トップ 差分 一覧 ソース 検索 ヘルプ PDF RSS ログイン

Magician's trap

Magician's trap


登場人物
サマンサ(DQ3)、ローラ(DQ1)、ゴン(DQ1)、エイト (DQ8)


荒れた村に、奇妙な来訪者が二人と一匹。
姫と、竜と、魔法使いと。
だが、それぞれの思惑は重なることはなく。
一人は皆の為、一匹は姫の為、一人は勇者の為。
それぞれが、それぞれの思いを秘めて村へとたどり着いた。
その村は、きな臭いような、血のような、異臭が漂っていて。
草木は焦げ、大地は焼けていた。
木々はなぎ倒され、大地は砕けていた。

「そんな…ひどい…」
「なんて有様だ…ひどく臭ェな…」
(…アリスは…良かった。ここには居ない様ですね)

サマンサが恐れているのは、勇者ロトの血がここで潰えること。
彼女を生かすためならば、自分は鬼にでもなろう。
その意思が、目の前の一人と一匹を始末する方法を練り上げる。
焦ってはいけないとはいえ、もう結構な数の死人が出ている。
アリスが死なない保障など、どこにも無い。
守らなければならない。これは、使命なのだ。
そのためにも、行動を起こすならば、迅速に行わなければ。
決断に、彼女は迫られていた。

…とはいえ。

(この体をある程度休めたほうが、いいですね)

ヒミコとの戦いの傷はある程度癒えたとは言っても、酷使した体は疲労し、魔力も減少している。
魔力搾取呪文『マホトラ』で奪い取る策も考慮していたのだが、出会った彼らには魔法の心得が無いときている。
彼女にはやはり、休息が必要であった。

(策は、考えてあります。後は、準備が必要…隙を、狙わなければ)
「…ンサさん、サマンサさん」
「…あ…はい、何でしょう」
その殺害対象に思考を濁されて振り向く。
ゴンから降りて、どうやら休む場所を探したようだ。
「あそこに、崩れてない建物があります。そこで休みましょう?」
(あれは…)
指差す先には、いつかの冒険の最初に尋ねた、老人の家。
魔法の玉を開発していた偏屈な学者の家がそこにあった。
二階建ての家はなるほど、周りが荒れている中しっかりと建っている。
村を散策して宿を目指しても良いのだが、争いのあった村で迂闊に歩き回るのはまだ危険だと、ゴンは言った。
そういうわけで、ローラ一行はその家に隠れて様子を見つつ休息することにする。
しかし、残念なことに。
「あら、ゴンさん…お入りにならないの?」
「…小くて入れねぇんだよ、馬鹿」
「…あなたが大きいのでしょう」
もともと二階建てとは言っても小さな家屋、ドラゴンの巨躯はドアを潜れない。
その上、そのままでは一階の天井を突き破らんばかりだ。
仕方なく、彼は外での見張りを余儀なくされた。
(…まぁ、馬鹿女のあの服は、呪文を弾く。もしもあの魔法使いに襲われても、一撃で始末されたりする事ァないだろうが…気をつけるか)
疑わしい人間と二人きりにさせるのも気が引けたが、サマンサはナイフ等の武器の類は一切持っていなかった。
そのことから、人質に取られたりすることも無いだろうと考える。
だが、やはり何をされるか分かった物ではない。
「…おい、ちょっと来い」
「あら?なんですの、ゴンさん」
ローラを呼び止める。
サマンサが意味ありげな視線でこっちを見ている。
向こうが何を考えているか分からないが、どちらとも取れた。
ヤツは、黒か…白か?
今はサッパリ分からない。
ともかく、自分は主に会うまでこのお姫様を無事に届けなければならないのだ。
溜息をつきつつ、ローラに囁いた。

(耳貸せ)
「え?」
近づくと、戦場には似つかわしくない、花のようないい香りが彼女の髪から漂う。
鼻腔をくすぐるその匂いにゴンは戸惑いながらも、あの魔法使いに対する『疑念』をはっきりとは出さないようメッセージを伝えた。
(…はっきりとは、言わないほうがいいよな)
あいつを疑っている、とでも言おうものなら、きっと「人を疑うなんて、そんなのよくありませんわ!サマンサさんがそんなことするはずありませんよね?」
と、本人であるあの魔法使いに問い詰めて、朝までループするか、魔法使いがいい加減ウンザリして戦いをおっ始めるかの選択肢しかなくなる…と踏んでいた。
ゴンは、やれやれだ、と面倒くさく思った。

(部屋の中で、何かあったら…すぐに俺の所まで来るんだ)
(はぁ…)
(わかったな?)
「ええ。わかりました、ゴンさん」
ぺこり、と一礼して彼女は階段を上っていった。
確かに、今の自分は疑心暗鬼になっているかもしれない。
ローラ姫のように、気楽に構えて(と言っていいのだろうか)行くのも必要ではないか、と思う。
だが、あの魔法使いの眼を見て言い知れぬ脅威を感じたのは事実だ。

(ただの女がするような眼じゃねぇ。あれは…腹括ってる眼だ。
人よりむしろ、俺ら魔物がするような眼…)

ゴンは見張りをすると言ったが、見張るのは彼女たちの動向であった。
彼は家の裏、木陰に座り込みながら、じっと二階を見据えていた。

小さな家の二階にはそれなりの寝具が備わっており、休息するには丁度良い空間が広がっていた。
二人はそこで軽く食事を取った後に睡眠を取ることにした。
窓の外を見ると、木々の谷間から鋭い視線。
鱗の輝きからあのドラゴンとわかり、やはりかと思った。

(あのドラゴンは、うすうす感づいているのでしょうね。警戒されています)

はぁ、と溜息をひとつついて、寝台に潜り込んだ。
とにかく、傷ついた体と魔力の回復に努めよう。
魔力が足りなくなった時点で、私はもはや戦えない。
あの子を、守るためにも今は…休みましょう。

使命感と、慈愛とでも言うべきだろうか。
そんな気持ちが混ざり合いつつ、彼女は眠りに誘われていった。
 
 
どれくらいの時間が、経ったであろうか。
夜は更けに更け、真夜中となった戦場。
月は見えている、青白く光っている。
ゴンの鱗が薄く輝いて見える夜だ。
その鱗の持ち主は、眠ることなく警戒していた。

(…血の匂い、火の匂いはしないし、争う音も声もしない…何もなさそうだな)

ゴンは慣れない素振りで静かに立ち上がり、二階の窓から様子を伺う。
そこには寝台にすやすやと寝息を立てているローラ姫。
それと、空っぽの寝台が一つ。

(なッ!?)

一瞬驚きによろめいた足元で、ガチャリと戸の開く音。
魔法使いは、そこにいた。
微笑を口元に添えて、夜の中に。
「…女性の寝ている寝室を覗くなんて、あまり感心できない行為ですよ?」
(…何、企んでやがる?)
その手にはザックが握られていた。
月光に照らされたその白い肌が妖しさを醸し出す。
「こんな真夜中に…どうした」
「いえ……一つ、お伝えしたいことがありまして」
「…奇遇だな。俺も、だ」
(この際、ハッキリさせておくか)
ゴンは本来の姿勢である四速歩行体勢を取って、サマンサの方へ向き直った。
あちらは、相変わらずの冷めた目線でこちらを射抜くように見つめている。
「ハッキリ言うぞ?テメェ何を企んでやがる」
「…心外ですね。私が何をしたというのですか?」
相手のペースに、はまるわけにはいかない。
ゴンは語調を強め、さらに思惑を突き付ける。
「お前の眼は、覚悟を決めた奴の眼だ。例えば、俺達魔物が命がけで戦う瞬間のような」
「…」
サマンサは、僅かに眉根を顰めただけで聞き流す。
そしてゴンは、核心を突く一言を、一呼吸を置き尋ねた。

「─あの、馬鹿女も殺す気か?」
命を助けてもらっい、とても親切にしてもらった、相手をも。
何かの考えがあってのことだろうか?
いずれによ、ゴンは覚悟を決めた。
「…ふふ。安心してください、私は彼女を手にかける気なんて、ありません」
サマンサは、微笑で返答を返した。
だが、ゴンはその月明かりに照らされた微笑から、我が身に迫る過去最大級の危険を感じた。
直接的な危険ではない、何かの罠を。

「彼女を手にかけるのは…あなたですよ」

「なっ!?」
サマンサの言葉の意図が飲み込めない。
自分が彼女を殺すと、突拍子も無い発言に多少なりとも狼狽えたようだ。
好機。
逃すまい、とサマンサがすっ、と一歩踏み出した。
舌でで唇を湿らせて、詠唱を破棄する。
「!?」
ゴンは驚愕した。
サマンサの姿が闇に霞むように消えてしまったのだから。
いや、消えたのではない…
『見えなく』なっただけだった。
足元の草が、小さな音を立て踏み倒されている。
足跡となり、近づいてくる。
「姿を消す魔法か…子供騙しがっ!」
腕でいるはずの場所を薙ぎ払う。
「…ボミオス」
容赦無しに放たれたその手が、鈍る。
「くっ!?」
避けられた。
どうしたのか、体の動きが鈍い。
体が鉛でできているかのようで、重たい。
(…『ボミオス』が効いたようですね。これで…次は避けられませんよ)

ゴンは攻撃呪文を警戒して辺りを見回すが、攻撃は来ない。
経験したことの無い相手に翻弄されていることによる焦りと、先ほどの発言での言い知れぬ不安が彼の心を隙間無く埋め尽くしていた。
(…耳と鼻だけで見えない相手を追うのは、さしもの竜族でも苦しいでしょう)
サマンサは、弾む息を堪えつつじわりじわりとゴンに接近する。
これから、目の前のドラゴンを自らの計略のため、弄ぼうと言うのだから罪の意識の一つや二つは感じる。
彼女はそれほど冷血な人間では、ない。
だが、罪悪感に囚われてはいけないのだ。
それが彼女の、使命だから。
(…子鬼よ、囁け、掻き乱せ)

サマンサほどの呪文の使い手ならば、言霊に出さずとも意識するだけで呪文を放つことは可能。
この状況下における一匹のドラゴンには、荷の重い相手であった。
(…!いる!!)
(…ええ。いますよ?)
声は発していない。
だが、互いの思念は掴めた。
決定的な『しまった』と絶対的な『決まった』とでも言おうか。
近い。ゴンは、密着しそうなほどに接近されていた。
それこそ、接吻でもされそうなくらいの零距離で、サマンサは一つ呟いた。

「『メダパニ』……」
「ぐ、が……っ!?」
ゴンの視界が朱に染まったり、蒼く染まったりして脳裏には歪んだ風景が浮かぶ。
何が起きたのか、理解する前に正常な意識は失われた。
「ガオオオオオオォォォォ!!!」
ゴンは、ドラゴンの本能を全開にして、咆哮を挙げた。
(後は…この叫びを聞いてやって来た彼女を、あのドラゴンが始末したのを見計らい…)
ドラゴンに、止めを刺す。
呪文を不用意にローラに放つのは危険と考えた彼女の計略であった。
その、標的がやってきた。
驚きの表情を抱えて、駆けてくる。
「ゴンさんっ!?」
先程の咆哮が、いい目覚ましになったのだろうか。
周囲の物を薙ぎ倒しながら暴れまわるドラゴンに、彼女は駆け寄る。
だが、彼女の知る『ゴン』はそこにはいなく。
ただ一匹のドラゴンがいるだけであった。
その尾が唸り、華奢な体は弾かれる。
「きゃあぁっ!」
石畳に叩き付けられて彼女は呻く。
サマンサは物陰に息を潜めて、じっと観察していた。
光のドレスが泥に塗れ、おぼつかない足取りで、彼女は涙を堪えつつ逃げている。
ずき、と心が痛んだような気がした。

サマンサは、誰にも見えない体で首を一人横に振りその痛みを振り払う。
(一時の感傷には、惑わされない…私には、やらなければならない事がある)
意思は、固く、強かった。
「あっ!」
ローラが、小石に足を取られて地面に突っ伏した。
足音を響かせながら近づくドラゴン。
鋭い爪を閃かせ、右手が掲げられる。
「ゴンさん、やめてッ!!」
悲痛な叫びは届かず、その手は振り下ろされた。
「ギラ!!」
響いた声と共に飛来する火炎。
顔面に命中して、狂わされた狙い。
爪は、空を薙ぐだけに留まった。
「大丈夫ですかっ!?」
「あ、あなたは…?」
突然の、乱入者。
槍を構えた青年が、姫を守るように立ちふさがったのだ。
サマンサは思わず身を乗り出し、眉を顰めた。
彼女には無いと思われていた、手痛いミス。
それは、この村に誰かが潜んでいて助けに入るという、少し考えれば分かる可能性。
もちろん、ゴンの戦闘能力の高さから誰かの邪魔が入る前に短時間で済むという考えがあるにはあった。
だが、甘かった。
計画に思わぬ邪魔が入り、サマンサは焦りの色を見せた。
青年は、勇敢かつ、手練のようである。
「今は、それどころではありません!!ドラゴンを、どうにかします!」
「ま、待ってください!!」
輝きを放つ槍を構え、ドラゴンと対峙するその青年。
しかし、守られるべき姫は、必死にその青年を止めようとした。
「どうしたのです!?このままでは…」
「ゴンさんの様子が、おかしいんです!突然、こんな…きゃあっ!」
「危ないっ!」

会話は、吐き出された炎に遮られる。
青年は姫を抱きかかえるように転がり、その炎から逃れる。
ドラゴンは焦点の定まらない瞳で、二人を睨み付けた。
サマンサは、炎燃え盛る村の広場に一瞥をくれた後、見つからないようにそっと家まで駆ける。
振り返って確認すると、ローラの肩には自分のザックが掛けられている。
流石に、彼女の分まで奪うのは虫が良すぎる話だったか。
落ちていたゴンのザックをそっと拾い上げて、再び隠れる。
中身を、素早く確認。
入っていたのは、首飾りだろうか?装飾がちらりと見える。
暗器などが入っているのが理想だったのだが、まあ仕方が無いとザックを置いて息を潜める。

(…予定とは、多少の差異がありましたが…始末できるかもしれませんね)

竜と、姫と、立ちふさがる兵士。
そんな光景を、魔法使いは淡々と眺めていた。
優しい心を、闇で包み隠して。


【B-2/レーベの村/真夜中】

【サマンサ@DQ3女魔法使い】
[状態]:HP3/4 MP3/5 全身に裂傷 
[装備]:バシルーラの杖(5) 奇跡の石
[道具]:支給品一式 鉄兜  ゴンの支給品一式 ルビスの守り
[思考]:タイミングを見計らい、とどめを刺すために待機
    勇者の血を守る

【ローラ@DQ1】
[状態]:健康
[装備]:光のドレス
[道具]:ロトの剣 支給品一式
[思考]:ゴンを止める アレフを探す ゲームを脱出する

【ゴン@DQ1ドラゴン】
[状態]:左肩に銃創(浅い) メダパニ(混乱中)
[装備]:メガンテの腕輪
[道具]:なし
[思考]:混乱

【エイト@DQ8主人公】
[状態]:HP2/3 左肩にダメージ 腹部と背中に打撃 MP3/4
[装備]:メタルキングの槍
[道具]:支給品一式 首輪 メルビンの支給品一式(不明二つ)
[思考]:目の前のドラゴンから、女性(ローラ)を助ける
     アトラスを止める 仲間(トロデ優先)を捜し、護る
     危機を参加者に伝える ローラに会ったらアレフの伝言を伝える


<<BACK [ 本編一覧 ] NEXT>>


-Aqua System 2007-