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[No.107]
 闇へと零れ落ちる涙[2]
【登場人物】
ピサロ、フォズ

「…完全に夜になったか」
放送が終了してから小一時間ほどが経過した。
幼子を抱いての夜の山越えは、いかに魔王の身体能力をもっても辛い。
闇の衣が目立たなくしているとはいえども、突然の襲撃に対応するには条件が悪かった。
急いで山を越えるべきである。

「峠は越えています、もう少しできっと山は越えられるはずです…」
大分、落ち着いたようだ。
少女は仮死から蘇って疲労しているだろうに、自らの足で歩くことを要求した。
彼女の言う、『転職』『転身』の二つの技法は聞いたことも無かった。
だが、今の状況を打開するにはやはり難しい。
どちらも時間を要する。
やはり、今は魔法使いの手が借りたい。
「山を下ったら…呪文の使い手が必要だ。とびきり上等のな」
「何故…ですか?あなたも相当な使い手とお見受けしますが」
「これを見てみろ」

ピサロは、跪くと傍らの小石を拾い、地になにやら複雑な図を描いた。
古代魔術語のような見たことも無い文字もあり、フォズには少々難しいがある程度は読める。
「これは…?」
「『禁止エリア』と呼ばれる区域に入れば、擬似的に凝縮された魔法爆発を起こすらしい。…この首輪はな」
「え…」
ピサロが懐から取り出した首輪。
なんとも危ないことに、一人で調べていたらしい。
しかし恐れる様子は彼に無い。
魔王の貫禄を、見せ付けていた。

「加えてどんな呪文にも誘爆はしない…どうやら、完全魔法防御呪文【マホステ】が込められているようだ」

ピサロは呪文を打ち消す波動を放つことが可能だ。
危険ながらも、首輪に対して試みてみたのだ。
だが、マホステが消えることは無い。
常時内部から、『呪文がかけ続けられている』というのが正しいかもしれない。
「だが、対象が死んだ場合首輪は…どうも効力を失うらしいな」
─ピサロは、その込められた『何か』が死んだ魂を冥府へ連れて行った。
だから爆発しないのだと予想している。怨霊の類かとも、考えた─
だがこれは話さない。『核心を突いた発言』は迂闊には出来ないからだ。
ピサロは、ザックから紙と鉛筆を取り出した。

「だが、今の段階で解ったのはこれまで…」
『これからは筆談で会話する。我々の会話は筒抜けの可能性がある為だ』
紙に綴られた文字は、欺きの言葉とは裏腹に真実に歩み寄る。

ピサロが『こちらの動きが把握されている』と考えた理由は3つ。
1:『生贄』と呼ぶからには死亡させなくてはならない。常時生死を確認する必要がある
2:死亡確認の方法は、主催者と参加者を唯一繋ぐこの首輪を通して知っている、というのがもっとも自然
3:だが生命の感知だけでは、対象が首輪を外し脱出したのか死亡したのかの確認が取れない

以上の3点から、こちらの動きを何らかの方法でつかんでいると考えることができた。
といっても、予想に『確実』が無いのはピサロも承知。命は一つ、念には念を、ということだ。

ピサロは、知将であると断言できよう。
伊達に長生きはしていない、かなりの知識量がある。
ピサロは目の前の少女を見つめ思案する。
─この子供、見た目に反し頭は良い。
首輪の真実に近い私が、万が一殺されても大丈夫なように伝えておくとしよう─
言わば、保険である。
「首輪には迂闊に触れないほうが良かろう…命を縮める事になるからな」
『良いか。城の図書室で、興味深い呪文の存在を知った。その使い手が揃えば、首輪が外せるかもしれない』
フォズは驚きの声をぐっと堪えた。
ここで主催者に知られては水の泡。
ピサロは筆を滑らす音を掻き消すように逆の内容を話す。

「いずれにしろ、この首輪…外すのは不可能に近いかもしれんな…」
『これはあくまで予想…だが、【シャナク】【アバカム】…この二つと、私の力が有ればあるいは…』

夜は更け、一番星が煌いた。
彼らの進む道はその光に照らされているのか。
【C-5/北側の山/夜】

【ピサロ@DQ4】
[状態]:健康 MP6/7程度
[装備]:鎖鎌 闇の衣 アサシンダガー
[道具]:エルフの飲み薬(満タン) 支給品一式
[思考]:ロザリーの仇討ち ハーゴンの抹殺 襲撃者には、それなりの対応をする
   【シャナク】【アバカム】の使い手を捜す 更なる首輪解除方法調査

【フォズ@DQ7】
[状態]:疲労(時間経過で回復)
[装備]:天罰の杖
[道具]:炎の盾  アルスのトカゲ(レオン) 支給品一式
[思考]:ゲームには乗らない ピサロを導く

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