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勇者の行進

勇者の行進


登場人物
アレフ


勇者は前へ進みつづける。
森の中を抜け、木がまばらになっていく。
それでも、足はとまらない。
「もうすぐ…」
抱えている羽の生えた少女の為に。
もう、少女は身動き1つしない。
それでも、わずかな希望を胸に抱いて進む。
 突然、頭上から、鐘の音が降りそそぐ。
 聞き覚えのある声が聞こえる。
「ハーゴン!」
 アレフは怒りを込めて叫ぶ。
 放送を聞きながらも、歩むスピードは変わらない。
ほんの数時間前に知合った、赤毛の少女の名前を聞くまでは。
…「ゼシカ」
「くっ」
 さすがに歩みが遅くなる。
「…さすがに、助けは間にあわなかったか」
アレフの顔が歪む。
勝気そうな少女だった。
とめても、聞かなそうだった。
だが、ひとりにせず二人で協力して戦うべきだったかもしれない。
 「今は走らなくては、ゼシカの為にも」
アレフは感傷を振りきる。そう、後悔は後でもできるのだから。
  名前の列挙は続く。
名前の多さに、ゲームに乗っているであろう者達の顔が笑っているような気さえする。
  吐き気がする。
 非情にも名前の列挙は続く。そして、

…「ルーシア」
 勇者の歩みが止まる。
ただ、呆然と己が抱えている少女を見る。
 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 
アレフは絶叫した。
物言わぬ少女を強く抱きしめた。
 まだ僅かばかり温もりが残っている体。
しかし、ルーシアの顔は青白いと言う表現を通り越し、透き通るような白さ。
唇は紫から黒へと変色しようとしていた。
 だが、アレフは、ただ、強く、強く、抱きしめつづけていた。

ゆっくりと周囲が闇に閉ざされようとしている。
迫り来る闇を目の前にしても、アレフは、ルーシアを抱きしめたまま、動こうとしなかった。
呆然としてるアルフの耳が、かすかな音を聞き取った。
 1人で魔物と戦ってきたすぐれた聴覚が、闇に沈み込む主人を裏切って届けさせた音。
咄嗟にルーシアを庇い、身構えて音のほうを向く。
「…鳥」
木の枝に一羽、黒羽の鳥が止まっている。
肩から力が抜けた。
「ははは」
自嘲の声が掠れる。
 たかだか、僅かばかりの羽音に反応する己。
思い知らされた。
自分は、戦うつもり、いや、生き延びるつもりである事を。
まだ、真に絶望してない事を。
 黒羽の鳥を見る。
「お前もひとりか…」
闇の中、目だけが金色に輝いている。
闇の中の光。
「ローラ…」
己が愛しい姫。その髪の色。
 
 
ローラ、いつだったか、倒したドラゴンの話をしたな。覚えているか?
『とても、お世話になったんです』
そういって、君が、あまりにも悲しそうな顔をしているから、
『悪い事をしたな』と言った。そうしたら君は、
『アレフ様、どうかそんな顔をしないで。私なら、もう大丈夫ですから、ね?』
そういって無理に笑う。
『しかし』
『ね?』
『…わかった』軽く苦笑いをしながら答えた。
 言い出したら聞かない彼女。
どこか天然なのに、自分が正しいと思ったらそれを貫き通す強さ。
『私なら大丈夫よ!これでも賢者の子孫なんだから!…それに…あの人を許せない…。…ルーシアさん、何も悪いことなんてしてないのに…』
『……ベ……ホ、マ……』
『何をやっているんだ!そんな余裕があるなら俺じゃなくて自分に使うんだよ!』
 ここで止まっていたら。
彼女達は、俺に何て言うのだろう。
「行かなくては」
 彼女達の優しさ。大切な、とても大切な。
だが、ここには、それを平気で踏みにじる者達が、当たり前の様に存在している。
そのような者達に対抗できるのは、優しさではなく、決してまけない強さだ。
 少女を抱え、勇者は歩き始める。
「せめて、彼女を安置できる場所まで運ぼう。ここには鳥がいる、野ざらしにはしたくない。」
埋葬できれば良いのだが、埋葬中に襲われでもしたら、本末転倒だろう。
 勇者は歩く。
 もう、挫けない。
「ローラ、待っててくれるね?必ず君を…」
 彼女達の優しさを、今度こそ、守ってみせる。
挫けぬ勇気を再び心に宿した勇者が進む。
 遠くで、鳥が、飛び立つ音がした。
  


【B-3/森林地帯/夜】

【アレフ@DQ1勇者】
[状態]:HP4/5 背中に火傷(軽)
[装備]:マジックシールド
[道具]:鋼鉄の剣 鉄の杖 消え去り草
[思考]:ルーシアを安置する為にレーベを目指す ローラ姫を探す

※神秘のビキニと祈りの指輪はルーシアのザックに入ったままです。


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