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二人の決着

二人の決着


登場人物
アレフ@DQ1、アリス@DQ3、エイト@DQ8、竜王@DQ1、ピサロ@DQ4、フォズ@DQ7、マリア@DQ2・・・・・・


 
 
 
 
時は、聖杯の間の扉が開かれるより少し前に遡る――

 
 
 
 
 
 
虹の導きにより、7人が降り立ったのは虚無の空間。
彼らの眼前には、果ての無い暗黒に塗りつぶされた空を裂くように、神殿が鎮座していた。

 
 
 
 
 
***

「ついに、来たんですね」
不自然に切り取られた中庭のような場所から、神殿内へ繋がる闇を見据える。いや、睨みつける。
見えない空間から、微かな風が流れてきている。体に纏わりつくいやな風だ。
しっかりと足を付けているはずの足場はどこか頼りなげで不安定でもある。

ピサロは眉をひそめた。
「僅かだが空間の歪みが発生しているようだな。ここも長くはないかも知れんぞ」
「舞台の世界が崩れ去った余波か?」
「だとしても関係ないさ。ここまで来たらもう同じ、前に進むだけだ」

「ええ。けれどその前にやらなければならないことがあります」
屈んだファルシオンの背から降りたエイトが、フォズとマリアの手を引きながら口にした。
「首輪の解除……ですね」
フォズは自分の荷物を握りしめた。

ここは敵の本陣。
戦いは既に始まっている。戦局を有利なものにするには可能な限り迅速に行動しなければならない。
だが、首輪をそのままにしてハーゴンの前に踊り出る訳にはいかない。
この場での首輪の解除はピサロとマリアにとって必須であった。

 
しかし、敵が何処から見ているか分からない状態。
首輪解除が妨害され失敗、などということになっては本末転倒だ。
降りかかる火の粉を払うためにも、こちらから打って出る必要もある。

「アレン、これを」
マリアが手を差し出す。握られているのは本来の輝きを取り戻したルビスの守りだった。
「私たちはここに残って首輪を解除するわ。
 ハーゴンの幻影に惑わされないために、これを持って貴方たちは先へ行って」

「別行動をとる、ということですか」
エイトが不安げな顔で訊いた。
ピサロは俯くマリアを一瞥し、一同を振り返った。
「言った筈だ。我らの目的はただ一つ。互いを枷にしていては好機を逃すことになる。
 ここまで来ておきながら、先に進む以外はあるまい」

――風が、少し強くなった気がした。

瞑目は一瞬。アリスは表情を引き締め顔を上げる。
「……分かりました。アレフ、先陣をお願いできますか。私が後ろに付きます。
 アレンさんは最後衛にまわって後方支援を、エイトさんは私とアレンさんの間に入って補助を担当してください」
「正しい采配だ」
ピサロが頷く。
「この形が得意なんです」
機動力の高いアレフ、そしてアリス自身を前に置き攻撃の手を確保。
背後の守りは竜化状態のとれるアレンに一任。
さらに回復呪文に長けたエイトを中に配置することで全体としての守りを固める。
アリスが最も慣れている4人パーティーを基本とした編成だ。

 
「そしてフォズさんは首輪解除の援助を。済み次第、すぐに」
「はい。こちらも、すぐに後を追います」

黙って聞いていたアレンが、マリアの手を取る。
「これは、受け取れん。加護はお主らにこそ必要だ」
「アレン……」
「必ず来るのだぞ」
「ええ」
そして強く握った。

後ろからポン、とマリアの頭をなでたのはアレフだ。
「正直言うと、残して行きたくはない。もうあんな思いは御免だからな」
「……ごめんなさい」
「いや、もういいんだ。ただ今度は無事な姿を、笑顔を見せてほしい。
 そのためなら露払いの一つや二つ、こっちは何てことはないからな」
「ええ。ありがとう。
 私、嬉しかったの……私と絆を繋いでくれたこと。
 虹の架け橋を作ってくれたこと。
 奇跡みたいだって思った」
「それはこれからですよ、マリア」
「アリス……」
「必ず勝ちましょう。私たち、勝つんです」
「そう、そうね。必ずできるわ」
アリスの笑顔につられマリアの表情にも自然と笑みが宿る。

「ファルシオンはこちらに置いていきしょう。すぐに追いつけるように」
「ありがとうございます。では皆さん、お気をつけて」
「ああ、そっちもな」
「行きましょう!」
三人は、四人の背中を見送った。

 
 
 
***

 
――風がまた、強くなった。

 
「ファルシオンさん、すみませんが暫く隠れていてください。
 って……本当に入るんでしょうか……これ?」
フォズは自分のザックを広げてはみたものの、大きさを見比べ途方に暮れる。
かたやファルシオンは一度ぶるると身を振るわせると、勝手知ったる様子で鼻先を入れる。
パチリ、と瞬きをしている間にファルシオンの体はザックの中に収まってしまった。
「え、え〜と……」
思い切ってザックを力一杯引き上げてみると、実は重さすら変わっていなくて、
勢い余って転倒してしまいそうになる。
「何をやっているのだ」
「い、いえ。すみません……」

フォズは代わりに解呪の鏡を取り出し用意を始める。
「しかし、予想が外れたな」
「え?」
「首輪の事だ。よもや、あの世界を脱した瞬間に反応するのではないかと思っていたが、何も変化が無い」
「…………」

フォズは思う。
最後の最後までこの首輪という物は、自分たちの心を弱くし惑わせるものだと。

死の可能性を目の前にぶら下げられれば、誰もが平静を保てなくなってしまう。
危機に曝される命が、たとえ自分自身の命でなくとも、仲間のものであってもそれは全く同じこと。
首輪を解除され、アレフがピサロを責めた時、本当はフォズだって傷付いていた。
(いいえ……私だけじゃありません。皆がそうだった……)
でもそれは、二人が悪いのではない。
本当に悪いのは、諸悪の根源は、ハーゴン。
こんなに簡単なことが、たった一つ惑わされるだけで、見えなくなってしまう。
 
 
そう、たった一つ、惑わされるだけで。
 
 
「鏡の準備ができました。これを順番に掲げればいいのですよね?」
「ああ。合図をするからそれに従えばよい。さて」
ピサロとマリアは互いに向き合った。

 
 
 
ピサロは言った。
世界を崩壊させないために、首輪は2つ必要だった。
そして世界から脱出した今、それらを外すことには何の躊躇いも無い。
だが……
「同時に解除することは物理的に不可能。つまり」
「残った最後の1人が、その瞬間に主催者側から何らかの干渉を受ける恐れがある……」
「それって、どうなるんですか?」
「さあな。最悪首輪が爆破される可能性も、否定はできん」
「そ、んな……」
それは、生死の賭けを超えた、儀式の核心に触れる事象。
しかし躊躇している時間も無い。
「どちらの首輪を先に解放するのか……」

マリアは、自分の荷物の中からある道具を取り出した。

 
「これで決めましょう」

 
その手に握られているのは、小さなメダルだった。

 
「後悔も、異論も無いように」
「それが最善の方法か」
「そう思うわ。やることは同じですもの」

「マリアさん……ピサロさん……」
決意に満ちた二人の表情が、フォズの心に突き刺さる。
命の選択をしなければならない、それはなんと悲しいことなのだろう。
運命は、どこまで二人に辛い選択を強いるのだろう。

「私は表を選びます。
 表が出れば私が、裏が出たら貴方が先に解放される。これでどうかしら」
「――良いだろう」

そんなことはダメだ、と言いたいのにフォズは言葉にすることはできなかった。
気付かなかったとはいえ一度甘受してしまった二人の思惑。
決着の方法はきっとこれ以外に――ないのだ。

キィン

メダルが宙へとはじきだされた――

 
 
 
***

マリアは咄嗟に手を組み祈るフォズを見遣った。
(フォズさん。
 貴女は本当に優しい人。他人のために祈ることのできる人。
 このゲームで多くの絶望を強いられて尚、そんな風に清く在れるのね。
 今も、他に方法が無いから私がこのやり方を選んだと、残される方が悲しいんだと思ってる。
 でも……それは違うのよ)

メダルの軌道が落下へと転じる――
(本当の望みは、解放されることでも生き延びることでもない。
 そしてそれは、きっとこの人も同じ……)

ピサロと視線がかち合った。紅の瞳のさらに奥を見つめる。
(彼と私に共通する感情。
 より深いハーゴンに対する恨み、憎悪の心。
 刺し違えてでも仇を討ちたいと思う気持ち……
 これは他の皆にとっては重荷にしかならない)
そう思った時、一つの道の存在に気付いたのだ。

(表が出たら皆とともにハーゴンと戦う。
 けれど裏が出たら、――)
この胸の内が知れたら、きっとまた皆を怒らせるに違いない。

――裏が出たら、
   優勝者としてハーゴンと対峙する――

確証はない。
そんな機会がめぐってくるかどうかなんて本当は分からない。ただ首輪が爆発して死ぬだけかもしれない。
けれど、何も起こらなければそれでいい。そう思うのも本当だった。
(私は運命の答えを知りたい。
 なぜ彼らがこの忌まわしいゲームに参加しなければならなかったのか。
 なぜ私たちの力だけではハーゴンを討伐できなかったのか。
 この悪夢の意味を……ルビス様)

マリアの手がメダルを掴み取る。

 
 
 
 
 
手の中の運命は、裏を向いていた。

 
 
「貴方が……先、ね……」
 
 
 
マリアは静かな面持ちで見つめた。

 
 
 
 
「フォズ、鏡を掲げろ。そして私の首輪が外れ次第、即座に同様の処置をマリアに移せ」
「え……?」
マリアは驚く。ピサロも自分と同じ感情を抱いていると考えていたからだ。
自分と同じく彼もまた、独りであの憎き神官と接触できる可能性を考えているのではないかと。
だから先に己の首輪を外すことを良しとはしないはずだと危惧していた。
それなのに彼はこちらの言い分を素直に受け入れている。
どうして。

「解呪の最終手順はお前だ。それが納得しないのなら進むことができない」
「…………」
「……またあいつに殴られるのは御免だ。もし何か起これば最善の処置を尽くす。諦めるな」
「そう、ね……。ありがとう……」
真意は、すべて見透かされていた。
そして彼らは……こんなにも優しい。
せめて、その瞬間が来るまでは希望を棄てないことで、皆の気持ちに報いたい――
マリアは目を潤ませ、頷いた。

 
 
 
――風が強い。

 
ピサロは凍てつく波動を巻き起こした。
対象となる自分自身を包み込むと同時に、杖一本分離れたマリアに即座に届くよう広く力を解放する。
「集中しろ。絶対に気を抜くな。自分の首輪を解除するまでが一工程だと考えろ」
「……分かりました。フォズさん、鏡を!」

掲げられた太陽のカガミの光が、ピサロの首輪の呪詛を祓っていく。
マリアは心を無にし、正確に呪文を紡ぐ。
「――アバカム!!」

パキン

綺麗な亀裂が入りピサロの首輪は地に落ちた。

「成功……!」
「フォズ、鏡の向きを移せ!」
「は、はい!
 えっ、これは!?」

マリアの首元に現れた呪詛が、その大きさを増していく!

「いや、なにっ――?!」
「……どうした!! 何故呪詛が消滅しない!!」
「ダメです、光が、効かない……!? そんな!!」

 
――風がうなりを上げて吹き荒ぶ――

 
呪詛が制御を失ったかのように蠢きだし、邪気を含んだ突風が、フォズとピサロの体を吹き飛ばす。
巻き起こる激しい波動に包まれ、マリアは高く宙に浮かびあがった。

「こ、これはっ、まるで旅の扉――!?」
「転移の術か……! 不味い、取り込まれるぞ!!!」

最後の一人たる優勝者は、聖杯の間へと誘われる。
この儀式の最終目的――その役割を果たさんがために。

 
マリアの体はその場から消え去った。

 
 
 
 
 
 
***

「妙に静かだ」
「辺りには敵の気配がありません。これではまるで」
「誘われている、か」
「それも良いでしょう。ここが最後の……」

アリスは扉に手をかけた。
目の前に広がる暗闇。
足を進めると、辺りに無機質な音が響き渡る。

ごう、ごう、ごう

青白い炎が燭台に灯っていく。
まるで彼らを導くかのように。

背筋が凍りつくほどのおぞましい魔力があたりを包み込んだ。
この感覚には覚えがあった。
始まりを告げられたあの瞬間。
この世界に集められた者たちが、抗いきれない運命に落とされた瞬間。
それは遥か遠い昔のことのようで、しかし鮮明に焼き付いて離れない。

 
「――ハーゴン……!!」

 
壇上に立ちはだかる影に向かい、アリスは声を上げた。

  
 
 


【???/聖杯の間/ゲーム終了直後】

【アレフ@DQ1勇者】
[状態]:HP健康 MP全快 左足に刺傷(完治) 首輪なし
[装備]:ロトの剣 ロトの盾 鉄兜 風のアミュレット
[道具]:支給品一式 氷の刃 消え去り草 無線インカム
[思考]:このゲームを止めるために全力を尽くす 

【アリス@DQ3勇者】
[状態]:HP健康 MP全快 首輪なし
[装備]:メタルキングの剣 王者のマント 炎の盾 星降る腕輪 
[道具]:支給品一式 ロトのしるし(聖なる守り)炎のブーメラン 
    祈りの指輪(あと1.2回で破損) 
[思考]:仲間達を守る 『希望』として仲間を引っ張る

【エイト@DQ8主人公】
[状態]:HP健康 MP全快 首輪なし
[装備]:メタルキングの槍 布の服 マジックシールド はやてのリング
[道具]:支給品一式 イーグルダガー 無線インカム 
     84mm無反動砲カール・グスタフ(グスタフの弾→発煙弾×1 照明弾×1)
[思考]:悲しみを乗り越え、戦う決意

【竜王@DQ1】
[状態]:HP健康 MP全快 人間形態 首輪なし
[装備]:竜神王の剣 さざなみの剣
[道具]:外れた首輪(竜王) 魔封じの杖 破壊の鉄球
[思考]:この儀式を阻止する 死者たちへの贖罪

 
【???/虹の橋到達点/ゲーム終了直後】

【ピサロ@DQ4】
[状態]:HPほぼ全快 MP4/5 右腕使用不能 首輪なし
[装備]:鎖鎌 闇の衣 
[道具]:支給品一式 首輪×5[首輪二個 首輪(分解) 首輪×2]
     飛びつきの杖(2) アサシンダガー プラチナソード 奇跡の石
     ピサロメモ 宿帳(トルネコの考察がまとめられている)   
[思考]:ハーゴンへの復讐 体力・精神力の回復 最終決戦の戦略を練る
※ピサロの右腕は通常の治療では完治できません。
 また定期的な回復治療が必要であり、治療しないと半日後くらいからじわじわと痛みだし、悪化します。
 完治にはメガザル、超万能薬、世界樹の雫級の方法が必要です。 

【フォズ@DQ7】
[状態]:HP健康(神秘のビキニの効果によって常時回復) MP全快 首輪なし
[装備]:天罰の杖  神秘のビキニ(ローブの下) 
[道具]:支給品一式  アルスのトカゲ(レオン)
     神鳥の杖 祝福サギの杖[7] ドラゴンの悟り 
     あぶないビスチェ 脱いだ下着 ビッグボウガン(矢 0)
     太陽のカガミ(まほうのカガミから変異)錬金釜 ラーの鏡 
     天馬の手綱(ファルシオン)
[思考]:ゲームには乗らない ピサロとともに生きる

 
【???/???/ゲーム終了直後】

【マリア@DQ2ムーンブルク王女】
[状態]:HP健康 MP全快
[装備]:いかずちの杖 布の服 風のマント インテリ眼鏡
[道具]:小さなメダル 聖なるナイフ 鉄の杖
    ルビスの守り(紋章完成)引き寄せの杖(2)  
[思考]:ハーゴンへの復讐 儀式の阻止 アリスを支えたい

※優勝者の転移は自動的に発生したものであるため、現在の主催者の意思とは関わりない可能性があります。


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