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魔なる者たち

魔なる者たち


登場人物
ピサロ(DQ4)、サマンサ(DQ3)、フォズ(DQ7)、トルネコ(DQ4)、トロデ(DQ8)


宵闇も曙の光に照らされようかという時刻が近い。
静かな村に相対するは、二人の魔。
片や魔の力を操る者、片や魔の存在を統べる者。
ただ、その瞳は両者に共通して、『冷たい』光を湛えていた。
サマンサは奇跡の石を握り締め、少しずつ少しずつ傷を癒しながら話を聞いていた。

「まずは、その傷の理由を聞こう。どこか近く…恐らくここで争った、か?」
「…話がお早いですね、その通りです」
嘘はつけない。
サマンサは目の前の男の本質を瞬時に推測する。
強い。
強大な魔力、そして肉体。
自分とていつも後衛から魔王軍との戦いを分析、観察していた身。
戦略眼についてはアリスを凌ぐと自負している。
末は賢者か学者か、とフィオに茶化されたことも今となっては懐かしい。
その経験が危機を知らせているのだ。
この男は、人よりも魔に近しい存在だ。
全身の毛が逆立つような寒気を感じ、身震いしそうになる。
サマンサは思った。

(…生かしておくわけには…いかない…)

彼女…アリスにとっての危機となるかもしれない。
サマンサの決意は固まった。
嘘はつかない。
だが、真実を伝えることはしないと。

彼女の書き上げた筋書きはこうだった。
レーベに到着したところ、自分は竜に襲われた。
その竜には女と男が一人ずつ協力していて、自分は居合わせた女性一人と応戦。
男女は村から逃げ、竜は苦戦の末メガンテで自爆。
居合わせた女性にアイテムを使用してもらい、逃がされた。

「私は…重症を負い、動けませんでしたが…居合わせた女性は、最期まで戦って…おそらく、ここで」
「……」

ピサロは眉間に皺を刻んでこれらの話を聞いていた。
が、深く追求されることは無いだろう。
なにしろ、彼女の言葉に嘘は欠片も含まれていない。
ただ、覆い隠された真実を口にしていないだけに過ぎない。

「……そうか。もういい」
(え?)

おかしい。
彼の眼差しは明らかにこちらを不審に思っている。
追求しようと思えばいくらでもできるはずだ。
(…何を言おうが、信じられたものではない…ということですか?)
どういうことかと考えを廻らせるサマンサに、突如男の手によって何か書き記された帳面が突き出される。

「…?」
「"話"は…終わりだ」

と、いうことは喋るなということか。
人に聞かれては困る話、というわけではあるまい。
ここには自分たちしか見受けられないのだ。
では、誰に隠す必要が─
ここまで考えて、サマンサはその文字を読み、眼を見開いた。

"問いただすことがある。内容次第では脱出への可能性が見える。正直に答えろ"
─脱出?
その二文字を見た瞬間サマンサの視界が揺らいだような気がした。
馬鹿な、ここから逃げ出す?
なら、ならば─今まで私の背負った罪はいったい?
くらくらする頭を整理させながら、目の前の紙に書き込まれた質問を見る。
そこには、2つの魔法。
開錠呪文『アバカム』と解呪呪文『シャナク』
この2つの使用の可、不可を問いかけている。

「(答えろ)」
「……」
サマンサは…頷いた。

目的があったということは、魔法使いであることを打算した上でこの男は私を助けたのだ。
つまり、彼ほどの術者であっても使えぬこの2つの呪文を使える私を『必要とする』ということだ。
それは、手負いの私にとって重要な存在。
必要とされていれば、私に死なれることは望んでいまい。
『盾』となってもらえる可能性があった。
そしてもう一つ。
(…盾は…背後からの攻撃に対応、できない……)
脱出方法を聞き、なんとか私一人でも成功させられるようならば。
私は彼らを始末し、アリスをこの世界から逃がす。
その後はどうなろうが知ったことではない。
そう、自分の身さえも。
私にとって無益な話ではないはず、ならば今は手を組んで…

「そうだ、一つ…言い忘れていたな」
「え……ッ、!!?」
サマンサの体が瞬間、浮遊する。
いきなり、革手袋の手がサマンサの顔面、手首を掴み、寝台に組み伏せた。
必然的に、上に圧し掛かられることになる。
折れた腕で反撃などできるわけも無く、為すがまま拘束された。

「今のような…『悪巧み』……もう一度考えて見ろ。貴様など、どうにでもなるからな」
「っむ…ぐ…!」
鋭い眼光が射るように突き刺さって来る。
紅き眼は、槍か剣かと見紛う程だ。

─甘かった……!!!
これは、『協力』では無い。
『隷属』だ。
こちらの考え…見破られている。
逆らえば…殺されるか?
いや、もしくは身動きを封じ、呪文を唱えること以外が出来ない程度に衰弱させ…
と、危機を感じる最中の部屋の隅。

「…んん…」
可愛い呻きが少女の目覚めを告げていた。

「…あ、ピサロさんおはようございま……」
眠い眼を擦って見た光景は、男が女の上に覆い被さらんとしている図。
それは驚いたことだろう。
押さえ付けられた女は抵抗している様子。
塞がれた口。
交じり合う朱と銀の髪。
どうみても情事です。

「…ぴぴぴ、ピサロさんっ!!な、なな何をなさっているんですか、ふ、不潔ですー!!」
「……どいてくださいませんか、あらぬ誤解を受けますよ」
「……」
子蜥蜴が、舌をちょろりと出してこちらを笑った気がした。
 
 
 
 
結局頬を染めたフォズの、終始どもりっぱなしの詰問によってサマンサは事無きを得た。
ピサロは結局何も言い返すことは無かった。
そのためフォズは知らない、今の会話を、我々の裏を。
サマンサにとってそれはありがたい。
彼女にまで疑われてはやりづらい。
何より、彼女の…あの子に似た純真すぎるまっすぐな瞳で悲しみの眼差しを向けられたら。
思わず手が緩みそうな気がしたから。

フォズのお説教が終わった(対象は完全に聞き流していたが)頃、
ピサロが煤を払っている冠のような物体にサマンサの眼に留まった。
見たところひどく汚れているが壊れてはいないようで、なにやら複雑な形状をしている。

「…ピサロさん、それは?」
「……村が損壊するほどのメガンテにも耐え切ったようだな、これは」
「かぶと…ですか?」
「…見ていろ」
ピサロが頭にそれを乗せると、それはひとりでに変形してピサロの頭にぴったりになった。
フォズから驚きの声が漏れる。
自分もこんな兜を見受けたことはない。

「…マネマネ銀製、か。しかも、対魔法防御までされているようだな…マホステか、それに通じる何かか」
「…メガンテに耐え切ったのはその為ですか」
「それにしても、変な形ですね…」
「…このスイッチを押すと…耳の当たりの装置に反応があるな。再生装置…?か」
確かに、彼がスイッチを押す度に、ザ、ザザッと雑音が入る。
そのときこの兜─無線インカムは、偶然にも雑音の中に悲鳴にも似た叫びを拾い上げた。

『バズズーーーーーーーーーーーーッ!!』
「ひゃあぁっ!?」
フォズが驚きの声を上げると、同じく吃驚した子蜥蜴が胸元へしゅるりと身を隠す。
サマンサ、ピサロ両名はその名に心当たりがある。

「……バズズ?その名は…」
至近距離で聞いたピサロがスイッチからたまらず手を離した。
この村には、もちろん近くでそんな声を発した者はいない。
声は、『これ』から聞こえた。

「…名簿に載っていた名だ…と、いう事はこの声は参加者の声…」
「……この島のどこかと、繋がっているようですね…」
ピサロがもう一度スイッチを押すと、今度は別の声が聞こえた。

『ひぇええ、な、なんでしょう今の声は…』
『外の皆に何かあったんじゃあるまい!?』
二人の男性だろうか、背後に何かが崩れる崩落音が微かに聞こえる。
その声が流れた途端にピサロは微かに表情に驚きを見せた。

「その声…トルネコか?」
『!?い、今ピサロさんの声が…』
『何を一人でブツブツ言っとるんじゃ、さっさと…』
ピサロはトルネコにはある種の信頼を置いていた。
彼からは人の心の温かさを、自然と教わっていたような気がする。
彼の冗談には、自分が初めて笑みを零す結果となった。
もっとも、周りが全員驚愕していたが。
彼の言葉なら、ある程度は信頼できるだろう。
ピサロはコンタクトを試みた。

「トルネコ。気のせいではない、私だ」
『や、やっぱり!ピサロさんどこに?この、インカムとやらを?』
「私はレーベだ。落ち着け、今どうしている」
ピサロがトルネコとの通信を取れたのは彼にとって好都合であった。
状況が知れる。
もしもだが、殺し合いの激化により絶望的な状況になっていれば彼の行動指針は決まる。
既に全滅必死ならば、自分は目の前の二人を屠ることさえもしようと。
彼の瞳は狂気と平静の境を彷徨い、まるで灯火の如く揺らめいていた。

『は、はい。私たちはアリアハンに…今、一人が…あの……クリフトさんにさらわれ…』
─フン。奴はまだあのあたりでふらついていたか。
やはり、堕ちたか…愚僧にはふさわしい結末と言えよう。
ピサロの心はまたも強く揺らぐ。

『さらに、巨人が向かって来たんです!お願いします、助けが要るんです!アリスさんもアレンさんも、マリアさんもこのままじゃ危ない!』
「…とは言っても、トルネコ。我々はレーベだ、間に合わ…」
「今、何と言いましたっ!!??」
突然、傍らのサマンサが声を張り上げた。
耳元で叫ばれてはピサロも狼狽を禁じえない、目を見開く。
普段の様子からは想像もつかない、感情的な態度。
息を早め、声を荒げて食って掛かるその様子は明らかに今までとは違っていた。

「アリスが、アリスが危ないんですか!!?」
『ど、どなたですかな?』
「アリスを、アリスを助けてあげて!お願い!!!」
「落ち着け、魔法使い」
手首を掴んで引き剥がすと、その顔は焦りと怯えで埋め尽くされている。
叱られた子供のような顔だ。
アリス、という人物に何かあるらしい。

「ア、リス…ア…リス、お願い…生きて…アリス…」
「…ピサロさん……」
「……」
またか。
フォズの瞳はこう言っている。
"助けてあげて"と。
大きな溜息を一つ吐く。

「やれやれ、だ」
「お願いします、アリアハンへ、アリアハンへ…!!!」
「…間に合う見込みはないぞ?」
『ピ、ピサロさん。ともかく私は今から皆さんを助けに向かいます。できることなら、あなたもアリアハンへ向かってください!』
『こりゃ、トルネコ!ワシはどうすればいいんじゃ!』
『ファルシオンを頼みます!』
トルネコとの通信はそこで絶たれ、静寂が支配する。
少女と女性は、彼を見つめたままであった。

「ピサロさん……」
「……」
「…私からも、お願いします…」
「…………フン。とんだ物を拾ってしまったな」
ピサロはそんな視線から顔を背けるように踵を返した。

「さっさと立て。ここを出発する」
「ピサロさん…!」
「誰もいないここに今、留まる理由は無い…場所を移すぞ」
─だから、そんな嬉しそうな眼で見るんじゃない。と、言った途端にさらに喜んだ表情を見せた。
全く、人間というのはまだまだ分からない。
フォズから譲り受けた盾を背負い、サマンサにインカムからは離れた位置に落ちていた少々煤けた杖を寝台に放り投げた。

「使え。急ぐのだろう、さっさと立つんだな」
「……南東…」
「え…?サマンサさん、今何と」
「南東の森に…近道があります…そこへ」
危なっかしい足取りのサマンサをフォズが支えて立ち上がる。
目指すは、森の地下道。

「…魔法使い」
「?」

─少々落ち着くまでは…首輪の話は無理か。
まあ急を要することでは、ないな。
ピサロは首に填められたそれを指で示す。
「…行きながら、"これ"についてを……」

魔王は、魔法使いは。
これから『死』を齎すのだろうか。
そして、この忌々しい儀式から逃れる鍵は。
外れる時が来るのであろうか。


【B-2/レーベ民家/黎明】

【ピサロ@DQ4】
[状態]:疲労(少し回復) MP4/7程度
[装備]:鎖鎌 闇の衣 アサシンダガー  炎の盾 無線インカム
[道具]:エルフの飲み薬(満タン) 支給品一式  首輪二個 鋼の斧
[思考]:ロザリーの仇討ち ハーゴンの抹殺 襲撃者には、それなりの対応をする
     サマンサに対して警戒する アリアハンへ向かうサマンサへついていく
     【シャナク】【アバカム】を利用した首輪解除方法を話し合う
     首輪解除の目処は立ったが、状況の度合いによっては参加者を減らし優勝

【フォズ@DQ7】
[状態]:健康
[装備]:天罰の杖
[道具]:アルスのトカゲ(レオン) 支給品一式
[思考]:ゲームには乗らない ピサロを導く

【サマンサ@DQ3女魔法使い】
[状態]:HP2/3 MP3/5 全身に裂傷・火傷 左足に負傷(軽) 左腕骨折(重)
[装備]:奇跡の石 神鳥の杖(煤塗れ)
[道具]:支給品一式 鉄兜  ゴンの支給品一式 ルビスの守り
[思考]:勇者の血を守る アリアハンに行き、とにかくアリスを守る
     ピサロの脱出方法を聞き、単独利用できればアリスを逃がす

【E-4/アリアハン城下町宿屋/黎明】

【トルネコ@DQ4】
[状態]:健康
[装備]:無線インカム
[道具]:ホットストーン 
     聖なるナイフ さざなみの剣 破壊の鉄球
[思考]:皆の援護に行く クリフトをもう一度説得 
     他の参加者に危機を伝える ピサロといずれ合流

【トロデ@DQ8】
[状態]:HP3/5 腹部に深い裂傷(止血) 服はボロボロ 全身に軽度の切り傷(ほぼ回復)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式×2(不明の品が1?) 大錬金釜
[思考]:ファルシオンをどうにかする 打倒ハーゴン

※ファルシオンは宿屋の外で待機しています


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