[No.44]
彼女の悲劇
【登場人物】
ビアンカ
波の音が聞こえる。
音を意識した瞬間我に帰り、見なれぬ景色に慌てて周囲を見る。
誰もいない。
「リュカは、どこに…」
ふと、違和感を感じて首に手を当てた。そこに首輪があった。
現実を認識するにつれ、段々と恐怖でからだが強張っていった。
優しい彼のことだ、きっと自分を心配しながら探してくれているに違いない。 見かけた息子も心配だ。
「みんなと合流しなくては。海をなぞって行けば、すれ違いは避けられるかな?」
何より、じっとしているのは似合わないしね。
女らしくない、と言いながらもプロポーズをした彼を思いだし、ビアンカは微笑んだ。
そして、南に向かって歩き出した。
暗い森の端を歩いていくと、木々が破壊されている。
もうすでに、誰かが、ここで戦ったのだろうか?
胸騒ぎ覚え、慎重に近づいていく。
見なれた色にそめてある布が…
女が泣き崩れている。
「どうして、どうして、ドウシテ!」
彼女が揺さぶっているのは探していたものだった。
「これからは 2人 幸せに…」
眠りつづけるはずよ。
幼い頃、リュカと一緒に行った幽霊退治で彼女が言った言葉。そこでであった幽霊2人は亡くなってからも幸せそうだった。
ビアンカは落ちていた袋の中を覗く。彼女の望みをかなえそうなものはない。背負っていた袋も見るがそこにも無かった。
周りを見渡せば暗い洞窟。耳を済ませば波の音。どちらに入ったほうが早いか。
下を向いた彼女にふと目に入ったのは、ありのままの姿を写すもの。
拾って割ろうとしたが、魔法が使われているのか、びくともしない。
それには紅潮し、まぶたが晴れあがり、涙と泥と血で汚れた顔があった。
「本当に、女らしくないわよね」
思わず笑った。笑うしかなかった。
「この顔じゃ、洞窟の方がお似合いかな」
また笑う。
しばらくそうして、彼を見ていると、次第に攻撃をここまでする必要があったのかと思う。
ここまで、無残に。
「愛してるよ リュカ」
だからこそ、余計に許せない。
彼女は荷物をまとめると、洞窟に向かって歩き出した。
【E-2/岬の洞窟付近の森/午前】
【ビアンカ@DQ5】
[状態]:健康
[装備]:祝福の杖、しあわせのくつ
[道具]:まほうのカガミ(バーサーカーが放置したもの)
引き寄せの杖(5) 飛びつきの杖(5) 場所替えの杖(5)(リュカの遺品) 他1つ 支給品一式×3
[思考]:リュカの仇を討つ レックスを探す 過剰な攻撃をするものを憎む