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[No.53]
 人は、誰かになれる[2]
【登場人物】
ピサロ、フォズ、マルチェロ

 少女の、あどけない顔を見ているとそのロザリーの─会ったばかりの頃を思い出された。
エルフは長命だ、これほど小さな頃から彼女を見知っていたわけではない。
だが、それでも彼は…ロザリーを思い出したのだ。
穢れ無き、その少女から。
(ピサロさま)
(いらして下さい、庭の木が花を付けたんですよ)
二人で過ごした時間は、幸せだった。
あのまま、時が止まれば良いと思った。
人間を根絶やしにする計画も、頭から追い出されていた時間だった。
(ふふ、ピサロさま。スライムちゃんをありがとうございます…お友達が出来て、うれしいです)
(ナイトさんったら、この間珍しく冗談をお言いになって…面白くて涙が出るほど笑ってしまって、ルビーが)
(スライムちゃんが一緒にいても…やはり、ピサロさまのお側に置いてください。ロザリーは待っております)
ロザリーとの時間は、自分を魔王である事実を忘れさせてくれた。
思えば、その隙を付かれた自分が悪かったのかもしれない。
悪魔に使えし神官、エビルプリーストの反乱。
それによる、ロザリーの一度目の死。
想い出がだんだんと、その過去の破滅に近づいている。
人間を、根絶やしにする決意を真に固めたあの出来事に。
(私は人間を、滅ぼす事にした)
(おやめください、ピサロさま!!)

(叫んでも無駄だ。大人しくしな!!)
(いやーーーっ 助けて、ピサロさまーーーっ)
(泣け!!ルビーの涙を流すんだ!!)
間に合わずに駆けつけたときは今でも覚えている。
そのときから、彼は破滅の道へ堕ちたのだ。
(人間を滅ぼすなど…や…め…)
 それが、遺言。
動かなくなったロザリーを抱きしめ、ただ一度だけ流した涙の味を思い出した。
ズキン、と胸が痛む。
ピサロは、腕に抱いたこの娘を癒しながら考える。

(…ロザリー)
ピサロは、ようやく穏やかな寝息を立てだした少女を見つめ考える。
 徐に、動かないマルチェロに掌を向け、魔力を込めた。
撃てば、一人敵が減る。
それだけのことだったが。
─やはり、今の彼には撃てなかった。
何故?
 助けようというわけではない。だが、殺める気が起きない。
湧き上がる奇妙な感情を、かつての世界で彼は知っていた。
ただ、それは『デスピサロ』には無く『ピサロ』が持つ感情。
『情』とでも言うか。
 勇者に教えられたその感情を、今再び思い出しかけていることに彼は気づかなかった。
なお冷静に、彼は一人呟いた。
「捨て置いても…問題無い。私は魔王ピサロ、羽虫を潰す暇なぞ持ち合わせていないのだ」
 心に宿る奇妙な感覚に、ピサロは困惑しつつも言い聞かせるように言葉で感情を覆い隠す。
躊躇う暇も無い。
 静かに眠る少女を抱き上げ、ピサロは北東に向かった。
何故、あの男を殺さなかったのか。
何故、クリフトを追って始末しなかったのか。
─私にはよく、わからない。
だが、ピサロに一つ判っていた事がある。
 ロザリーは、どんな時も誰かの、何かの死を望んではいなかった事。
その思いが、ピサロの心に鮮明に焼き付いていた。
 そして、ピサロの心にはもう一人。
かつて自分を、ロザリーを救った天空の勇者がいた。

少女を抱いた魔王と呼ばれた男。
やや薄らいだ邪気を持つ彼は、アリアハン北東の山辺へ向かっていった。
【E-4/アリアハン北東/午後】

【ピサロ@DQ4】
[状態]:健康  MP6/7程度
[装備]:鎖鎌 闇の衣 アサシンダガー
[道具]:エルフの飲み薬(満タン)
[思考]:ロザリーの仇討ち ハーゴンの抹殺 襲撃者には、それなりの対応をする
   ゲームに乗らない?(困惑中) フォズが起きたら計画を練る

【フォズ@DQ7】
[状態]:深い睡眠(時間経過で回復)
[装備]:天罰の杖
[道具]:炎の盾  アルスのトカゲ(レオン)(ピサロに警戒中)
[思考]:ゲームには乗らない アルス達を探す

【Eー4/アリアハン城下町東門付近/午後】

【マルチェロ@DQ8】
[状態]:気絶中 HP3/5 MP3/5程度 
[装備]:なし
[道具]:84mm無反動砲カール・グスタフ
   グスタフの弾(榴弾×1 対戦車榴弾×1 発煙弾×2 照明弾×2)
[思考]:近くの民家に潜み、体力の回復を待つ ゲームに乗る(ただし積極的に殺しにいかない)

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