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明星の残像

明星の残像


登場人物
エイト、キーファ、アトラス


「――この女、名前、アリーナ、言うのか?」
 重傷を負い倒れていた紅の一つ目巨人から発せられた意外な言葉だった。
「そうです。この方は――アリーナ姫と言います」
大切な仲間を、守るべき姫を失い悲しみに沈む近衛兵から発せられた、これもまた
意外な言葉だった。
「…おまえ、この女の仲間か?」
「はい」
その返事はお互いが敵同士、仇同士であると確信させる言葉であった。
―こいつがベリアルを殺した―
―こいつがアリーナさんを殺した―
 今ここで倒さなければならない相手…。しかし槍を握り締める手に、握り締める拳に、力が入らない。
それよりも…ただ、今は真実を知りたい…!

「おしえてくれ。この女…どんなやつだった?」
構えかけた拳を下ろし、赤鬼は尋ねた。最も慕っていた兄の仇に。
「…わかりました。僕の知る限りでよければ。そのかわり、僕にも教えてください。
 この方が、どんな風に闘って……逝ったのかを…」

 エイトは語った。
この大陸での事を。アリーナとの出会い、共闘、そして最期の別れを。
 どうしてあの時、自分はアリーナの変化を、悲しい決意を見抜けなかったのだろうか。
もしかしたら、彼女が時折見せた無邪気な笑顔に、愛しい姫君―流星の姫君ミーティア姫―を
重ねていたのかもしれない。

「そうか。この女、お姫さまだったのか。おまえを守るために闘ってたのか」
 エイトは民家で眠っているキーファの事は話さなかった。
今はお互いに語り合っているが、この語り合いが終われば恐らく、再び死闘の幕が上がるであろう。
今の自分が守るべき最後の仲間、最後の王族であるキーファを何としてでも守りたかった。
だから、黄金のアークデーモン、ベリアルは自分とアリーナで倒した、と話した。
「世の中には、すごいお姫さまが、まだいたんだな」
アトラスは独り言のように言った。
 
アトラスもまた、思い出していた。自分が出会ったもう一人の勇ましき姫君を。
あの日、ロンダルキアに攻めてきた勇者の血を引く三人の王族達。
その中の一人。偉大なる大神官ハーゴンによって滅ぼされた王国の生き残り。
―ムーンブルクの王女、マリア―
 強大な魔力に満ち溢れ、数々の呪文を操り、仲間たちを次々と倒していったマリア。
戦い方は違えど、その瞳に宿る意志の輝きはどちらの姫君も同じ強さだった。

「…ベリアルが死んだって聞いたとき、アトラスすごく悲しかった。
 この村でベリアルが死んでいるのを見たとき、すごく悲しくって、悔しくって、憎たらしくなって…
 何が何だかわからなくなった。
 でも、この女…アリーナが現われて、いっしょうけんめい闘っているのを見ているうちに
 悲しいとか、悔しいとか、憎たらしいこととかが、いつの間にか消えて…
 …アトラス…確かに楽しかった…」

 アリーナの遺体に向き合い、アトラスは言った。
「ごめんな。アトラス、おまえを殺してしまった。お前に止めをさしきれなかった」
 エイトは、この言葉に矛盾を感じつつも戦慄を覚えた。
―そうだ。この赤い巨人は、あのベリアルの仲間。邪悪に染まりきった魔物だ。
 草原であったバトルレックスの様な、わかり合える魔物ではないんだ!―
悲しみをこらえ、全身の力を振り絞り、エイトはメタルキングの槍を構える。
「あなたは…人を殺すんですね?」
「あぁ。それが、もう一度よみがえったアトラスの仕事」
「…そんなことはさせない!もうこれ以上誰も死なせない!」
こいつを止めなければならない。今ここで。

 この殺し合いの地には、かつて自分と共に暗黒神と戦った、かけがえの無い仲間たちがいる。
記憶喪失だった幼い自分を拾い、養い、近衛隊長という輝かしい地位まで与えてくださった
トロデ陛下までいる。
 それだけではない。きっとここにはアリーナさんやキーファさんの仲間もいるはずだ。
他にも、理不尽な戦いを強制されている人々…。
 今度こそ…今度こそ必ず守ってみせる!
 
 エイトは長い旅の中で極めた槍技の一つ『さみだれ突き』を繰り出さんと構えた。
それを見たアトラスは悲しそうに笑った。
 ―本当に…本当にわかり合う事は出来ないのだろうか?―
一瞬でもそんな事を考えてしまった。それがエイトの油断だった。
 次の瞬間には巨大な赤い拳がエイトの胴を直撃していた。その衝撃にエイトの体は民家の壁まで吹き飛ばされた。
「…がはっ!」
 口中に生暖かい鉄の味が広がり、吐血した。それと同時に激しい眩暈が襲う。それでも懸命に顔を上げる。
目の前には、今まさにもう一撃を繰り出さんとする巨人の姿があった。
(こいつ…速い!)
 あの巨体から一体何故これほどのスピードが出せるのか?―一瞬、巨人の胸に淡く輝く何かを見たような気がした―
早く避けるなり防ぐなりしなければ。しかし、全身に激痛が走り体が動かない。
(殺られる!)
そう思い、エイトはぎゅっと目を閉じた。

 しかし、その一撃はいつまでたっても繰り出される事は無い。
「…やめた。やっぱりアトラス、今はお前を殺せない。ごめんよベリアル。
 ごめんなさい、ハーゴン様、シドー様…」
 そう呟いてアトラスは改めてアリーナを見る。
 
 自分が倒れた時に生じたであろう、激しい衝撃にも耐え、二本の足で大地を踏みしめ
迷いの無い真っ直ぐな拳を突き出したままのその姿。
 血で汚れ、瞳はかつての輝きを失ってはいるが、一人の格闘家としての誇りに満ち溢れた死に顔。
その誇り高き戦士が守ろうとした仲間の命を奪わないでいる事を、アトラスはこの戦士に対する餞(はなむけ)に、
そして自分への戒めにした。
「でも、次にあったら、その時はアトラス、全力でお前を殺す。ベリアルの仇討つ!」
 アトラスはそうエイトに言い放った。一人の戦士として…そしてジョーカーとして。
 超万能薬で傷を癒し、メガトンハンマーを拾い上げ、アトラスはレーベの村を後にした。
 新たなる生贄を破壊神に捧げるために…。

 体が動かない。動けない。
 白銀の中で、赤々と燃える炎と無数の狼達。それを束ねる黒き犬レオパルド。
それが咥える杖に串刺しにされる、命の恩人であるメディおばあさん…。
 突然、何も言わず無表情で自分の首に手を回してきたアリーナ姫。
たった一人で戦いに挑み…そして…
 あの時と一緒じゃないか!動きたくても動けない。アリーナさんも守れなかったじゃないか…。
 あいつを止めないと…誰かがまた殺されるというのに…
 あいつを…止め…ない…と…―

(ゼシカ…。ククール…。国王陛下…)
 薄れゆく意識の中でエイトが見たものは、獲物を求めて歩き出す、血のように紅い死の執行者の背中だった。


【B-2/レーべの村/夜(放送直後)】

【エイト@DQ8主人公】
[状態]:気絶 左肩にダメージ 腹部と背中に打撃 MP2/3(気絶中に若干回復)
[装備]:メタルキングの槍
[道具]:支給品一式 首輪 メルビンの支給品一式(不明二つ)
[思考]:アリーナの喪失に大きな悲しみ
     アトラスを止める
     仲間(トロデ優先)を捜し、護る ゲームには乗らない
     危機を参加者に伝える

【キーファ@DQ7】
[状態]:気絶 HP3/5程度 (回復中)
[装備]:メタルキングの剣 星降る腕輪
[道具]:ランドの物を含め、不明2
[思考]:ランドの妹(リア)を守る 仲間の死を悟る

【アトラス@DQ2】
[状態]:超万能薬により全快
[装備]:メガトンハンマー 風のアミュレット
[道具]:支給品一式
[思考]:レーベの村を出て南下
    ジョーカーとしての仕事を全うする
    次にエイトとあったら必ず殺す


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