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堕ちた夫人とグッドなおねーさん

堕ちた夫人とグッドなおねーさん


登場人物
フローラ(DQ5)、フィオ(DQ3女僧侶)


最初に出会ったのはサラボナの町の入り口だった。
私以外に懐かなかったリリアンがあの方に懐き、とても驚いたことを覚えている。
物静かな瞳、落ち着いた雰囲気……この人は何か大きな事を背負っている人だと一目で解った。
全身が上気し、思わず名前を尋ねていた。もう……その時から私はリュカ様の虜だった……。
あの人が私の結婚相手に立候補してくれた時はとても嬉しかった。
父の出した課題はとても危険そうなものだったけれど彼は見事やり遂げた。
私を愛してくれているからだ……そう思いたかった。
でも、その時彼の隣には彼女がいた。彼の幼馴染だというビアンカという女性。
彼を、疑った。彼の生い立ちは聞いていた。天空の武具を探しているということも。
彼は私を愛していないのかもしれない。
天空の盾だけが目当てで彼が本当に愛しているのはビアンカさんの方かも知れない。
考え出すともう止まらなかった。

……だから、試すことにした。

「お待ちください! もしやビアンカさんはリュカさんをお好きなのでは…?
 それにリュカさんもビアンカさんのことを…。
 そのことに気づかず私と結婚してリュカさんが後悔することになっては…」

私を選んで欲しかった。私を愛しているのだと言って欲しかった。

……その夜、彼が訪れてきた時私は寝たふりをしていた。
彼の顔を見ると泣いてしまいそうだったから。
彼と話をするとすがりついてしまいそうだったから。
それでは駄目なのだ。私が欲しいのは同情ではなく真実の愛なのだから。

そして翌日……彼は私を選ばなかった。

世界が、壊れる音がした。

表面上は平静を装ったけど私の心は日々悲しみで削られていった。
彼と話すのが辛かった。そんな時慰めてくれたのがアンディだった。

私の幼馴染。傷心の私はそんな彼の不器用な慰めもありがたく、彼の熱意に負け結婚した。
でも……彼はとても私を愛していてくれたけれど……私は彼を愛せなかった。
ただ良き妻を演じるだけだ。彼はよく頑張っていたけれどリュカ様と比べると頼りなかった。

そんな時、彼の情報が飛び込んできた。彼は実はグランバニアの王族だったというのだ。
そしてグランバニア国王として即位した後、謎の失踪を遂げたという。
私の最初の直感は間違っていなかった。やはり彼はとても高貴なる存在だったのだ。
リュカさんとはもう呼べない。その時から私はリュカ様と読んでいた。……心の中で。
彼が再びサラボナを訪れた時、ビアンカさんの姿は見えなかった。
魔物に攫われてから未だに行方不明らしい。
その時ほど私はアンディと結婚した事を悔やんだことはなかった。
私なら彼を慰めてあげることが出来るのに。
ビアンカさんさえ……ビアンカさえいなければ私が彼に愛されていたのに。
石化されていたということで10ほども年が離れてしまったけれどそれがどれほどのものか。
私だ、私が彼に愛されるのだ。それから私はずっとその事を考えていた。
幸いにもアンディとの間に子供はない。アンディさえいなければ……。
私は慎重に準備を始めた。二年ほどの月日が経ち、全ての準備が整った。
そして……ビアンカが見つかった。
二人は勇者であった子供と共に世界を脅かしていた大魔王を倒し、世界には平和が訪れた。

私の人生は全て無駄だった。足掻いて足掻いて……どうにもならなかった。
ただ、彼と一緒にいることが望みだったのに。彼は私を愛してはくれない。
どうすれば……どうすれば彼の愛を得ることが出来るのか。
その答えを……このゲームは教えてくれた。
彼の愛するものが失くなれば……彼は私を愛するしかない。
でもこのゲームで生き残れるのは一人だけ。彼が生き残れば家族を甦らせるだろう。
それでは駄目だ。なら生き残るのは私しかいない。
私はハーゴンの力で若返り、そしてリュカ様を蘇生させてその愛を得る。
アンディにはその後、事故か病気でいなくなってもらおう。
それこそが私が夢みた理想の世界。完璧なる幸福の世界。

そうだ、彼は……私のものだ。

そこで目が覚めた。

「ん、気が付いたかい?」

目覚めると私の傍には僧衣を纏った女性がいた。
敵かと思い慌てて起き上がる。その瞬間右半身が引きつった。

「痛ッ」
「ん、まだ急に動かない方がいいよ。この世界じゃ回復呪文の効きが悪いからね。
 それだけ大きい火傷じゃ痛みを消すくらいしかできやしない」

そう、私の身体にはあの竜と女に浴びせかけられた洗礼の痕が色濃く刻まれていた。
しかし彼女の言ったとおり確かに大きく動かさない限りは痛みは薄い。
そこまで考えてようやく目の前の女性が自分を救ってくれたのだと理解した。

「私を救ってくださったのですね。どうもありがとうございます」
「ん、まぁ助かってよかった。私はフィオ、流れの僧侶さね」
「私はフローラと申します。……流れの?」

聞きなれない言葉に思わず聞き返す。僧侶なら解るが流れのとは一体?

「ん、まぁ辻ホイミや辻バシルーラが趣味のグッドなおねーさんかな」
「はぁ」

よくわからず曖昧に頷く。ようするにボランティアで人助けをするということだろうか。
そこでようやく私は自分の目的を思い出す。そうだ、私はこの人を殺さないと……。

「ん、じゃあ治療代として10万ゴールドもらおうかね」
「は?」
「ん、今はボロだけど結構いい身なりしてたみたいだし、金持ちさんなんだろ?
 命の代償としては破格の安さだと思うけど」

どうやら無償の人ではなかったようだ。

「ん、今は持ち合わせないだろうからここから脱出できたらでいいよ。
 ん、後ここじゃその火傷痕は消せないけど、元の世界に戻って半年も治療を続ければその痕も消せるよ。
 ん、その時は月3万ゴールドで私が専属になってあげてもいーかな」

そしてがめつい。遠慮というものは微塵も持ち合わせてないようだ。
ならば私も遠慮の必要はないだろう……。

「わかりました。ではまずこれを受け取ってくださいな」

私はザックから取り出したものを彼女へと刺し出した。

―――――――

トン

(ん、何だコレ)

少し押されたような感触があり、フィオが胸を見るとそこから何かが飛び出ている。
それが毒針の柄だと悟り、フィオはフローラの方を見た。
彼女は薄く微笑んでいた。

(ん、そっか。私はバッドなおねーさんを助けてしまったわけね)

もう一度彼女は自分の胸を見下ろす。

(ん、根元まで刺さってるね。これは流石の私もお手上げかな)

グラリと身体が傾き、後ろ向きに地面に倒れる。

(ん、私の人生はここで終わりか。儚いもんさね)

薄れいく意識の中、脳裏には妹のように思っていた勇者の顔が浮かんだ。

(ん、あんたが心配さねアリス。このおねーさんには気をつけるんだよ)

そして今度はもう一人、仲間だった魔法使いの顔が浮かぶ。

(ん、あんたは……まぁどうでもいいや。……いけ好かない女だったさ。
 ん、まぁ死ぬならせいぜいアリスを護ってから死ぬことさね。私には……できなかったからね)

静かに彼女は自らの死を受け入れ、その瞳を閉じた。

(ん、まぁあんたらがこっち来ないように祈っててやるとするかね……)

そうして彼女は天に召された。

フローラはフィオの死を確認すると深々と頭を下げた。

「ありがとう私に覚悟をくれて。
 あなたを殺せたことでようやくここにいる全員を殺す自信と覚悟を手に入れられました。
 そして……」

フィオのザックから取り出した帽子を被る。

「とても良い物を頂けました」

それは唱えた呪文を更に反響させてもう一度放つことの出来る魔法の道具、山彦の帽子だった。
そしてもう一つ……あらゆる物へと変化することのできる不思議な力を持った杖。
フローラは立ち上がり、ザックを背負う。
ただれた右腕と頬が引きつるが、痛みは酷くない。
これも感謝しなくてはならないだろう。

「フィオさん、本当にありがとう」

そして彼女は進む。リュカを手に入れるために。

「うふふ、リュカ様……もうすぐですわ。もうすぐ……あなたは私を愛するようになる」

狂気と共に彼女は進む。その先に何があろうとも。
  


【C-5/山岳地帯/昼〜真昼】

【フローラ@DQ5】
[状態]:顔から右半身にかけて火傷痕(治療済)※
[装備]:山彦の帽子 変化の杖
[道具]:支給品一式 毒針 ベレッタM92(残弾14) マガジン(装弾数15)×2
[思考]:ゲームに乗る 永遠の若さとリュカの蘇生を願う

※フローラの火傷には定期的な回復治療が必要です。
  治療しないと半日後くらいからじわじわと痛みだし、悪化します。
  完治にはメガザル、超万能薬、世界樹の雫級の方法が必要です。

【フィオ@DQ3女僧侶 死亡】
【残り36人】


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