れ着いたのだろう。――未だ溺れているとは考えたくもない。
 ならば泳いで向こう岸へ、というわけにも当然いかない。今はただ、彼の身を案ずるしかなかった。

 暫く小島を見つめた後、ローラはそれに背を向けた。
 別れた時に、強くなると決めたのだ。それはエイトが生きていると分かった今も変わらない。
 むしろ再会したときに安心させてあげたいという気持ちのお陰で、その想いがかえって強まっていた。

 今は独りでも、城下町へと向かおう。決意の目を持って、ローラは歩き出した。
 どこからともなく吹いた一陣の風が、歩み始めた彼女の背中を優しく撫でる。
 ローラにはそれがまるで、誰かがその背を押してくれたように感じられた。
 ――杖を持つ右手が妙に軽かったのも、きっとそのせいだったのだろう。
 
 
 ○
 
 
 元気になったぞ、とでも言いたいのか。
 繋がれたままにぱかぱかと足踏みの真似をするファルシオンを認め、竜王アレンはぐいと背伸びする。
 目に入ってきた日差し眩しくて、思わず目を細める。
 だがそれは、とても美しかった。
 とてもいくつもの悪夢が、そして惨劇が行われてきた地に登るものとは思えないほどに。

「闇に生きた者にも、太陽の光は平等に注がれるか」
 光を忌み嫌い、闇を牙城として地下に潜んできた竜王としての日々。
 その頃は太陽など、ただの敵でしかなかった。むしろ人々から奪いたい、象徴そのものであった。
 事実かつての魔王は人々から太陽の光を奪い、アレフガルドに永遠の闇をもたらせたこともあると言う。
 闇を好む魔の王が、この光を心地よいと感じる事は、本来考えられないことに思われた。
 
 
 だが、悪くなかった。
 太陽を肯定できるようになったのも、取り巻く環境や、あるいは考え方の変化が理由だろうか。
 それとも竜の一族が、かつては光の玉を生み出す光の種族であったことに起因するのだろうか。
 真相は分からない。アレンに分かる事は、太陽が美しく、暖かいものだということだけだった。

「アレフよ、何故戻らぬ」
 ふと、光の血筋を継ぐ、因縁の男のことを考える。
 放送によってアレフがアトラスの追撃を果たし、勝利した事は分かっていた。
 その事実にどこかで安堵していた自分がいたことも、渋々ながら認めてやったというのに。

(負傷したか、それとも)
 新たな戦乱に巻き込まれ、未だ引くとも出来ぬ状況に陥っているか。
 なまじ一度出会い共闘を果たしていただけに、この情報の欠落が歯がゆかった。
 いっそ今から援軍へ向かおうと思っては、先のトルネコに自分の告げたことを思い出して留まる。
 何度と無く一歩を踏み出しては留まるその姿は、はたから見れば滑稽なものに映ったかもしれない。

(……中に戻るか)
 「自分たちは居場所であるべきだ」と述べた矢先に、うろたえていてはトルネコに示しがつかない。
 苛立ちを押し殺し宿屋へと戻ろうとしたアレンは、一陣の風の流れに乗った、懐かしい匂いを捕らえた。
 反射的に振り返った彼は、城下の入口に佇む一つの人影に、その目を釘付けにする。

 それは光だった。おぼろげでも、見間違えようがなかった。
 それはいつも、暗黒の心の中で場違いに輝く、太陽のような存在だったから。

「……ローラ?」
 その名を呟けば、無意識のうちに足が動いていた。
 まるで誘われるように、アレンは光の射す方へと進んでいた。
 
 
 その光は、アレンにとってあまりに眩し過ぎた。
 だからだろう。大通りに潜む闇の狩猟者には、未だ気付いていなかった。
 
 
 ○
 
 
 トルネコがザックの中身をぶちまけた際に、一つの石が宿屋の隅へと転がった。
 それぞれのすべきことに集中していた二人は、ただの石だと見向きもしなかった。

 この石に、異変が起きていた。
 それはまるで、近付く何かに反応するように。
 ほんのり熱を持つその石は、今その熱をさらに増し、その体を僅かに赤く染め始めていた。

 かつて石は、ぐうたらな男にホットストーンと名付けられ、ナンパの材料にされた。
 やがて希少品として目をつけた大富豪に買い取られ、コレクションの一つになることもあった。
 しかし本当は、その石は伝説の英雄が封印された、不思議な魔法の石だった。
 それを知ったある冒険者達は、大富豪を連れ、その世界で最も高い塔の上で石を掲げることにした。
 言い伝えの通り、石から伝説の英雄は復活し、それと同時に石は消えてなくなった。

 石はこの地で、当時と変わらぬ姿で、大蛇の荷物に紛れた。
 しかし封印を解かれた英雄もまた、石に封印されることなくこの地に呼ばれていた。

 英雄と石は、共にあるものではなかった。
 石は英雄の封印のためにその世界に存在し、英雄の復活と共に消えたはずのものだったから。
 英雄が復活している今は、この石は存在するはずがないものだった。

 ならばこの石は、果たしてなんなのだろうか?
 ――本当に、英雄を封印していたそれと同じものなのだろうか?
 
 
 石は、何も語らない。
 ただ静かに、胎動を続けていた。


【E-4/アリアハン城下町宿屋/朝】

【トルネコ@DQ4】
[状態]:HP3/4
[装備]:無線インカム 破壊の鉄球 宿帳(トルネコの考察がまとめられている)
[道具]:支給品一式(食料と水は半分) ホットストーン?(異変中) 聖なるナイフ 錬金釜
    プラチナソード 折れた皆殺しの剣 ラーの鏡 マジックシールド 魔封じの杖 首輪×2
[思考]:宿帳に記した考察を仲間に伝える 仲間の安否を気遣いいずれ合流 対主催への強い決意
※トルネコの道具は、宿屋内に広げられています。
※ホットストーンに、何か異変が起き始めています。

※【ファルシオン@DQ6馬車馬】
[状態]:右後ろ脚に火傷(治療済み) 宿屋の外に待機
[装備]:縞模様の布切れ

【E-4/アリアハン城下町大通り/朝】

【アレン(竜王)@DQ1】
[状態]:HP1/4 MP1/8
[装備]:さざなみの剣
[道具]:なし
[思考]:あれは…… この儀式を阻止する アレンの遺志を継ぐ

【E-4/アリアハン城下町入口/朝】

【ローラ@DQ1】
[状態]:HP3/4 火傷  気丈な決意
[装備]:光のドレス 雨雲の杖
[道具]:ロトの剣 炎のブーメラン 支給品一式
[思考]:アレフを探す 竜王にゴンの事を伝える エイトが心配 ゲームを脱出する

※備考:トルネコが宿帳に記した内容は以下の通り(全てトルネコの推測・推理によるものです)
1、首輪による盗聴・監視の可能性。また、そこから考えられるハーゴンたちの戦力
2、近々アリアハン周辺にほぼ全生存者が集う可能性が高く、知らない者への警戒が必要である
3、首輪はラーの鏡に照らすと禍々しい呪詛を生み出す。これを消さない限り首輪は外せない
4、呪詛を消すためには、人体に無害で、強い聖なる光に照らす必要がある
5、「錬金釜」を使えば、もしかしたら聖なる光を生み出せる道具を作れるかもしれない


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