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NIGHT AND KNIGHT

NIGHT AND KNIGHT


登場人物
クリフト、ククール、トロデ、マリア、マルチェロ


町の中は暗く、静かだった。夜空の星達は、この世界と『ゲーム』をただ見守っていた。
「この建物の中なら、安全そうです」
若き神官は、宿屋を指し、そう言った。
「そのようですね。早くおじさまの治療を……」
少女は、ぐったりとした魔物のような男を抱え、宿に入っていった。
「立てますか?」
「……ああ、何とかな」
左腕と左耳を失った男は、力なくそう答え、神官と共に宿に入る。
「おじさま……どうか死なないで…」
マリアは僅かに残された魔力で懸命にトロデに治癒呪文を唱える。クリフトもそれを手伝う。
クリフトに不審を抱きながら、ククールも自らに治癒呪文を唱える。

「う〜ん…はっ!わ、わしは…」
皆の魔力が尽きかけた頃だった。ただ一人を除いて。
「トロデおじさま!」
「トロデ王!」
「トロデさん……!」
先程までの重い空気を吹き飛ばすかのような歓喜の声が部屋に響き渡る。
しかしクリフトのそれは別のもののようだった。
(仲間の命が助かった事で彼等は安心しきっている。隙だらけ…ですね今が…好機か…)
クリフトは死の呪文の詠唱を始めようとした、が、止めた。止めざるをえなかった。
彼に向けられていた蒼く冷たい視線―
(まだ……信じてもらえないようですね)
「お前…まだ少し魔力に余裕があるようだが?」
冷たい視線の先から、声がした。
「……いざという時のために、多少は残しておいた方が良いと思いまして。いつ誰が襲ってくるか解りませんし…」
ふうん、とククールは納得がいかないといったような声を出した。
その隣に、先程意識を取り戻したばかりのトロデを心配そうに見つめるマリアの姿があった。
トロデは不完全とはいえ体力が戻った自分の体と、目の前の疲れた顔の王女を見て、彼女がどれだけ自分に尽くしてくれたかを悟った。
「マリア王女…」
「おじさま、喋らないで下さい!体力は回復しましたが、まだ完全ではありません。無理はなさらないで下さい。」
彼女にはもう魔力は残されていない。これ以上の回復はできないと思うと、悔しさで胸がいっぱいになった。

そんな彼女を見つめるククールに気づくのにそう時間はかからなかった。
「ククールさん……私の方をじっと見て…何ですか?」
「その杖…ちょっと貸してくれないか?」
ククールがじっと見ていたのは彼女ではなく彼女の手に握られたいかずちの杖だった。
「いいですけど、何に使うんです?」
「いいから見てろって」
彼は彼女の手から杖をひょいと取り上げる。そしてトロデ王を向く。
「ククールさん、一体何を!?」
「今、楽にしてやるぜ、トロデ王」
ククールは杖を握った右手を振りかざす。杖先に封じられた魔力が集まってゆく―
「もしや、貴方もこのゲームに…」
誰にも聞こえないような小さな声でクリフトはそう呟いた。

その杖から放たれたのは閃光ではなく優しい癒しの光。
「今のは一体…」
マリアは驚いた顔でククールを見る。本来あの杖には癒しの力などはない。他者を傷つけることしかできないはずの物がなぜ―
彼女の持つ疑問に彼はすぐ答えてくれた。
「杖の持つ魔力を引き出し、癒しの力に変える。『祝福の杖』って呼ばれてる技だそうだ。
……ま、中級治癒呪文程度の力しかないけどな」
トロデに杖を向けながら彼は言った。
「流石はわしの家臣じゃわい」
大分楽になったのか、いつもの調子でトロデが笑いながら言う。
「トロデ王の家臣になった覚えはないんだがな。ま、ここにいる間だけなら家臣になってやってもいいぜ?」
ククールも笑いながらそれに答える。
それにつられてマリアも笑う。
笑わない男が一人。彼等を殺そうとしている神官、クリフトだった。
体力も魔力もあまり残っていない集団を殺すのは簡単だと思っていた。
自身の魔力を使わずに癒しの力を使う事のできる『祝福の杖』の存在は想定外だった。
彼を驚かせたのはそれだけではなかった。

「トロデ王の家臣より、マリア王女を護る騎士になりたいけどな」
「それならわしがマリア王女を命をかけてでも護るよう命じてやるわい」
「ふふふ…お二人とも、仲がよろしいのですね」
何故、彼等は笑っていられるのだろうか―
さっきまでは話すことすらままならない状態だったはず
それなのに彼等は楽しそうに笑っている―
驚きは憎しみへと変わっていった。笑っているのはアリーナ姫でなければいけないのだ。
彼女の笑顔をもう一度見るためには目の前の笑顔を消さなければならないのだ。
彼は躊躇わなかった。彼女のためなら―
「神の御手よ、永久の眠りへと誘いたまえ」
マリアがクリフトの方を向く。
「貴方、その呪文は―」
遅れてトロデとククールもそれに気づく。
もう 遅い―
クリフトは勝利を確信した。今更魔封じの呪文を唱えても間に合いはしないだろう。
「死の腕に抱かれ眠れ―」

呪文を唱えようとしたその時、突然身体に激痛が走り、動けなくなってしまった。
(どうやら…麻痺してしまったようですね…しかし一体誰がどうやって…)
トロデとマリアも何が起こったのかわからずにいる。死の呪文の詠唱はほぼ終わっていたはず。それなのに何も起こらなかった。
ただ一人その答を知る人物が口を開く。
「警戒しておいて正解だったぜ。魔力を残しておいたのは、その呪文を唱えるためだったと言う訳か」
そう言った後、彼は呪文の詠唱を始めた。
「彼の者に宿りし魔力の源よ、我に集え――マホトラ!」
クリフトの魔力がどんどん奪われてゆく。ククールは彼の魔力を吸い尽くすまで何度も呪文を唱えた。
ついにクリフトの魔力はなくなってしまった。彼にはもう人を殺す手段は残されていないのだろうか―

「ククールさん、一体どのようにして彼を止めたのですか?」
マリアはククールに訊いた。
「オレの魅力、かな」
「真面目に答えて下さい」
そんなやりとりを交わす二人の間にトロデが入る。
「何が魅力じゃ、何が!正直に『目から怪光線を放って奴を麻痺させました』と言えい!」
「人を化け物みたいに言うな!あれはオレの『魅惑の眼差し』だって何度言わせるつもりだ!?」
このやりとりは暫く続いた。
二人の会話の内容から、ククールが『魅惑の眼差し』と呼ばれる、相手を痺れさせる技を使ったのだとマリアは納得した。
クリフトの身体はまだ痺れていた。痺れが消えても、何もできないのだが―
そんな彼を見て、ククールはぽつりと呟いた。
「聖職者には…ロクなのがいないんだな」
その言葉は目の前の神官に向けられたものなのか、自身に対してのものか、それとも――
 
 
それは放送があって間もない頃のアリアハン城内。
誰もいない静かな城内、ここでは放送を聞き逃す方が難しいだろう。
「残り25名か……フン、殺す手間が大分省けたな」
彼は死者の名前には興味がないようだった。地図に禁止エリアを書き込み終えると、城内の探索を始めた。
先程までは人の気配があった。しかし今はその気配は全く感じない。
逃げられた、か。
「……まあいい。暫くすれば誰か来るだろう。人の集まりそうな場所はここと北西にある村位しかないからな」
それまで無駄な体力を使わない方が良い、と判断したのか城内の探索を止めた。

どれだけの時間が流れたのだろうか。突然、馬のいななく声が聞こえてきた。そう遠くはないようだった。
「ようやく、誰か来たようだな」
彼は立ち上がり、音を立てないように城を出る。
真っ暗な闇に包まれた城下町。声の主を見つけるのにそう時間はかからなかった。
暗い闇の中、星に照らされ輝いているかのような白馬が宿の前に立っていた。
「あの白馬…私の邪魔をするつもりかっ…まあいい。暫く様子を見ることにしよう」
マルチェロは夜の闇に身を潜め、様子を見ることにした。
一時間以上たった頃だろうか。白馬は怪しい人影に気づき、危機を主人に知らせるかのような声でいななく。
「くっ……気づかれたか…!」

「誰か、来たのでしょうか」
宿の一室に、声が響く。
「……嫌な予感がするぜ。…トロデ王はここでこいつを見張っててくれ」
トロデ王は不安げな表情で頷いた。
「ククールさん、その状態で戦えるのですか?」
マリアはククールの失われた左腕を見てそう言った。
「レディ一人に戦わせるわけにはいかないしな。ま、なんとかなんだろ」
ククールはマリアにいかづちの杖を返しながら答えた。
外で何が待っているのか、彼等は知らない。知っているのは、夜空に輝く星達――
その星達にも、彼等の運命はわからない――


【E-4/アリアハン城下町宿屋/夜中】

【トロデ@DQ8】
[状態]:HP3/5 腹部に深い裂傷(止血) 服はボロボロ 全身に軽度の切り傷(ほぼ回復)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(不明の品が1?) 大錬金釜 ミレーユの通常支給品
[思考]:??? レックスの呪いを解く方法を探す 打倒ハーゴン クリフトを見張る

【マリア@DQ2ムーンブルク王女】
[状態]:HP4/5 MP0 服はボロボロ 全身に軽度の切り傷(ほぼ回復)
[装備]:いかずちの杖
[道具]:支給品一式(不明の品が1〜2?) ※小さなメダル 毒薬瓶
[思考]:不審者の正体を確かめる 打倒ハーゴン 竜王(アレン)を倒す

【ククール@DQ8】
[状態]:HP1/3 MP1/3 右腕に火傷(半分回復) 疲労 左腕切断(止血) 左耳喪失
[装備]:ビッグボウガン(矢 0)
[道具]:天馬の手綱 インテリめがね アリアハン城の呪文書×6(何か書いてある)
[思考]:不審者の正体を確かめる マルチェロを止める 竜王(アレン)と話す

【クリフト@DQ4】
[状態]:左足に火傷(ある程度治癒) 背中に火傷(ある程度治癒) 麻痺している MP0
[装備]:なし
[道具]:祝福サギの杖[7]
[思考]:マリアたちと同行し、油断させて殺す
     自分が優勝し、アリーナを復活させてもらって元の世界へ帰る

【E-4/アリアハン城下町宿屋前/夜中】

【マルチェロ@DQ8】
[状態]:健康
[装備]:折れた皆殺しの剣(呪い克服)
[道具]:84mm無反動砲カール・グスタフ
[思考]:ゲームに乗る(ただし積極的に殺しに行かない)


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